作品「文字」


文字              
 
 
土という文字を
眺めていると
怖くなる
上の部分「十」が
下の部分「一」に
突き立てられた
墓標に見えるからだ
 
土 土 土 土 
 
 土 土 土 土
 
土 土 土 土 
 
 土 土 土 土
 
こうやって
たくさん並べてみると
墓地に見える
地面の下には
いくつもの
死体が埋まっている
そもそも
土は
あらゆる生命の還る場所なので
無数の墓場でもあるのだ
実際に
墓標は見えないが
文字にすると
それが現れる
ひとつの文字が
隠された真理を示している
ひとつの文字が
淋しい空想を呼び起こす







『歩きながらはじまること』(七月堂)
『フタを開ける』(書肆山田)

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