見出し画像

叶わない秋(抒情詩)


叶わない秋

秋はゆふぐれに眠っている
冬はひとりで鳴いている

茜は冬を問うている
鳥は藪で鳴いている

緋色黄色は枯れていく
秋空の酔いは醒めていく

幸せよりも不幸が身に染む
赦されない季節に
冷たく透んだ水面が揺れる

燃えている
凍える水の底で燃えている
ぼこぼこと泡を上げて燃えている

幸せも不幸すらも
この溶鉱炉へ落とし込み
めらめらと眩き灼熱へ捧ぐもの

冬の炎が燃えている
尽きることへの抗いに
絶えず命は燃えている

秋は素知らぬ顔で眠る
冬は鳴くことしかせず
空は唯遠ざかっていく

叶わないことを
届かないことを
置き去りにしていいのだと