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「年収」で競り負けてしまう場合の対処法/見直しポイント集めてみた

こんにちは!
ポテンシャライトの庭田です!

当社のご支援する企業様は、シード期/シリーズAの投資ラウンドであることが比較的に多いです。
また、その他にも大手企業様や100名規模の中堅企業様ともお取引があります。

ただし、企業フェーズに関わらず多くの企業が「提示年収」に関して課題を抱えている状況です。

具体的な課題の例を挙げると、

●プロダクトや働き方などの魅力を打ち出しても、「年収」で競り勝てないことがある。
●現社員の現在の年収の制約で、「年収」を引き上げることが難しいことがある。

当社の見解をもとに記載しますので、ぜひ最後までご覧ください。


1. なぜ企業によって年収の差が出ているのか

近年、年収バブル(年収の上昇)が発生していることは皆さんも感じているかもしれません。サイバーエージェント社が「新卒採用で初任給42万円」という内容を公表したのは記憶に新しいと思います。

1-1. 外的要因(環境要因)

外的要因のとして、人員確保が難しくなっていることが挙げられます。
2023年7月時点の有効求人倍率は1.3倍(最高は東京都の1.79倍)となり、売り手市場が続いています。(参考データ:独立行政法人 労働政策研究・研修機構.「職業紹介-都道府県別有効求人倍率」.こちら
採用企業側としても求職者に魅力を感じていただく1つの手段として、「年収」を打ち出す企業が増え、年収バブルに拍車がかかっています。
特にエンジニア領域ではこれが顕著であり、優秀なエンジニアを確保するために年収が急激に上昇しています。

表はファインディ社が2023年9月に発行した「エンジニア転職マーケットレポート」から抜粋した「登録求職者の平均年収」と「登録平均年収の推移」です。
ファインディ社がレベルの高い求職者をターゲットに 登録者数を伸ばした可能性もございますが、事実として平均年収は1年半で80万円以上上昇しています。

※採用媒体「Findy」の特徴として、Web系エンジニアの登録者が多いという前提で記載を進めています。

媒体登録者の年収帯
2022年2月から2023年9月までの平均年収推移

参考:「エンジニア転職マーケットレポート」ファインディ社2023年9月実施分

1-2. 内的要因 

1-2-1. ビジネスモデル的に年収を上げることが難しい

受託企業は自社プロダクト/サービス企業と比較して、利益を安定的に上げにくい傾向があります。取引企業先がいつ解約になるかわからないからです。
また、サービスの独自性を作る難易度が高く、価格競争が発生しやすい構造があります。
結果として、受託企業は他の企業への乗り換えが容易であり、価格競争に参加するため、利益が出しづらくなります。

加えて受託企業はお客様とのタッチポイント毎に必ず人件費が発生します。
自社プロダクト/サービス企業であれば、サービスを運用し続けていれば費用が支払われますが、受託企業はどの工程にも高確率で、「人件費」が発生します。
自社プロダクト/サービス企業は人件費が発生しづらい運用保守フェーズと比較して、受託企業は、利益を大幅に乗せることが難しいので、社内にキャッシュを蓄積しにくい傾向があります。

1-2-2. 現社員を多く抱えており、給与レンジを変更できず市場とのずれが発生している

市場と給与レンジの「ずれ」は認知しつつも、市場に合わせる動きをするとかなりの損益を被ることになります。
仮に現在100名規模の会社様で、市場と100万円以上の年収レンジの乖離がある場合、年収を50万円上昇させようとすると、毎年5000万円の人件費を経費計上することになります。
(50万円×100名=5000万円)

みなさまご存知のファーストリテイリング社は2023年1月に最大40%の年収を上げることを決定していることもあり、体力がある企業は市場にあった年収レンジを整えているケースもあります。(参考記事はこちら

ファーストリテイリング社の事例では、どんなにミニマムでも16億円以上はかかります。(8000名×20万円の計算)

特に受託企業にとって、このような一気に給与レンジを引き上げる動きは難しい状況です。上記でも触れていますが、収入が完全に安定していないため、大幅な給与変更は困難であることをご理解いただけたのではないでしょうか?

