離婚後共同親権についての…

いや、立憲の国会議員さんである弁護士さんが離婚について「協議離婚」という私的解決を認めるのはいかがなものかという提言をされているわけである。これは一理ある意見である。すなわち法律婚という公的な結合を解消するのであれば公的な審判を経てその解消が認められるのが相当ではないか。それを個人間の合意だけで解決するのは不十分である。

これは一つには子供の問題がある。最近しばしば見る離婚後単独親権絶対維持派の意見では「子供は母親が十月十日胎内で育んできたものであり、一心同体である。だから母親の意見こそが子供の意見であり、父親は異物である。なので父親はATMとして金を出せばよいのであって人間としての存在は不要である。」というものは少なくないのである。

もちろん冷静に考えればいくら母親が子供を育んだといっても親と子供は別人格であるのは当然のことなのであるが、そこに納得しない母親たちは少なくないのである。最近本屋でもDVされていることは児童虐待と同じことである!と主張した本を見つけて頭を抱えたことがある。米国の事例が取り上げられていたのでおそらくは米国人の著作の訳書であろうと思うが恐ろしすぎてそっと本棚に戻してしまった。

知っている人はご存知だと思うが、面前DVという事項はあって、子供の目の前でDVが実行されることは子供にとって「本来仲良くあるべき両親がDVしている!そんなの見たくない!」ということで心理的(精神的)虐待に当たるということは指摘されている。けれども、DVがあるから即虐待という短絡は不適切であるというべきである。米国の事例で取り上げられているDV事例って確かにお父ちゃんが力任せに家族全員を殴りつけているというようなものが多いのでまあそりゃ虐待になるよねというものも多いことは確かだけれど、だからといって「DV=虐待」という決めつけは粗雑に過ぎるのではないか。日本では身体的虐待は減っていて心理的虐待が虐待類型の中で最多になっているというのが厚労省(今後はこども家庭庁の担当になるのであろう)の分析だと思うが、この心理的(精神的)虐待の加害者は実母が最も多いのである。そのため、起訴事例を収集した警察庁による虐待統計では身体的虐待を行う実父が加害者として一番多くなるのだけれど、厚労省(こども家庭庁)の統計では実母が加害者として不動のトップを占めるようになるわけである。

こういう事情を全部無視して「離婚事例」においてはDVモラハラ男を前提として男の人権を放り投げて女性だけに有利になるようにしろ、というのが離婚後単独親権絶対維持派の主張であるわけである。

普通に考えればまあ離婚になるのだし、夫婦間で修復できないものがあるだろうということは普通に想定できるわけである。その中でも話し合いをして特に子供のいる事例では子供の最善の利益がどうあるべきかを定める必要があるのは当然である。

おそらく普通の協議できる夫婦の関係では子供の最善の利益を夫婦間で合意して離婚後の共同養育計画が策定されるというのが一般的なやり方であるということは多くの人も納得されるところであるのではないか。より慎重な人は策定された共同養育計画が例えば不適切なものではないかとか実行不可能なものではないかを確認するために専門家である弁護士等に最終チェックさせるほうがいいじゃないかという意見もあってよいと思う。年間10万件の親権争いが起きる日本ではそれだけ両親の離婚に巻き込まれる子供がいるわけである。そういう子供たちができるだけ不幸な状態にならないために行政は最低限のレベルを維持すべきである。(最低不幸社会というのはかつて民主党政権の菅直人元首相が唱えたものであるから野党支持の人にも納得されやすいであろう。)

行政も離婚する親たちも子供が不幸にならないためにそれくらいのコストを払えよということを制度に組み入れることには私は異論はない。

問題は高葛藤だ!と叫んでいる人たちである。彼ら(彼女らといったほうが適切かもしれない)はそもそも高葛藤を盾にして一切の交渉を拒否すべきだというのである。一般的に彼女たちの脳内では男=モラハラDVの犯罪者、女性様=可哀想な被害者という固定された図式があるわけである。なのでもう男に人権を認めるとは何事だ!犯罪者に人権などないのだから金を出せ!口は出すな!全ては女性様のものだ!男は債務奴隷として強制労働について女性様に金を貢げ!と騒いでいるわけである。

「育児でワンオペは大変でしょうから離婚男も共同親権者として共同で育児しましょう」なんていうと金切り声を上げて拒否しているわけである。いや、あんたらワンオペ育児反対!男も家族を養う賃労働に加えて家事育児介護のケア労働しろや!男なら食事を取らずに眠らずに24時間365日働けるだろうに。男はいくら働いても大丈夫なのだから体が弱くていつ働けなくなるかわからないか弱い女性様を守れ!と叫んでいたフェミニスト様はここでは180度反対の主張をするわけである。

じゃあ、葛藤の低い事例は原則的に離婚後共同親権にして高葛藤で裁判所も「モラハラDVとか児童虐待で父親に子供と接触させられないねえ」と認定した事例だけ例外的に単独親権にしましょう、というとそれにも反対するわけである。つまり、証拠など何もなくても妻が「嫌だ」と言えば男を自動的にモラハラDV男に認定して、その自由を拘束して生涯債務奴隷として強制労働させて妻に賠償金として養育費を支払わせろ!奴隷に財産は必要ないから元夫の財産は全額慰謝料として妻のものにしろ!という勢いで騒ぎ出すわけである。こういう状態はもう男を人間扱いせずにATMとして扱えということになる。

いやいや、離婚なんてわずかその年の婚姻数の三分の一なんですよ。離婚しない人もいるのだから結婚して、不幸にも離婚したら男だったらスッパリと自由を諦めて死ぬまで奴隷として服従したらいいじゃないですか、別に男に人権なんて必要ないでしょう。奴隷となって女性に貢ぎ続ければいいでしょうとフェミさんや左翼様は笑顔で言うかもしれない。

