見出し画像

夜が確かに暗かったころ


声は
掠れて
途切れ
確かな言葉を伝えない

映る影もまた
重なり
時に欠け
明らかな像を結ばない

あれほどに
燃えていた紅葉の梢は
もう見る影もなく散り
ただ寒いだけの
風が細枝を揺らしている

かつて煌めいていた
鈍い鱗の魚たちは
唯黙って泡を吐き
沼の栓が抜かれて
干されていくことを諦めている

酩酊することしか出来はしないのだ
微かな温みを抱きかかえるように
獣は丸く眠る
我らの失ったもの

ごおん
ごおん
重く鳴り響く鐘とて
何も変えられはしない
我らは何を得たのだろうか

夜が確かに暗かったころ
誰もが眠るしかなかった
夜明けは明らかな救いで
希望だった