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路上で催眠術にかけられて、声優としてテレビに出演した話

私がこの記事を通して伝えたいのは「夢の叶え方は一つじゃない」ということです。
ありとあらゆるところから、そのチャンスは巡ってくるということ。
そのチャンスを生み出せるかどうか、掴み取ることができるかどうか。
そんなことを伝えたくて、今回応募してみました。

「私だけかもしれないレア体験」という文字が目に入った時、
真っ先にこの話を思いつきました。
先に自己紹介をしておきます。
私は現在32歳。趣味で、スマホアプリの音声配信者として活動しています。
声優を目指していたのは中学生の頃からで、
声を理由にいじめられた経験から、「いつかこの声を使って、誰かの心の支えになりたい!自分の強みにしたい!」と思い立ち、声優を志しました。
当時の目標は声優としてテレビに出ることでしたが、
今の目標は結婚して幸せな家庭を築くこと。
ごく普通の30代になってしまいましたが、これから話すお話は、
そんな私が20代の時に経験した話です。

夢を諦め続けた時代

私は中学生の頃から声優になりたくて、独自で発声練習等に励んでいました。
中学を卒業するとき、両親に「声優になりたいから、専門学校に行きたい!」と打ち明けたところ、真っ向から反対されました。
「声優なんて一生アルバイト生活をするようなもの」
「そんな狭き門に挑戦することを応援はできない」
「せめて高校は卒業しなさい」等と、散々説得され、
中学卒業時には専門学校を諦めました。

高校は、地元では有名な進学校に入学しました。
そして迎えた進路相談のタイミングで、再度「声優の専門学校に行かせてほしい」と両親に打ち明けたのですが、それも即却下。
「まだそんなことを言っているの?」
「せっかく進学校なんだから、大学に行きなさい」
「せめて大学は卒業しなさい」等と、また説得され、
高校卒業時の専門学校への入学も断念。

この時、私はもう声優への憧れは捨てよう、と思っていました。
「自分には御縁がなかったんだ」
「もう親を困らせるのはやめよう」って。
親の言う通り、私は大学へと進学し、なんとなく毎日を過ごしていました。
そんな中で、急に転機が訪れたんです。

海外に出て世界の広さを知る

大学2年生の頃、イギリスへの短期留学を経験しました。
海外が初体験の私にとって、この短期留学は小さな冒険のようで、とても刺激的でした。
初めて親元を離れて過ごすこと、慣れない言語での生活、知らない人との交流等々、たくさんの刺激に囲まれて過ごす毎日。
なんとなく過ごしていた大学生活が、とてもちっぽけで、勿体ないものに思えました。
自分がいる世界はとても狭くて、視野を広げればこんなに世界は広い。
どんなことに対しても可能性に満ちている。
動き出さなくちゃ何も始まらない!
もちろん、この留学を通して言語習得もできましたが、
この留学経験から私が得られたものは「挑戦することの勇気」。
日本に帰り、もう一度「声優」という夢を追うことを決意し、
なぜか自信満々で帰国しました。

152㎝57㎏ぽっちゃり女子でも声優になりたい!

日本に帰ってきて、早速声優オーディションに応募しまくりました。
親にも「もう一度声優の夢を追いかけることにした」と自信満々に伝えたところ、「大学卒業さえしてくれればそれでいい」と、特に否定もされなかったのでひたすらエントリーシートを記入する日々。
ですが…人生うまくはいかないんですよね。
全然オーディションには受からないんですよ。
1ヶ月の間に10通ぐらいエントリーシートを送ったのですが、どれもダメ。
何がいけないんだろう…。
当時の私の容姿は、152㎝57㎏。趣味はカラオケ、特技は…あれ?
「特技が思いつかない…。とりあえずマッサージって書いておこう」
ってノリで特技の欄を埋めていました。
この特技がいけないのではないか、とオーディション不採用続きの私は思ったんです。

もちろん、今考えればわかります。
アイドル声優が流行しているこの時代で、
容姿が重視されているのは誰でもわかること。
152㎝57㎏のぽっちゃり女子が採用されるには、
よほど特徴的な声を持っていなければ受かるはずがありません。
ですが、当時の私はなぜか自信満々だったのです。
特技を見つけるにはどうしたらよいのか。
まずは、自分と同じ境遇の人に出会いたいと思いました。
そこで向かったのが、ストリートミュージシャンが集まる駅前。
ここなら、自分の夢に向かって頑張っている人がたくさんいるはず。
その人たちの特技を参考にしようと思い立ち、駅に向かいました。
この行動が、のちに私の人生に大きな影響を与えるなんて、
考えてもいませんでした。

あなたは何の為にここに居るのですか?