2. 上記により発生している採用領域での年収の乖離

1で記載した内容の通り、市場では「受託企業」と「自社プロダクト/サービス企業」では給与格差が生じています。

初任給において、大卒だけを対象に取り上げると15年間で3万円(月収) 上昇しています(年間だど36万円)
さらにエンジニアに焦点を当てると、エンジニアの平均初任給は21万円です。(参考データこちら
初任給はエンジニアサイドとビジネスサイドとさほど変わらないですが、
エンジニアスキル上級者の初年度の年収は57.9%が400〜600万円で、中途採用顔負けの価格帯です。

中途採用は別枠で詳細にお伝えします。

2-1. 中途採用(ビジネスサイド)

ビジネスサイドは営業に絞って、経験年数ごとに記載を進めます。
※こちらは当社の見解になりますので、あくまでも参考値としてご認識ください!

●営業経験2年以上
新卒3年目(25歳)
経験社数:1 or 2社
想定年収:450万円前後
●営業経験5年以上
新卒6年目(28歳)
経験社数:1 or 2社
想定年収:500〜600万円前後
●営業経験5年以上兼リーダ経験2年以上
新卒10年目(32歳)
経験社数:1 or 2社
想定年収:600万〜800万円前後

営業職で年収を魅力として会社紹介をしている企業は、才流社が挙げられます。(求人票はこちら
才流社は900万円の求人表を作成しており、下限900万円の企業はとても珍しいケースです。

2-2. 中途採用(エンジニアサイド)

エンジニアサイドは特に顕著であり、市場感の把握も含めて以下ご確認ください!

●開発経験2年以上
新卒3年目(25歳)
経験社数:1 or 2社
想定年収:450万円前後
●開発経験5年以上
新卒6年目(28歳)
経験社数:1 or 2社
想定年収:500万円~750万円
●開発経験5年以上兼リーダー経験2年以上
新卒10年目(32歳)
経験社数:1 or 2社
想定年収:600万〜1000万円前後

余談ですが、年収が上がっている企業の例をお伝えします。
PRTIMESでの記事に掲載がある株式会社エンジニアは年収アップを公言しています。SES企業でありながら、25歳、経験年数4年で550万円以上を支給しているとのこと。(対象の記事はこちら

ご覧いただいた通り、年収は上がっていく一方です。
10年前と比べると圧倒的に転職者の優遇度合いは大きくなっていて、社内との調整が厳しいことがご理解いただけたのではないでしょうか?


3. 年収を上げられない企業様が取るべき施策

取るべき施策を上記に掲載しました。
(青が有効な策として記載をしています)

3-1. 現職の給与を上げる

タイトルに年収を上げられない企業様と記載がありながら、3-1で給与を記載しました。
選択肢を考える上で材料の1つとして、ご覧いただければと思います。

年収を10万円単位で上げても採用市場では戦えません。少なくとも50〜100万円は上げる必要があります。
上述の通りですが、規模感100名の企業様で5000万円/年の赤字が発生します。裏返すと、その金額を担保できるくらいの利益を作り出す必要があり、これは体力的に大きな企業様ではないと厳しいのではないでしょうか。
ご認識の通りだとは思いますが、上記の金額を「毎年」「安定的に」出す必要があり、年収を一気に上げることに対して足が重い企業様は多いかと思います。

ただ、現職の社員の離職の懸念を考えると、採用市場でのインフレが起きている事象は認知をいただいて、いつ年収を上げるべきかのタイミングは検討した方がよさそうです。

3-2. 副業制度の導入 / 業務委託の採用

現職の社員に対して給与UPという形で直接的にアプローチしなくても構いません。
副業制度を導入して収入源を確保してもらうことも十分な施策になります。
ただ、その副業制度という施策が有効な企業様とそうでない企業様が発生することがあるため注意が必要です。

