西尾勝彦

詩人。のほほんと自然と自由。 詩集『場末にて』、『なんだか眠いのです』、『ふたりはひと…

西尾勝彦

詩人。のほほんと自然と自由。 詩集『場末にて』、『なんだか眠いのです』、『ふたりはひとり』、『歩きながらはじまること』。詩的実用書『のほほんと暮らす』。尾形亀之助詩集『カステーラのような明るい夜』編集。 HP:https://www.nishio-katsuhiko.net

マガジン

  • 詩集『耳の人』 全作品

    なにも起こらない物語のような連作詩です。

  • 自己紹介とイベント関連

    自己紹介とイベントに関連する記事をまとめています。

  • 詩集『言の森』 全作品

    2012年刊行の詩集『言の森』収録の全作品です。上の作品から目次順となっています。

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自己紹介です(改訂版)

僕は ふだんは若いひとを育てる面白い仕事をしながら 詩の創作活動をつづけています 主な詩集に 『場末にて』、『なんだか眠いのです』、 『歩きながらはじまること』などが あります 詩だけではなくて 『のほほんと暮らす』という ふしぎな詩的実用本を書いたり 「のほほん手帖」の アイデアを出したりして 「のほほん生活のすすめ」的な 活動もしています 僕は 詩を書くことだけにとどまらず 詩集を置いてくださるお店の方々と 交流することがたのしいです そして その先に 読者の方々が

    • 作品「言の森」が、国語教科書に掲載されます

      お知らせです。 作品「言の森」が、中学校の国語教科書(三省堂)に掲載されることになりました。 巻頭の詩として載るようです。 令和7年度(2025年4月)から、全国の中学3年生が読んでくれることになります。 たくさんの若い人たちに読んでもらえることをうれしくおもいます。 実は、私の仕事は高校の国語教員です。 校種が異なるので直接教えることがなく、その点は、ほっとしています…。 このお話をいただいた時、とても驚きました。 私は詩人として、いわゆる詩壇といったものから

      • 作品「24 光のカーブ」

        24 光のカーブ 雨上がりの朝 私は ひとり 森を歩いていた 遠くから いかるの啼き声が 聞こえてくる 足もとの 杉苔が 水を含んで ふくらんでいる 木々を包む靄(もや)に 光の 白い帯が いくつも 降りてきている 一歩 一歩 ゆっくり歩く 一歩 一歩 風が生まれる 今日は このまま 良い天気に なりそうだ 僕は 歩いてゆく 光のカーブ その向こうへ 『耳の人』(BOOKLORE) 『歩きながらはじまること』(七月堂)

        • 作品「23 無題」

          23 無題 夏の午後 風もなく 退屈な読書に 眠る 『耳の人』(BOOKLORE) 『歩きながらはじまること』(七月堂)

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        自己紹介です(改訂版)

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        • 詩集『耳の人』 全作品
          24本
        • 自己紹介とイベント関連
          5本
        • 詩集『言の森』 全作品
          20本
        • 詩集『フタを開ける』 全作品
          17本
        • 詩集『朝のはじまり』 全作品
          21本
        • 創作のために
          3本

        記事

          作品「22 ポスト」

          22 ポスト ある日 ふたたび 耳の人の家を訪れたことがあった いつもの喫茶店に 彼が顔を出さなくなったからだ 店主に訊いても  お見えになりませんねえ と 言うばかりだ そして 緑のトンネルを そっと くぐったのだった 軒先に 如雨露(じょうろ)が ころがっている 庭の隅には 水が とろとろと 湧き出している 耳の人に 会うことは かなわなかった そこで 手紙を書いて 青いポストに 入れておくことにした 『耳の人』(BOOKLORE) 『歩きながらはじまること

          作品「22 ポスト」

          作品「21 無題」

          21 無題 古代 この盆地は 湖だったらしい 満面に 水をたたえ 魚たちが 泳いでいる 水草は ひそやかに ゆれ続ける 『耳の人』(BOOKLORE) 『歩きながらはじまること』(七月堂)

          作品「21 無題」

          作品「20 青」

          20 青 このあたりでは ときどき 青が降る 朝早く まだ光の眠っている時間に 青は降る すべてが 青に覆われる その人は 降りつもった 青の上を 歩いてゆく 『耳の人』(BOOKLORE) 『歩きながらはじまること』(七月堂)