2011年の夏。駅に降り立った私は、さっそく一人ずつ声をかけていきました。
そこにはストリートミュージシャンやマジシャン等、様々なジャンルの方々がいて、「なんで歌ってるんですか?」「なんでここで披露しているんですか?」と聞いて回りました。
しかし…結局私が求めているような答えは得られませんでした。
みんな「歌を聴いてほしいから」とか「自分の特技でお金稼ぎができるから」等、「自分が気持ちいいからやってる」って人が多かったんですよね。言い方が悪いですが、誰かに何かを届けたい、という印象ではなく、自分の趣味に他人を付き合わせているような、少し独りよがりな印象を受けました。
自分が尊敬できるような人じゃないなぁと感じたら、なかなか「特技」を聞くところには至れません。
残念な気持ちになったまま、もう家に帰ろうとしていた時のこと。
最後に、ストリートマジシャンの話を聞こうとしていたら、こちらに向かってキャリーを引きながら歩いてくるスーツを着た男性が目に入りました。
明らかに普通のサラリーマンじゃない、ホスト風の、いかにもパフォーマーなんだろうな、とわかるその姿。その男性は、そのまま私の隣に来て、マジシャンに今日の具合を聞いていました。
「調子はどうですか?」と尋ねられたマジシャンは
「ボチボチですよ。こんな日でもあなたは人を集めるんでしょうけどね。」と若干皮肉を含めたような言い方で返答し、
私も自然にその会話に混ぜてもらって、「あなたは何者ですか?」と尋ねました。
すると「ストリート催眠術師をやっています」と答えられました。
催眠術なんて、話は聞いた事があっても、実際に経験したことのなかった私は若干パニック状態。
興味津々で興奮しながらも、さっそく催眠術をかけてもらいました。
その時の催眠術は手が開かなくなる催眠術だったのですが、経験したことのある方はわかるはずです。
かかってしまうと本当に開かなくなります。
実際に自分の意志で手が開けなくなるという、不思議な体験をした後に、つぶやくように催眠術師に問いかけました。
「あなたは何の為にここに居るんですか?なぜ路上で催眠術をかけているんですか?」って。
今考えたら、初対面の人に対していきなりする質問じゃないですよね。気を悪くされても仕方ないのですが、催眠術師はそんな私に対して嫌な顔もせずに、
「言葉の大切さを伝える為です。」と、
迷うこともなく、即答してくれました。
この時、私が求めていたものはこれだと思ったのです。

何もできなくてもいい。とにかく一歩踏み出す勇気を持て!

この催眠術師は、自分のためだけじゃない、他人のためになるものを届けようとしていると感じたんです。
そこから特技を聞いたものの、もちろん答えは催眠術。
反対に、催眠術師から「なんでここに来たんですか?」と、質問をし返され、私も自分の事情を話し始めました。
声優になりたくて、この駅前に来たこと。
オーディションに合格できずに、悩んでいること。
特技を見つけたいこと。
今までの経緯から、今後のビジョンまで。
まるでそこもオーディション会場かと思うぐらい、真剣に話しました。そこで、催眠術師から一言。
「そうか。じゃあ明日から路上立ってみれば?君ならできるよ。」
何を根拠にそんなことを言っているんだと思いました。
私は特技と言えるものがないからここに来たのに。
「…え!?でも私何もできないですよ!?」と言い返したところ、
「とりあえず立ってみてから考えてみな?声優になりたいんでしょ?自分ができることで相手に想いを伝えてみたらどう?」
と説得され、明日またここに来て、自分のできることでパフォーマンスをするように、催眠術をかけられました。
家に帰る電車の中で、ボーっと外を眺めながら、
「こんなのかかるはずない。だって私にできることは何もないんだよ?披露できるものも、自慢できるものもないのに、どうやって…。…でも、やってみたい。できる気がする。え?どこから出て来てるの?この自信。もう、なんなんだよ、この感覚!」
なんて自問自答を繰り返し、次の日を迎えました。
私は、ラジカセをもって駅前に立っていました。

「私は、声優になるためにここに来ました」

私にできることで思いついたのは歌でした。私はギターが弾けるわけでもなければ、ピアノが弾けるわけでもありません。
ましてや他に披露できるものなんてありません。
じゃあどうする…?と思った時、用意したのは電池で動くラジカセ。
そこに、たまたま家にあった、いきものがかりの「ありがとう」のCDを入れて、駅前に向かいました。
ゴールデンウィークの昼間の時間帯。
最近聞き始めたばかりの慣れない歌を、思い切って歌い始めました。
もちろん、最初からうまくいくはずがありません。
最初は恥ずかしくて、あまり声も出せませんでした。
歌詞も覚えていない為、自作の歌詞カードを手に必死に声を出す。
私の存在なんて、そこにいないかのように通り過ぎていく人たち。
こんなことをして何の意味があるんだろう。
こんなことで、人は止まってくれるんだろうかと、不安になっていきました。
数十分間歌い続けていた結果、ようやく1人の高校生が立ち止まってくれました。それだけでも嬉しくて、涙が出そうになりました。
初めてのストリート、初めての観客の前で歌う。
緊張しすぎて、とてもテンパって、歌詞カードを持っている手がずっと震えていました。
それでも何とか最後まで歌い切り、自分の想いをひたすら叫びました。
「私は声優になりたくてここに来ました。声優としてテレビに出演したいんです。」と。