年収と残業のマトリクス

①、②の場合には年収が高い場合には本件の問題にならないので説明は割愛します。

今回取り上げるのは④の場合です
④は副業制度の導入は有効な施策だと考えています。
※年収の基準はメンバークラスで450万円以下だと「低い」、リーダークラスだと550万円以下だと「低い」という想定をしてお話しします。

「給与が少なく」「残業が少ない」企業様のメンバーは、副業を平日の夜及び土日に行うことが可能です。そのため、自社で規定の仕事をしながらも、自分自身のやりたいことを副業にできる可能性があります。

副業を受け入れるには、社内の理解と現職への負担が出ないようにするという制約はあるかもしれませんが、それらの兼ね合いは実践しながらアジャイルに副業の在り方を模索しながら作っていくことをお勧めします。

またについては、副業を解禁したとしても、副業をする時間がない、もしくは副業と本業の兼ね合いがうまくいかず、悪影響を及ぼす可能性があります。
副業にめり込んでしまって本業に影響が出てしまう方が一定数います。
話を戻すと、残業が多く、給与が少ない企業様は別手法で、「目の前に集中できる環境づくり」を検討する必要がありそうです。

上記に関連して、費用を抑えて人材を採用する上でも「業務委託」採用は手段の1つとして有効です。正社員として採用する場合には、法定福利等含めて必須で50万円/月以上はかかります。その中で業務委託であれば必要な工数と金額を計算し、会社の状況によって費用に関する協議が可能なため、フレキシブルな点も会社へのメリットは大きいです。
ただノウハウの流出及び蓄積についてはデメリットがありますが、現在業務委託を採用し運用に乗せている企業様、副業定着へのコンサルティングをしている企業様も存在するので、導入する場合には力を借りてみるのも良いかと思います。

3-3. 福利厚生での還元

最も一般的な施策は「福利厚生での還元」です。
年収は望まない分、どれだけ生活の出費を抑えることができるかという思いが求職者の求めていることの一つです。
ただ、社内に福利厚生が整っているが、求職者が活用手法や活用後の生活の変化を理解していないことが多いです。そのため、特に最終面接フェーズの求職者には丁寧に対応することが有効な策です。

福利厚生にもいろいろありますが、年収で勝てない企業様が取り入れるべき福利厚生の目的は「経済的なサポート」ができる内容であるか、だと思います。
企業様の視点で福利厚生を導入する時に入れたい視点としては「従業員にも還元ができて、使ってもらえるか」です。具体的に以下を記載します。

①借り上げ社宅制度
これは目の前の出費が減るというメリットがあることに加えて、節税対策になります。
詳細はこちら

こちらの制度をうまく活用しながら、面接/面談の場で年収が他社よりも低い場合に、求職者と一緒に支出額を計算し、どの程度現在との増減があるのかを把握することが重要です。

②食事補助
毎日食事をする際に、社員交流も含めた形で名前をつけ、制度化する企業様は多いようです。
一昔前では社員旅行で経費を使用してた企業様は多いかと思いますが、プライベートと仕事を切り分ける環境を推奨している時代であれば、日々の仕事の中での還元はとても有効な策であり、使用するハードルもかなり低いかと思います。

その他の現在従業員が欲している福利厚生はこちらよりご参考までにご覧ください!

3-4. 業績連動型賞与 の導入

業績連動型賞与とは以下を参考にしてみてください。
こちら

こちらの1番のメリットとしては「人件費の経営圧迫リスクの低減」です。
その年の業績に連動し、上限も決めて支給ができるため、経営上の上限も見込むことができます。
当社では営業利益の上限15%をメンバーに分配するようにしています。
2023年の新しい制度として導入してます。

転職市場においては、前年度の実績などをお話ししつつ、今年度も社員還元ができるのであれば、どの程度還元できるかの予測だけでもお伝えできるとよさそうです。


4. 採用で勝てないのは本当に「年収」のせいだけなのか?

