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[Vtuber]天音かなた、涙からの逆転劇

天音かなたは泣いた。2021年2月22日の歌枠、最後の月曜歌枠となった配信での話だ。彼女は耳に持病を抱えているらしく、医者に歌枠を続けることを止められたそうだ。
歌が好きだった彼女が歌った初音ミクの消失。それは前に歌いきれなかった、彼女の境遇を象徴するような曲。声をつまらせながらも歌いきったかなただったが、動画のエンドカードの裏ですすり泣く声が聞こえた。

天音かなたの涙・・・それで思い出す事件がある。推しというわけでもない彼女に感動させられたその事件からの彼女の物語は、Vtuberという存在を考えるときにぼくにとって外すことの出来ないものだ。(これは二日前の記事にも軽く触れた。)

この記事では、天音かなたが泣いた(と言われる)事件と、それからの彼女の逆転劇を動画とともに振り返りたい。

天音かなた、ホロライブ4期生の彼女をにわかなぼくは全く知らなかった。
そして行われたコラボ、いわゆる宇宙人狼・AmongUsで事件は起きた。他の人の枠で観ていたぼくはそんな事件は露知らず。正直、いたのかどうかさえよく分かってなかった。
それはそうだ、ゲームについて素人だった彼女は全く喋れなかったのだ。最後の一戦、同じ4期生であり主催でもあった常闇トワは心配して次は彼女に発言枠を取ろうと提案するも、かなたは真っ先にキルされて会議まで生き残れず、ろくにしゃべれずにコラボを終えたのであった。(キル自体は悪意ある行為ではない。念のため。) 彼女は配信中に泣いてしまい、アーカイブを削除した。ぼくも伝聞で聞いた話なので詳しくは知らないが、概ねそういう状況と理解している。(他の人の視点のアーカイブはあるが、泣いてる姿は分からない)

いわゆる杞憂だったのかもしれないけれど、それからは天音かなたがコラボに参加するたびに不安だった。普通に会話していても脳裏にその事件がよぎって、大丈夫だろうか…と思ってしまう。彼女は耳の病気で、大人数の会話は聞き取りづらい、といった話も嘘かホントか耳にしていた。もう大規模なコラボは参加できないのではないかと。


・・・そして迎えたのがMINECRAFTの運動会。ホロライブの30人近いメンバーが参加する、とんでもない規模のイベント。そんな中で彼女は、エリトラで空を飛んで狙った位置に着地するという競技に参加することとなる。ホロライブのメンバーのほぼすべてが、そして何十万人というファンが見守る中で、大会の勝敗を左右するプレイをしなければいけないのだ。それもたった一人で。

逆境はそれだけではなかった。ホロメンは会話の中で触れることを避けているが、彼女のいた赤2組のメンバー赤井はあと、桐生ココは数ヶ月前の中国からみの炎上の対象になった人物。特に桐生ココはそれから執拗に荒らされ続け、このイベントでも彼女らのコメント欄は異様なスピードで滅茶苦茶にされていた。ココはそれを気に病み、その前後の期間はコラボなどはろくに出来ない状況。彼女の相棒というべき天音かなたもきっと悔しかっただろう。ただのコラボではない、何かが折れたらぺしゃんこになってしまうのではないか、そんな危うい雰囲気をぼくは勝手に感じていた。

(余談。2組はそんな嵐の中、狂人とも例えられる赤井はあとはずーっと楽しそうに笑っていて、他のみんなも和気あいあい、とてもそんなコメント欄とは見えなかった。さらに最後のレースでは、勝利をほぼ手中にしながらもラグの不平等からやり直しを申し出るという、ドラマのような感動のあるチームだった。最後は破れてしまったが、そのときの赤井はあとのすがすがしい笑顔はぼくの中で運動会を思い出すときに真っ先に浮かぶ顔だ。)