こうして私のパフォーマンスは出来上がった

ストリートデビューは約2時間の公演で終了しました。
合計10人ぐらいの人を立ち止まらせることができて、とても嬉しかったのですが、何かが足りない…。それは、人の心が動いた感覚。
ただ歌っているだけなら誰でもできる。
むしろ、私よりも歌のうまい人たちはいくらでもいる。
それじゃぁ私がここで歌う意味って何なんだろう。
今のままじゃ自分だけが気持ちいいだけの、ただの自己満足なんじゃないか?自己満足で終わらせることはできない!そう思い立った私は、自分のパフォーマンスを見直すことにしました。
自分で考えた詩を朗読してみた日もありました。
うん…悪くはないんだけど、お客様の反応はいまいち。
歌詞カードを手放して、身振り手振りを付けて歌ってみた日もありました。
それでも、お客様の反応はいまいち。
心を動かせたという感覚は全く得られませんでした。
その時にふと思い出されたのが催眠術師の言葉でした。
「言葉の大切さを伝える為」。
まだ催眠術が効いていたからでしょうか。
ストリートデビューをしてから、直接会うこともなく、私のパフォーマンスを見てアドバイスをもらっているわけでもないのに、その言葉が私の頭から離れなくなったんです。
「言葉の大切さ、私も伝えてみたい!」と思い立ち、人の心に響きそうな言葉を集め始めました。自分が感動した言葉、勇気づけられた言葉、癒された言葉などを次々と集めて、それをいきものがかりの「ありがとう」の曲に載せて伝えるというパフォーマンスを生み出し、実際に路上で披露してみました。すると、日取りもよかったのか、驚くほど人が集まってきて、1度のパフォーマンスで、合計30人ぐらいの人を集めることに成功したのです。ストリートパフォーマンスを初めて2週間ぐらいの出来事。ようやく自分のパフォーマンスが出来上がった瞬間でした。

なりたいもの、叶えたい目標は口に出していれば実現する

パフォーマンスの最後には、必ず自分の目標を叫ぶということを繰り返していたある日のこと。ストリートパフォーマンスを初めて3週間のところで急にチャンスは巡ってきました。テレビの取材の話が舞い込んできたのです。
「あなたのパフォーマンスを見た人から勧められました。あなたのパフォーマンスを見てみたいです。」とテレビ関係者の人から直接オファーがあり、テレビ局に招かれました。初めて入る憧れのテレビ局にワクワクドキドキした感覚を今でも覚えています。スタッフと思われる方が数名いらっしゃる中、すごく緊張しましたが、自分のパフォーマンスを、精一杯披露しました。スタッフの方々はとても暖かく受け入れてくれて、興味を持ってくれたのか、私が今までストリートでしてきた質問を私にしてくれました。
「なんでストリートパフォーマンスをしているのですか?」
私は自信満々で答えました。
「私は声優になるためにストリートパフォーマンスをしています。声優としてテレビに出演することが目標です。」と。
それを聞いたスタッフの方々は「へぇ、そうなんだ」ぐらいの返答で、あまり手ごたえは感じられませんでしたが、私はちゃんと伝えられたことに満足していました。
テレビの撮影を終え、数日経ったある日のこと。
チーフディレクターの方から私の携帯に直接連絡が入りました。
「声優の仕事があるのですが、出演は可能でしょうか?」と。
話を聞いてみると、1回限りではなく、その番組のナレーションとしての起用。ちゃんとした声優の仕事としてオファーしていただけることがわかり、自分でも信じられないほど嬉しくて、心臓が飛び出そうなほど興奮しました。こうして私は、ストリートパフォーマーから声優としてテレビに出演するきっかけをいただいたのです。

夢の叶え方は一つじゃない

これが私の経験した「私だけかもしれないレア体験」です。
最初にも話しましたが、夢の叶え方は一つじゃありません。
「声優の仕事に就きたいなら、声優の養成所しかない!」と私も思っていましたが、チャンスは予想外のところから舞い込んできました。
要は、自分の目標に対してどれだけ真剣に向き合えるのか。どれだけ本気で取り組めるのか、かと思います。
こうして執筆していく中で、私もまた新しい目標に向かって本気で挑戦することに、なんだかワクワクしてきました。
これを読んでくださった皆様にとっても、自分の夢や目標に向かって一歩踏み出す勇気になればいいな、と思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
みなさんに、元気と勇気を☆

#私だけかもしれないレア体験

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