実は年収が低いことを原因にして、他の魅力を打ち出せてない可能性があります。
今一度、自社がなぜ採用で勝てていないのかの分析が必要です。

4-1. 年収以外の魅力は発掘し、適切に打ち出しているか

例えば、「魅力を適切に打ち出しているのか?」という観点で、改めて整理してみましょう。
当社では6P+SCMGODBというフレームワークで言語化しています。
魅力項目のうち、打ち出せていない魅力や、欠けている魅力がある場合は、現在の打ち出し内容を「見直す/発掘する」ための採用ブランディングの実施をお勧めします。
当社のノートはこちらです。

仮に数年前に魅力の整理を行っている場合には改めて発掘することもグッドアクションと考えてます!

魅力を「適切に打ち出す」ことも重要で、仮に媒体採用を進めている場合、
・その媒体の求人票に魅力が掲載されているか
・採用関連のwebページに魅力の記載があるか
・スカウトやその他細かいところにも採用の魅力を散りばめることができているか

などを確認してみてください。

上述済みですが、ブランディングした内容は内部も市場も変化していくため、本日時点では魅力から変化してる可能性があり、魅力として打ち出せること/魅力として打ち出すことができないことは定期的に見直しは必要です

4-2. ターゲットは正しいのか?

スカウトを送付しているターゲットや、求人票の募集要項の確認も重要です。優秀な人を採用したいと言う願望は理解できますが、市場と乖離があれば元も子もないです。
例えば同じ金額で某大手企業とバッティングした場合に、自社で内定承諾を受理してもらえるかを想像した時に、正直厳しい予測がついてしまう企業様も少なくないと思います。

ターゲットは即戦力のみで、大手企業とのバッティング時にも張り合っていくためには、上述した市場間の年収帯と照らし合わせて待遇を決定する必要があります。

上記が厳しい場合、ターゲットの再選定が必要です。例えばリーダー層を採用したい場合、以下もターゲットに広げて戦う必要はあると思います。
・サブリーダー経験の方
・開発経験はあるが、リーダー未経験の方
・違うドメインの、マネジメント経験がある方

戦い方としては上記の方々のインサイトを理解して、合わせたメッセージングを打ち出す必要があります。違うドメインの知識を自社で理解するのも一つの手ではありますが、外部の力(採用コンサル)を借りるのも一つの手段であると考えています。

当社ではTIMを大事にして、メッセージングを作成しスカウト文面/求人票などに活かしています。

4-3. その他(採用戦略からアプローチの変更)

年収が高く提示できない場合、採用戦略全体を見直して、「違う土俵」を作成することをおすすめします。

当社の事例を記載します。
当社は「年収」の土俵で戦わずに、「価値観マッチング」を一番重要視しています。
当社のMVVC(mission vision value culture)に共感することを入り口に、その未来に向かって伴走できるメンバーを集めています。
個人的な主観は入りますが、なぜそれで人が集まるかでいうと、自己成長の延長線上に面白い未来が見えて、その未来を自分で作ることができるかもしれないという「ワクワク感」だと思います。

年収という一つの大事な要素はありますが、それを凌駕する「未来へのワクワク感」、それを裏付けるような「積み上げた実績」がとても重要だと考えています

会社視点に論点を戻すと、今すぐに空いたポジションの採用も重要ですが長期的な視野を持つ企業様であれば、「長期目線で育てる」という視点が重要です。
本当に必要な早急に必要なポジションはどこなのか、そうでない場合には何年スパンで目標を据えて人を採用するべきか、そこは情報収集しながら進めた方が良いかと考えています。

一つの軸として、「年収」以外にも「選考の体験設計」で興味を引くことができる事例をお伝えしました。

市場平均よりも「提示年収」を出せない場合には、採用戦略を熟考してどのように求職者に魅力項目を打ち出すかの”採用ブランディング”が重要です。


5. まとめ

いかがでしたでしょうか?
以下本記事のまとめを記載して終わりたいと思います!

①採用ブランディングにて打ち出せていない魅力を発掘する
②年収で他社に負けてしまう場合は福利厚生の拡充や、社内の体制/制度を変更する
③採用戦略から再設計をして、求職者体験の向上をする

提示年数を上げることができない企業様の1つの手段として参考になりましたら幸いです。
長文でしたが、最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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