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庭師になる人 ⑧庭師になるまでPart7 〖最終話〗

前回までのおさらいです。

IT企業の情報システム部門に在籍中、35歳で課長になり、結婚をし、まあまあ順風満帆な日々。将来を考え異動願いを出したことが発端で2つの課を兼務することになり、多忙とパワハラで鬱病を発症。妻の支えもあり会社を退職し、しばらく休職。やがて社会復帰への焦燥感に駈られるも、IT企業への復帰には心が拒否。そんな中『樹木医』という職業を偶然知る。しかし樹木医への道は簡単ではなく、その前提として庭師(植木屋)になる他ないと知る。

悩みましたね。

デスクワークしかしたことがない自分に外仕事が務まるのだろうか? 造園会社はアラフォーの未経験者を雇ってくれるのだろうか? 0からのスタートで生活費を稼げるのだろうか?

全く異色の世界なので、不安だらけでした。

それでも、小中学校では野球、高校ではテニスをやっていたので、基礎体力や根性には自信はある。

庭師になればITの仕事をしなくてよいし、職人の世界だから上司も部下もないだろう。(実際はそんなことはありません。上司も部下もいます。)

始めは給料が安くても、頑張って腕を上げ、資格も取って給料を上げればいいんだ。

色々とメリットを列挙して、気持ちを上げてみました。

それでも、年収は以前と比べて半分位になってしまう。妻は賛成してくれるだろうか?
親は心配するだろう。 いやむしろ、妻の両親に何と言えばいいんだ?安定した収入の男に嫁がせたのに…。

なかなか決断できませんでした。

そして、悩んで悩んで悩み抜いた末に、やはり庭師になりたいと思い、妻に打ち明けました。

すると妻は「いいんじゃない。やりたいことをやった方がいいよ。」とあっさりと賛成してくれました。

そして、実家の母に伝えると、母も「あんたは昔から植物好きだったもんね。いいんじゃない。」と言ってくれました。ただし父は「向こうの両親(妻の両親)に申し訳ないんじゃないか?」と懐疑的でしたが、反対はしませんでした。

最後に妻の両親に伝えると、少し驚いていましたが、「信頼しているから心配はしていないよ。頑張って下さい。」と励ましの言葉をもらいました。かなりホッとしたことを覚えています。

こうしていよいよ庭師に向けて動き出しました。

まず始めたのは、外仕事用の就職雑誌『ガテン』でのリサーチです。自宅から比較的近く、良さそうな造園会社を調べ始めました。

同時に『庭園管理士』という通信講座を始めました。「アラフォーの未経験者ではどこの造園会社も雇ってくれない。せめて最低限の知識は付けておこう。」と思ったからです。

こうして2ヶ月後にいよいよ就職活動を開始しました。「10社以上受けなければ受からないだろうな」と思いながら、幾つかの造園会社に絞り、順番に受けることにしました。

そして満を持して、第一候補の会社に電話を掛けました。

応対してくれたのは事務の女性でした。始めは明るく話してくれたのですが、39歳で未経験と伝えると、「う~ん、ちょっと…。」と断られそうな雰囲気が伝わってきました。

ここで引き下がっていては今後の就職活動に支障をきたします。「やる気と根性はあります。面接だけでも受けさせて下さい!」と伝えると、渋々承諾してくれて、後日面接を受けることになりました。

そして、面接の当日、面接相手は社長でした。造園会社なんて超大手は別にして、多くが中小企業(いや零細)なので、面接は社長がします。

面接に際し、「庭師になりたい理由」を文章で書いてくるよう言われていたので、「季節を感じる仕事がしたい」「スポーツをやっていたので基礎体力と根性には自信がある」など熱意のこもった文章を持参しました。

面接では今までの経緯を話しましたが、ほぼ社長が一方的に造園の説明をして終わりました。手応えは多少ありましたが、「一社目で受かることはないだろう。そんなに甘いはずはない…」と思っていました。

ところが意に反して、その日の夕方に事務の女性から電話が掛かってきました。「合格です。明日から来て下さい。」と。

驚きました。「えっ?こんなに簡単に決まっちゃうの?一社目で?」と。

さすがに翌日からは無理だったので、一週間後からにしてもらいましたが、こうして庭師として第二の人生が始まりました。

アラフォー未経験者の庭師スタートは大変でしたが、それは別の話としていつか綴ろうと思っています。

庭師になるまでの経緯はここまでです。

最後に…

社会に出ると同時に庭師になる人は少ないと思います。多くの庭師が他の職種からの転職者です。

庭師の仕事はそんなに厳しくないだろうと思う人が多いようですね。晴れた春の日に、脚立に乗って「パチン、パチン」と悠長に剪定をしているイメージですね。私もそんなイメージを持っていました。だから、仕事に疲れた人が癒しを求めて来るのかもしれません。

実際の庭師の仕事はというと、体力的に厳しいですし、命がけの作業も多いです。そして、他の外仕事と比べても報酬は低いと思います。そのため、未経験で入ってきた多くの人が挫折し辞めてしまいます。

ですが、とても夢のある仕事です。穏やかな季節の時期に個人邸の剪定をしていると、「なんて良い仕事なんだろう。幸せだな。」と思ったりします。それに熱意を持って頑張れば、それなりの報酬も得られるようになると思います。

庭師になるのに難しい条件もありませんし、資格も必要ありません。

必要なのは、植物が好き、あるいは剪定や庭作りが好きという気持ちと、厳しい仕事に耐えられる根性だけです。(*車の免許は必須です)

仕事を見つけられずに困っている方々、庭師になってみませんか?庭師は常に楽しい仕事ではありませんが、やりがいや楽しさを誰でも見つけられる仕事だと思います。

長い話になってしまいましたが、これで全て終わりです。

今まで読んで頂いた方々に感謝致します。

ありがとうございました。


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