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ワルプルギスの夜

そうして神すら擬人化されてしまう夏の気配に
崇拝はあまりに己たちの美しさに酔ってしまった
修飾することが貴富であると
金の額縁の内へ閉じ込め堕としてしまった

中世の宗教画にとっては神こそが虚像
堕天は人の手によって成された
暗闇がサタンとその朋友を信奉する
そのものたちは肉体の苦痛の信奉者である

虜囚である我らの映し鏡は蘇る死者
恐れよりも憧れである死の超越者である知性
理を超えて生を奪うもの
神聖は暗転し故に真ではない

美しくあろうと過剰に呼吸するもの
醜さを振る舞い華美に唾するもの
肯じえない己に滅びの世を映すもの
虜囚とは死者であろうとする檻に囚われる魂

暴発させよ透明なる灼熱の抒情を
雷光の暗雲の裂け目を閃かすように
我らの裂け目が露わに光るとき
愚形であれども美しさがある

かの暗黒の中世にあってさえ
もしかするとそれ故に強く祈りはあった
覗き見る光の眩さ
ワルプルギスの夜に青い炎が踊っている

パウル・クレー ワルプルギスの夜 1935