男たちは現状こういうリスクに直面しているわけで、無論、年収や財産の少ない人は結婚できないだろうし、周囲にフェミさんが多い人も身ぐるみ剥がされるリスクを考えると結婚は危険と認識して結婚しない人生を選択しつつあるということだろう。

そういう人をフェミさん達はインセルと呼んで蔑み、「安全紐なしでバンジージャンプを飛べないような臆病者の男はインセル。男なら紐など何もつけずに100mくらいの高さから飛び降りる勇気を持たなきゃ」というわけである。(よい子は真似しちゃダメよ。死んでしまいます)

まあ、そういう女性陣からの声には耳を塞ぎつつ、男たちは自らをMGTOWと呼んで自尊心を防衛して「ハラミ会」に入会して40歳まで童貞ならばきっと魔法使いになれるはずという神話を信じている男が増えているということであろう。

そりゃ男たちが結婚せず、もしくは女性に近づかずに「射精責任なんて射精しなければ取る必要ないんです。」という社会では少子化が進まないはずないのである。韓国や中国では女性の自立により男などと結婚するより仕事と結婚しますという人が増えて男が不要になった結果、少子化が進んでいるということであろう。

日本は逆である。女性たちは男に依存したいといっているわけである。「そ、それは男女の給与格差でしょう!男は働いて得たお金を女性に貢ぎなさい」といっているわけで、構造としては江戸期以前から変わっていないのである。現状は戦後の高度成長期に発生した専業主婦を羨む層が「女性が稼ぐのはおかしいでしょう。男はもっと働け!」といっているにすぎないわけである。つまり、女性は養われる側であるという固定観念があるために、妻が生活費を入れることについては不満が燻ってしまうのである。「本来は夫が1馬力で稼いで家族を養い、夫が家事育児介護のケア労働をするのが当然でしょう。女性が働いて稼いだ分は女性のお小遣いとして女性が若いホストや浮気相手と温泉旅行でも行くお金に使うべきで、なぜ家族のために自分のお金を使う必要があるのか。おかしいじゃないの。」というのが女性の本音であろう。

この点では上野千鶴子先生が「男が300万稼いで女性様が300万稼いだら世帯収入は600万円になるじゃないの。」というのが正解ではある。けれどもこのnoteでも他のSNSなどでも「夫が生活費を半々で出せっていう!頭おかしい!」と叫ぶ女性たちの悲鳴はしばしば聞こえてくるわけである。数年前、ツイッターでも「女性がたくさん稼ぐならば夫を養って専業主婦として雇えばいいじゃないか」という話をしたことがあるが、ほとんどの女性はそれに賛同しなかったし、数名の女性は自分が稼いで旦那に家事をしてもらっているということを言ったが、そこに満足感や誇りを見出すことはできなかったのである。むしろ稼ぐのは男の仕事だろ?という不満感や諦めの感情の方が強かったのではないか。で、それは今でも大きくは変わっていないのではないかと思われる。

これは女性たちが過去そうであった自分、現状の自分、今後どうありたいのかという自分を混同しやすくなっているということではないか。つまり区別できていない。例えば、子供のいる離婚では全例裁判所で審判してそこできちんと共同養育計画をつくろうよという意見はありである。そこで同居親と別居親が共同親権者としてどのように責任と実務や金銭の負担を分掌してゆくか決めてゆけばよいのである。その中で子供の意見をどう取り入れて子供の最善の利益を実現するために計画を作ってゆくかを考えてゆけばいいのである。

その方策を具体的にどうするかということを詰めてゆくのが国会議員の仕事であろう。ただ反対反対と潰してしまって、子供の親は母親だけです!父親は金出せや!男に人権が必要でしょうか!子供には父親は不要ですから男など拘束して強制労働させて奴隷として扱えばいいのですよ。という制度にしてしまうということであればそもそも男は結婚するなというしかなくなるわけである。

離婚しても父親も子供となんとか関係性を保てるようにする。子供の最善の利益って両親が離婚せずに慈しんで子供を育ててくれることである。それでも離婚に至った時のことなのである。その時点で子供たちは残念であろうし、不本意であることは一般に想定されるわけである。けれども自分の親が離婚したのは自分を捨て去るためではなかった。離婚したとしても親は自分を見捨ててはいない、愛してくれているということを実感できるというのが次善ではあるが子供の利益と言えるのではないか。

どこかで離婚した父が再婚して子供ができたため、養育費の減額を言ってきたのを進学の費用のためになんとか減額しないで!と戦っている子供の話をSNSで見たことがある。そりゃ赤ちゃんなのだからオムツ代やミルク代もかさむのでお姉ちゃんには我慢してほしいというお父さんの止むに止まれぬ気持ちもあったかもしれない。けれどもその女の子にしてみればそこで父親との絆が切れるともう二度と回復できないかもしれないわけである。いや、SNSの短い文章だけではそこに至る背景や深い事情は不明ではあったけれども。

そこで「クソオスなんだから人間と思うのが間違い。男なんて信用するな」と冷笑するのが不適切であることは言うまでもないだろう。だからといって「結局金目でしょう。金払えばいいんでしょう。」と言うのも冷酷に過ぎるわけである。

こういう子供たちーお姉ちゃんも赤ちゃんもであるーがどちらも不幸にならないためにどうすればよいかについてぜひlawmakerには頭を捻ってもらいたいのである。

で、多くの離婚後共同親権反対派が出すのが「夫婦別姓は何十年も放置されている」という話であるが、これはもう江戸の仇を長崎で討つに近い話であり、無関係なことを割り込ませて議論を混乱させることは謹んでいただきたいものである。

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