ジャンプは中心近くに着陸すれば高得点、さらに空にある輪をくぐり抜けると加点。競技直前に2回くぐったらどうなるのか質問されて、さらに加点と決まった。(2回くぐることは想定していなかったのだ。)
ジャンプの中推進力を生むことができる花火は3つ。2回くぐるのは決して簡単ではない。実際、かなたの前の二人のうち一人はくぐれず、もう一人も1回くぐったのみだった。
そんな中、彼女は誰も想像しなかった飛翔を見せつけた。


それが、彼女が乗り越えた瞬間。そんな気がした。

その後、かなたはまたAmongUsをやる機会が訪れた。みんなが前の事件を知っている中、動画タイトルからかなたん喋りすぎwと煽る勢い。大丈夫かなぁと心配しながら期待した。奇跡のジャンプをしたかなただから。
今度はきちんと事前の準備も積み、インポスターをやったときは相手になすりつけようとチャレンジし、負けはしたが2回のインポスターを見事にこなした。天音かなたは完全に乗り越えた!
最終戦はギリギリの戦いで、彼女にとってはああしておけばと悔いの残る試合となったが、そんなものはいつでも乗り越えれるハードルだ。最後のドラマを積み残すようにそのゲームは終わった。もう誰もかなたを心配している人はいない。(最後の試合はマリン視点で熱いドラマであったのだがそれはまた別の話。)

その後、かなたはにじさんじと合同のAmongUsでも活躍し、それだけではなくMINECRAFTでの学校騒動で独特のつっこみ役が話題となり、星街すいせいのマリカ実況ではスバルに「かなたの実況で空気が変わった」と言わせるトークを見せつけ、ホロライブメンバーの中のツッコミ役かつ芸風豊かな人間としてその場所を確保した。


一方で、前述の桐生ココをそばで支え続ける天使として。握力の強さから言われるようになったゴリラキャラも、プレイヤーキャラの選択でバナナやドンキーコングを選んだりと様々なシーンで確立。(それでいいのか)

今はもう、天音かなたはホロライブを支える重要なキャラクターとなった。

以上が僕の思っている、天音かなたの逆転劇。ひとつひとつはゲームの1シーン、だけどそれが視聴者の中で繋がって一本の線になる。その線こそ、ぼくにとってVtuberを見るのをやめられない理由だ。

話を始めに戻そう。前述の通り彼女は70万登録を達成した歌枠で涙を流した。そして深夜、かなたが短い動画を出した。

ありがとうという言葉は、70万登録に対して、そしてまた歌を聴いてくれていた視聴者に対してのものだろう。それは同時に、もう歌枠を続けれない無念さも感じざるをえない。

また一つぼくらの忘れられない点が打たれた。その点が、これからどんな線になっていくのか。つぎの逆転劇に期待しよう。

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・・・最後にもう一つだけこの文章の趣旨からは本当の余談、そしてこの文章を書いた理由。それはぼくが2日にわたって書き続けた磁富モノエに関すること。

かなたが70万を達成した日、モノエのツイッターの過去の発言が消えた。

その日はねこの日。猫又おかゆの誕生日3Dライブが行われた。ライブ用のアイドル衣装3Dは本当に出来が良くて、画面を映す形のBloom,と違い完全に3D空間での、無料がもったいないくらいのライブ。視聴者は実に7万人。ドーム以上の人が観ている。コメントを埋め尽くすペンライトのスタンプ。彼女の一挙手一投足にカラフルなコメントが飛ぶ。

ハスキーボイスの落ち着いた声、ショートカットで、ゲームがいつもうまくてみんなを引っ張るおかゆは、今の時期はどうしてもモノエを思い出してしまう。
ぼくは歌枠にそれほど興味がないのであまり聴いてこなかったのだが、モノエは歌枠も売りにしていて、好きな人もたくさんいた。本動画は削除されたが、彼女のテレキャスタービーボーイはよくできたアニメーションPVでものすごい力が入っていた。
どこかでなにかが違っていたなら、いつかこの輝く舞台に彼女も立てていたかもしれないと思った。

ピカミィが教えてくれたことには、モノエの最後の伝言も「ありがとう」だったらしい。せめて本人から聞けたなら、その点はもう少しマシなピリオドにできるのに。閉じない線のまま、ぼくの中の磁富モノエの物語は消失した。


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