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年明け一本目の映画は‥


ニーナ・シモン 
『フィーリング・グッド』

空の彼方を飛ぶ鳥たち、私の気持ちが分かるでしょ

照りつける太陽よ、分かるでしょ

やさしくそよいでくる風よ、分かるでしょ

夜が明けて、新しい一日が始まる、私は私の人生を生きる

最高の気分だわ

海を泳ぐ魚たちよ、聞こえている?

あてなく流れる川よ、分かってくれる?

木々に咲く花たちにも聞いてほしい

夜が明けて、新しい一日が始まる、私は私の人生を生きる

最高の気分だわ

照りつける太陽の下に飛んできたトンボよ、分かるでしょ

自由に飛び遊ぶ蝶たち、分かるでしょ

一日が終わる時、安心して眠れる場所、それが私の求めるもの

そしてこの古かった世界は、今や新しく生まれ変わったの

私にとって自由な世界に

星たちよ、輝くその時に、私の気持ちがわかるはず

松の香りよ、私の気持ちがわかるでしょ

そう、自由をやっと掴んだの、そしてこの気持ちをかみしめる

夜が明けて、新しい一日が始まる、私は私の人生を生きる

ずっとこの瞬間を待ってたの

PERFECT DAYS

今年の最高の一本になってしまいました。

監督さん、出演者さんたちが様々な動画を出していますが、
最初はとりあえずなんにも見ないで、
平山の視点で世の中の美しさを味わってほしい。

自分の中に沸き起こる感情や思い出にしっかり寄り添って観てほしい。
寄り添いながら観てほしい。

うつろうスカイツリー、
正しく行われるルーチン、
光と影、
一瞬の木漏れ日。

丁寧に繰り返す日々の中に、
その日だけの喜びも悲しみもきちんと用意されていて、見つけ、気づけた分だけ、
満たされきって眠る。

日常にありながら、
修行僧のように澄んでいく平山の瞳。
台本なのか、
ドキュメンタリーなのか、
平山なのか、 
私なのか、
どんどんその境が解らなくなって、
木漏れ日を眺める平山を見ているだけで涙が溢れてくるんです。

境界線はいろんなところに、
有形無形、縦横無尽にいろいろあって。

それを越えるのは、
『唯一無二のわたし』に気づき、
自身の人生に満足とほこりをもつひとだけが持ち得る、『相手』への敬意と優しさ。

排泄という生命活動の中で、
いちばん必須なのに汚いものの極みとされる行為を担当する場所を、
毎日3回美しく磨き上げていく過程で、
真摯に向き合う分だけ、
自分の魂も磨き上げていくんでしょうかね。

たぶん、
平山の中には綺麗も汚いもないんですよ。

なんかね、
ほっとんど台詞がないの。
言葉は分離の世界を生きるために必要なものなのだと思ったり、
自分の感性をどこまで信じられるのかなという度合いを高めなくちゃと思ったり。

場内が明るくなって出口へ向かう途中、
杖をもったおばあちゃんが、
「それでなにを言いたい映画だったのかね、わからんかったねぇ」
とお隣の旦那さんに話しかけると、
一瞬考えたあとお父さんが、
「うん、でもスカイツリーいっぱい見れたすけ良いねかね」
と返事してたんですよ。

「そっか、東京見物したと思えばいいか、行けないしねえ」
「そうだそうだ」

んだんだ。
浅草や、押上や、錦糸町、渋谷‥。
ランドマークとしてのスカイツリーは色んな色に変わっていましたが、
トイレばかりだけど、
全部紛れもない東京です。

ご夫婦が生きてきた世の中は、 
それが正解なのです。
いやいや、
年代を問わず、どんな感じ方をしても良い映画なのです。

ほんと、人それぞれに受け取り方をしていいし、人生のどんな場面で観るのかによっても全然違うでしょうしね。

あー、
なんだか、すでにもう一度観たいのです。
これからも、折に触れて観かえす映画なんではないかと思うのです。

#パーフェクトデイズ
#役所広司

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