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【表現評論】メモリーズオフ初代(1st) コアレビューその10 まとめ(完結)【全作プレイシリーズ】

シリーズ全般のネタバレが含まれます。

●前回の記事

●2024年から見たメモリーズオフ1st

1stの発売日は1999年ということで、25年前です。当たり前の話ですが、懐かしいというか、古めかしい世界観でした。ネットもなければスマホもない。家の電話でやりとり。手紙でやり取り。待ちぼうけ食らっても連絡手段がない。デジタルネイティブ世代の感覚とは完全にずれてます。しかし25年経っても、学校に行って授業を受けるというスタイルだけはさほど変わっていません。もう少し進化しても良さそうなのに。

肝心の内容ですが、流石にこの1stが最新作として発売されていたら、許されないクオリティではあります。シナリオは唯笑とみなもがギリギリ耐えうるかなってくらいで、かおるは元カレが出てくるわ、詩音と小夜美は山も谷もなく淡々と、しかも一瞬で終わるわで、厳しいものがあります。グラフィックはあっさり風味なので、90年代のコッテコテの絵よりは古く感じませんでしたが、ただPS1オリジナルと違って修正されてそうなんで、元々のものを見れば印象も変わる可能性はありますね。なんにせよ、どの要素も令和最新クオリティとは呼べません。そらそうよ。25年前なんだから。25年前のスポーツ選手と今のスポーツ選手を比べるくらい意味がない。いや、BGMは今聞いても神ですね。最新作で出てきてもそれほど違和感なさそう。

ただ、クオリティと関係なく、1stには揺るぎない価値があります。0を1にしたことです。白紙に絵を描き込むことと、その絵を参考に何かを作ることの価値は、全く異なります。白紙にオリジナルの絵を描き込んだことに1stの偉大さがあるわけです。後々のクオリティの高い作品だって、1stがなければ存在してないわけですからね。今後どんな神作品が出ようが、その事実だけは、未来永劫変わりません。サイエンスで言えばニュートンみたいなもんです。アインシュタインが出てこようが、誰が出てこようが、ニュートンの偉大さは変わりません。ファーストペンギンとはそういうものです。

●唯笑ルート

天然の幼馴染というのはよくありそうな造形ですが、その裏には徹底的な自己犠牲があります。唯笑ルートは「ヒロインの自己犠牲」という、僕の中のメモリーズオフのコアを確立した物語です。小さい頃からずっと好きだったけど、彩花だったから譲った。彩花が死んでからも、自分を気持ちを押し殺して、彩花を引きずる主人公を支え続けた。他のルートでは、彩花の代弁者として、主人公に許しを与える役割すら背負っています。最近は誰かが犠牲になってはいけないという物語が多いように思いますが、だからこそ、2024年から見るとますます感慨深いものがありました。

唯笑ルートでひとつ思うのは、なぜ主人公は彩花を先に選んだのか、ということです。小さい頃は決めきれなかったようですが、中学生になると明確に彩花の方を選んでます。単純に好感度の天秤が彩花に傾いていたのか、先に告白されたから選んだのか。それとも唯笑がまだ恋愛対象になっていなかったのか。最後の解釈が一番スッキリする気はしますね。

物語の核心に迫る、シリーズのコアを確立する、という点において、1stの中では最高のシナリオだった思います。ここは昔とはちょっと印象変わりましたね。昔はみなもと詩音が好きだったけど、再プレイの後は唯笑は一番になりました。好みも変わるらしい。

●みなもルート

結構ワガママで、我が強くて、不思議ちゃんで、病弱の後輩です。当時流行りだった泣きゲーの流れに乗ったルートですかね。みなもは発売当時から人気のシナリオでしたね。重い病気を患っていて、彩花が治療のためのドナーに適合していたわけですが、手術前に彩花が亡くなってしまっていたということで、主人公にとっては辛い物語になります。入院してからの描写なんかは、今見ても悲しくなりました。日に日にやつれていくんで、自分の顔が描けないとかね。もうこんなん絶対泣きますやん。2024年にやっても、しんみりしてしまいました。ヒロインが亡くなる(かどうか確定はしてないけど)というお話は、シリーズ全体を見ても、ほとんどみなも特有のものですね。だからこそ記憶に残ると言えます。

●かおるルート

明るくて、気さくで、BGMと声が神の転校生です。お隣さんで関わりが多く、ふざけ合いながら仲良くなっていくというメモオフらしからぬ物語です。しかし肩の力を抜いて遊べそうなシナリオと見せかけて、スパイス的に重い女感も出してくるんで、一筋縄ではいかないところが、やはりメモリーズオフなのかもしれません。家の前でずっと待ってたりとかね、駅で待ち伏せしてるとかね。現代だとストーカー扱いもあり得そうな描写です。今後のシリーズでもかおる以外には絶対あり得ないであろう設定は、昔の彼氏の存在ですね。昔のゲームではチラホラあった設定だったかもしれません。拒否反応が強くて、この手のゲームでは消滅してしまったわけですが。何が悲しくて昔の彼氏の話なんか聞かなあかんねんと。まあ彼氏どころか婚約者がいるヒロインもいるわけですが。あれは義務婚約だからノーカンで。カナタはどうなんだろう。元カレどころの騒ぎではない気はしますが、キャラ的に許される感はある。かおるは唯笑と同じく、昔よりも好感度は高くなったキャラですね。わかりやすいのがいい。やっぱり人間素直なのが一番ですわ。電車で眠ってるCGは1stのベストCG賞です。

●詩音ルート

図書室の主。見た目最強ヒロインです。そのまま。見た目最強。学歴の暴力ならぬ、見た目の暴力でプレイヤーを破壊してきます。破壊されたプレイヤーは数知れず。地が出ると敬語でなくなったり、主人公の呼び方がどんどん変わっていったり、結構えげつなく弄ってきたりと、性格面でも楽しいキャラです。その代わりシナリオで見るべきところは少ないです。はい。デートはすっぽかすし。盛り上がりどころがありません。というか、詩音のシナリオが記憶より短すぎてびっくりしました。制作的にはおそらくサブキャラ。私の解釈では上に書いた唯笑みなもかおるが1軍で、詩音と小夜美はサブキャラです。制作の方もこんなに人気が出るとは思わなかったのかも知れない。まあ細けえことはいいんですよ。シナリオなんかある意味弱者の武器なんで。強者は見た目とキャラで押せばいいんですわ。タマ姉とかもそんな感じだし。

●小夜美ルート

唯一の年上キャラです。CG最強ヒロイン。CGの出来がなぜかダントツで最強です。修正されまくっているんですかね。玄関のドア開けるシーンなんてこんなのあったっけってレベルでしたし。オリジナルと見比べてみたい。そんなに気分が下がるシーンもないので、何も考えずにキャッキャウフフできるルートということで、唯一無二の価値がありそうです。ベストスマイル賞の受賞者。

●まとめのまとめ

今プレイしても見るべきところはたくさんある作品でした。クオリティは令和クオリティではないですが、脈々と受け継がれているシリーズの魂の萌芽が至る所に見えます。双想がどんな作品になるのかわかりませんが、キャラデザが原点回帰してますからね。それなりに初代を意識した作品になりそうなので、1st信者としては楽しみです。

最後にベスト○○をいくつか挙げて終わりにしたいと思います。

●ベストシナリオ 唯笑
●ベストキャラ 唯笑
●ベストBGM Each and every heart

全部唯笑じゃん。ベストキャラはかおるもありかな。いや、やっぱりメモリーズオフの魂である唯笑さんでファイナルアンサー。

●メモリーズオフ2ndへ

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