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人らしくいられる。山小屋という居場所。

こんにちは。

今回も、すごく感銘を受けた本をご紹介します!

それは、「山小屋主人の炉端話」(工藤隆雄)。

この本には、色んな日本各地の山小屋で働いている主人の方々による、
山小屋での様々な人と人との悲喜こもごものエピソードが多数収められています。

山小屋という非日常で繰り広げられる一風変わったエピソードの数々は、どれも興味深く面白いものばかりでしたが、それ以上に人の温かさ、自然の厳しさ、そしてそれらを包み込む山小屋という真心を感じさせる雰囲気の存在が中心にどかっとあるおかげか、どの話もすんなりと入っていけて素直に感動を覚え、素敵な体験をした後のような奥深い読後感を味わうことができました。

私の一番好きなエピソードは、登山客が登山を終え、帰りの宿を探していた時の話です。
なかなか宿が見つからず、登山客は途方に暮れます。
季節は冬。猛烈に吹雪く雪山の中で、さぞ大変だったことでしょう。
体は冷え、疲労と空腹は限界に達します。
何軒も宿泊を断られ、心が折れかけていたその時でした。
親切な宿の女将さんや居酒屋の店主の機転のおかげで、なんとか今晩泊めてくれる
場所がやっと見つかります。
そして、女将さんが作ってくれた心ばかりの食事を頂くのですが、なかなかご飯が喉を通りません。涙が後から後から流れてきて、止まらないのです。
きっと、凍えるような寒さを耐え、人の真心の温かさに触れたからなのでしょう。
読んでいる私も、涙が止まらなくなりました。

人の温かさというものは、ふとした瞬間に現れると思っています。
何気ない笑顔。
ちょっとした親切。
挨拶をしてみる。
子供の頭をなでる。
そうした小さな思いやりが積もり積もって、この世界をほんの少しだけいいものにする。
そういつも信じています。

本書は、山小屋というある種の非日常の中での人と人との温かい交流を描いていますが、日常の中でふと忘れがちな大切なことがたくさん詰まっています。

自然は厳しく怖いものだけど、時にこちらに笑いかけてくれていると感じるような懐の深さを持っていること。

山小屋の主人は怖そうでいて実は情にもろく、いつも登山客の味方でいること。
普段の生活の中でもそういう人、そういう場面ってたくさんあるように思います。

そして、自然を愛するように人を愛することの素晴らしさ。
それは登山の中で育まれることも多々ありますし、日常の中で意識して自然に触れることで芽生えることもあるんじゃないかなと思います。

山小屋。
山に登った者だけがたどり着く場所。
分け隔てなく人と付き合える空間。
人が人らしくいられる居場所。

私の地元にはあまり山らしい山がありませんが、本書を読んで山の魅力を再発見した気持ちでいるので、機会があったら登山にチャレンジしてみようと思います。
そして、素敵な山小屋にも行ってみたいです。

きっと素晴らしい自然と同じくらい、素晴らしい人との出会いが待っていると信じて。



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