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就活の話~地方×文系大学院生⑦就活のしんどさの正体~

相も変わらず就活を続けています。
今回は、就活のしんどさの正体について考えたことを書いていこうと思います。

0.就活はしんどい

就活のなにがしんどいのか。
この問いには、人によって様々な答えがあると思います。

よくある回答としては、こんな感じでしょうか。

・説明会にES作成に面接に、予定が詰まって大変
・やりたいことがわからない
・自分を否定されたような気持ちになる

私も就活がしんどくて、このしんどさの正体は何だろうとずっと考えていました。
上の3つもなんとなくわからないことは無いけれど、根本はそこじゃない気がしていました。

そもそも院に入ってからというもの、基本的に土日も朝も昼も夜もないので、忙しさは関係ありません。
私の場合はやりたいことが割と明確ですし、企業が基準を明確にしないために攻略法がわからないというストレスはありますが、落ちても自分を否定されたような気持ちにはなりません。

最近になって、ようやくしんどさの正体がつかめてきました。
それは―貨幣に換算できる側面だけが評価され、また求められる、資本主義的な価値観にさらされ続けることです。

何を言っているかわからないと思うので、詳しく説明していきますね。

1.しんどさの正体

ここで言う「資本主義的な価値観」とは、「いくら稼げるのかを重視する価値観」だと思ってください。
一応マルクスに関する本も読みましたが、資本主義に深入りすると長くなるので省きます。

ご存知のように、私たちが暮らしている日本は資本主義経済です。
貨幣に換算できる価値をもつ人(お金を稼ぐ能力がある人)が儲かり、そうでない人は儲かりません。

就活は名前の通り「就職先を見つけるための活動」で、資本主義経済を担う主体としての社会人になるための営みです。
保護者や社会制度の中で、経済的に庇護される存在であった「学生」から、自らお金を稼ぐ「社会人」になるための活動です。
(働いている人を社会人と呼ぶのは全然好きではないのですが、ここでは便宜上こう書きます)

私が就活をしていて第一に感じたのは、「結局企業は私たちがいくら稼げる存在になるのかにしか興味が無いんだな」ということです。
建前はいろいろ言いますが、興味の根本はそこだと思います。

それは当然だし、むしろ健全ですらあります。
貨幣を生み出して経済を回すのが、社会における企業の役割だからです。

問題は、就活をしていると、そういう価値観にさらされ続けることです。
つまり、私と言う人間の中のいずれお金になるであろう能力にしか注目されない時間が、長い間続くことです。

2.お金を稼ぐ部分、遣う部分

私に限らず誰でもそうでしょうが、お金になりうる部分とそうでない部分とあります。

営業マンを例にとって説明しましょう。この営業マンはクライアントとの信頼性を築くのがうまく、新規の契約をバンバン取り付けてきます。
プライベートでは子どもがいて、趣味は観劇です。

営業マンのクライアントへのトークがうまい部分、自社の製品やサービスをしっかり理解している部分、クライアントと社内の人間との調整がうまい部分は営業マンとしてお金を生み出す部分でしょう。
スキルと言い換えてもいいかもしれません。

だけど、家庭での親としての営業マンや、観劇に行くときの営業マンはどうでしょう。
何かしらのお金を稼いでいるでしょうか。

プライベートな時間を過ごしている時は、お金を稼ぐ存在ではなくて、お金を遣う存在です。
もしかしたら、プライベートでの経験が仕事に活かされることがあるかもしれませんが、ここではあくまで場面を独立させて考えています。

お金を稼ぐ面と遣う面、両方併せ持っているのが人間です。
それはどんな人間でも、そうなんじゃないかな。

3.「あなたはいくら稼げるようになるの?」と問われ続ける


このように、人間にはお金を稼ぐ面と遣う面の両方があります。
それなのに就活では、稼ぐ面ばかりが重視されるんですね。

仮に、何年もかけて、学生生活と並行して就活をちまちまやるというやり方なら、就活とそれ以外の、例えば友達といる時のバランスを取って過ごせます。
お金を稼ぐ面を意識させられる場面と、意識しなくていい場面を両方とももてるから、そこまでしんどくならないです。

だけどそうはいきません。日本の就活は、少なくとも今年度までは時期がある程度決まっており、一旦就活が始まると集中して取り組むことになります。

そうすると、面接官から「で、あなたはいくら稼げるようになるの?どうやって?(意訳)」という質問を集中して受ける時期ができてしまうんです。
何ヶ月もそんな時間が続きます。

露骨にそんなことを言われはしませんが、就活の面接での質問って、結局はそこを測るためのものだと思うんですよね。
先述したようにお金を稼いで経済を回すのが企業の役割なので、自社なりのやり方でそれに貢献できる人を求めるのが採用だと考えられるからです。

4.「価値」ってなんだ?

昨今の流行りなのか、企業の説明ではやたらと「社会に価値を還元する」という言い回しが出てきます。
企業は利益の上がらないことはしないので、「社会に価値を還元する=社会に何かしらを提供して利益を生み出す、お金を稼ぐ」という意味でしょう。
だから、ここで言う価値とは「貨幣に換算可能な価値」を指します。

そんな言葉を受け続けていると、お金を遣う面を無視されているような、私という人間のお金を稼げない面にはまったく意味が無いような感覚にすら陥ります。
どちらも人間の側面としてあるもので大切なのに、遣う面の存在感が薄くなっていくわけです。

でも…お金にならない面なんて、人間にはたくさんありますよね。
何もかもお金に換えないといけないなんて、そんなことないはずです。

お金に換えられることが大切だという価値観の中にいると、お金を稼げない人を見下したり、許せなかったりする感覚が生まれやすくなります。
私はそれこそが資本主義社会の負の側面だと思う。

お金に換えられる価値を生み出すことができなくても、人間は生きてるだけで100点満点のはずです。
お金を稼ぐことが人間の評価の根本にあるような考え方は、何らかのきっかけで稼ぐ存在ではいられなくなった時の自分を追い詰めてしまうような気がしてなりません。

5.まとめ

今回言いたかったことをまとめると、下の3つになります。

・就活のしんどさの正体は「お金に換えられない面を無視されること」
・お金を稼ぐ面も遣う面もあるのが人間
・お金を稼ぐことばかり重視するの、資本主義社会のよくないところ

経済の専門家でもないのに偉そうなことを書いてしまいましたが、ご了承ください。
とりあえず、資本主義的な考え方に疲れたら、お金の介在しない場所でゆっくり休むといいと思います。
友達と会うとか、好きな本を読むとか、散歩するとか、「無駄」とか「余白」とか言えるようなことを。
それがきっと、お金を稼ぐ存在以外の面を、思い起こさせてくれます。


最後までお読みいただきありがとうございます。 これからもたくさん書いていきますので、また会えますように。