          作品「20 青」

          作品「19 無題」

          19 無題 しずかな日々 水脈のありかをさぐる 『耳の人』(BOOKLORE) 『歩きながらはじまること』(七月堂)

          作品「19 無題」

          作品「18 赤い耳」

          18 赤い耳 その人は すっかり酔うと 耳たぶが赤くなった 私が  耳、赤いですよ と 指摘すると 彼は  そろそろ眠ることにするよ  あなたも、そろそろお帰りなさい と 言った  このお酒は…… 重ねて訊くと  ……おやすみ その人は私の問いに答えず ふとんに入って 眠ってしまった 私も  おやすみ と 声をかけ ふらふらと 暗いトンネルをくぐった 銀色の月が 森の上で 眠っていた 『耳の人』(BOOKLORE) 『歩きながらはじまること』(七月堂)

          作品「18 赤い耳」

          2024年 4月27、28日 東京の朗読会

          4月27日と28日に、東京の2カ所で詩の朗読会を開催することになりました。 もしよろしければ、ご参加ください。 4月27日(土) タイトル「言の葉を撒こうとおもうのです」 場所 七月堂古書部(世田谷区豪徳寺) 時間 18:00〜 約1時間 参加費用 1,200円 定員 10名(抽選) 要申込(詳細はこちら) 4月3日〆切 → 4月5日に抽選  4月28日(日) タイトル「朝の光のなかで」 場所 coffee caraway(目黒区五本木) 時間 10:00〜11:20

          2024年 4月27、28日 東京の朗読会

          作品「17 無題」

          17 無題 緑色の錆びた自転車に乗って 坂道を下ってゆく いりくんだ古い町 失われた塔の 幻を見る 『耳の人』(BOOKLORE) 『歩きながらはじまること』(七月堂)

          作品「17 無題」

          作品「16 ゆれる耳」

          16 ゆれる耳 耳の人が用意してくれたお酒は 抜群においしかった ひとくち含むと そのたびに爽やかな風が 舌先を吹きすぎる そして 上品な甘みの余韻 驚いて  どこで手に入れたのですか と 訊くと その人は 上機嫌に  森の人に  分けてもらったんだよ と よくわからないことを言った そのまま我々は 呑み続け その人は 話し続けた 話の内容は ほとんど憶えていない でも ひとつ ふたつ その人が 耳を揺らしながら 語ったことを記す  境界付近で  うろうろするのが僕

          作品「16 ゆれる耳」

          作品「15 部屋」

          15 部屋 文机 ちゃぶ台 銀傘の電灯 本が十冊ほど 紙と 草色のトンボ鉛筆 止まったままの置時計 せんべいぶとん 小さなごみ箱 それに 裏山で拾った どんぐりふたつ ときおり 猫が 出たり 入ったり 横になったり 『耳の人』(BOOKLORE) 『歩きながらはじまること』(七月堂)

          作品「15 部屋」

          作品「14 白い菊」

          14 白い菊 座布団に腰を下ろすと 珈琲ではなく さっそく お酒が出てきた 風流なその人は うつわに 白い菊を浮かべてくれた 我々は  カンパイ と 祝杯のようなものを挙げ つつと呑みほした   『耳の人』(BOOKLORE) 『歩きながらはじまること』(七月堂)

          作品「14 白い菊」

          作品「13 訪問」

          13 訪問 耳の人の家を訪れた日のことは よく憶えている 彼に書いてもらった地図は まるで頼りにならなかった 森に近い しんとした道で きょろきょろしていると  よく来たね 細道の奥から声が聞こえた 木々の向こうに その人はいた 家に通じる小径は 緑のトンネル 梅や桃 ミズナラの木が 並んでいた おだやかな木漏れ日が 土に揺れている 近寄って  迷いましたよ そう言うと  ときどき、僕もね と 耳の人は微笑んだ トンネルを抜けると 透明な光と風が 我々を包んだ

          作品「13 訪問」

          作品「12 暮らし」

          12 暮らし 耳の人は 飼い猫も あきれるぐらい のどかに暮らしていた すずめの あたたかさを てのひらで感じたり 庭に ゴザを敷いて 昼寝をしたり 雨垂れの音を いちにち 聴いたりしていた たまに 古い本を読んで ひとり ふっふっと 笑っている 『耳の人』(BOOKLORE) 『歩きながらはじまること』(七月堂)

          作品「12 暮らし」