青い夢　　　　　　　　　　
 
 
古いビルの
青く埃っぽい螺旋階段
そこを駆け上がっている夢を見た
どこからか
ビル・エヴァンスの
ヤング・アンド・フーリッシュが
聞こえてくる
誰かに
追われているようでもあり
どこかに
辿り着こうとしているようでもある
汗をかき
息づかいも激しく
上を目指す
よくわからない戸惑いと焦りを抱えたまま
ひたすらに足を動かしている
ほどなく頭上に明るさを感じ出す
築三十年以上と思われるビルディング
てっぺんが近づいてきたのだろう
足どりが少し軽くなる
心にも静かな希望が生まれる
視界が白く開け
やっと屋上に踏み込んだとたんに
あろうことか
最初の薄汚れた階段に戻っている
そして　また私は登り続ける
そして　また……
果てない夢から目覚めると
ようやく重い眠りに沈んでいった
 
 
 
 
 
 
 

『歩きながらはじまること』（七月堂）
『フタを開ける』（書肆山田）