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画面の向こうに空間を感じた日

 どういう経緯か覚えていませんが、その日、Eさんの家に招かれました。
Eさんの家は病院を営んでいて、クラス一のお金持ちです。

 EさんはTVが繋がったタイプライターのような機械を操作し、自慢げにTV画面を見せびらかしてきました。

 そのタイプライターのような機械の正体は、パソコン(※1)。
 これが初めて見たパソコンというものでした。

 緑色の線(※2)で表現された地面がパパパパッと動き、「4」キーを押している間は画面が左向きに回転し続け、「6」のキーを押すと右向きに回転します。
 それだけ。速度も調節できません。

 「すごい! 飛んでいる!(ように見える)」
 「すごい!! 奥行きがある!(ように見える)」

 後年「あれはフライトシミュレーターのデモ?」だと勘違いしていましたが単純過ぎるので、雑誌に掲載されていたプログラムリストを入力したか、Eさんが自作したものかも。
 記憶をたぐるとパソコン本体の色や画像解像度などから、機種はおそらくNEC PC-8001かと思われます。

 パソコンというものがあれば、TVゲームができる(かもしれない)。
 TVゲームを遊ぶ手段が、駄菓子屋やゲームセンター以外にもあると知ったのです。

 
 Eさんはドラえもんの登場人物「スネ夫」を体現したような人で、その後は一緒に遊んだ記憶がありません……。


※1 当時はまだマイコンと呼ばれていました。
※2 グリーンディスプレイ。なんと表示できる色が緑色だけ。緑は目に優しいというふれこみでしたが、実際はそんなことはなく。

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