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感動短編小説 ルンッパッパー2024・夏

シルクハットにスーツ、手にステッキを持った紳士が歩いていた。
彼は昼食としてハイチュウを三箱食べるのが日課だった。

彼が日本に移り住んで、はや30年が経っていた。

彼は今日もコンビニに、ハイチュウを買いに出かけた。
散歩もかねていた。

しかし、彼は「ハイチュウ禁止令」が、日本国とは何の関係もないブルンベッヘンブルーベリー共和国から発布されたことを知らなかった。

コンビニ店員「ブルンベッヘンブルーベリー共和国の厳命により、ハイチュウをお売りすることはできません」
イギリス紳士「なんでだ!? ここは日本だから関係ないだろ!?」
コンビニ店員「ハイチュウの原材料である、『ハイチュニウム』の原産国はブルンベッヘンブルーベリー共和国です。ブルンベッヘンブルーベリー共和国が『ハイチュニウム』の輸出をいっさい禁止してしまったんです」

ブルンベッヘンブルーベリー共和国は、「ハイチュニウム」の採掘と輸出で成り立っている国だ。
それがハイチュニウムの輸出を止めたとなると、ブルンベッヘンブルーベリー共和国はどうやって食って行くつもりなのだろうか。

イギリス紳士は疑問に思い、コンビニ店員に聞いた。

コンビニ店員「なんでも、おでんツンツン男を大スターに仕立て上げ、その収入の90パーセントをピンハネするつもりらしいです。そのために、おでんツンツン男が『アメリカズ・ゴッド・タレント』に出演したのを知らなかったんですか?」

イギリス紳士は驚愕した。
「しかし、そんな番組に出たって、おでんをツンツンするだけだろ? それでスターになれるとは思わないが……」

コンビニ店員「おでんツンツン男、猛特訓してすごいジャグリングができるらしいですよ、それでアメリカでは大ウケです」

イギリス紳士「じゃあ、もうおでんをツンツンしたこととか、関係ねぇじゃん!!」

イギリス紳士は失意のもと、帰宅。
テレビをつけると、鼻の上に椅子を乗せ、その椅子の上にさらに椅子を乗せ、そのさらに上にガラスの花瓶を乗せたおでんツンツン男が、華麗にそれらをクルクル回していた。

これでハイチュニウムの輸出を停止しても、ブルンベッヘンブルーベリー共和国は安泰だろう。
もうハイチュウは二度と発売されない。

イギリス紳士は帰宅してから、車で海まで行き、浜辺で二時間泣いて、また帰宅した。
(了)


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