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岡井千聖は現代の寅さんだった

最近「見られる用文化」の記事を連投していましたが、今回はちょっと箸休め的な記事を。

この年始にフジテレビで放送された「BACK TO SCHOOL!」という番組の感想です。

私はもともとハロプロの中で最も好きなグループが°C-uteであり、°C-uteの中の一推しメンバーが岡井千聖さんだったので、°C-ute解散後も岡井ちゃんがテレビで活躍してくれているのをいつも嬉しく拝見しているのですが、その中でもこの番組の岡井ちゃんは、珠玉の素晴らしさでした。

これから話すのは、その岡井ちゃんの様子になぜか私が映画『男はつらいよ』の主人公、フーテンの寅さんを思い出した、というわけのわからない話です。

「食べ物を分けてもらうこと」ができるということ

番組の趣旨は、「学生時代やり残したことがあるタレントが大人になった今もう一度だけ実際の高校に転校し数日間生徒として過ごす」というもの。

すごいのは、現在24歳の彼女が10代の高校生たちの中に混じったとたんに、年長者であることも芸能人であることもまったく関係なく振舞っていたことです。

物怖じせず、周りの生徒にトンチンカンな質問を次々繰り出し、お弁当持参なのを知らなかった岡井ちゃんにご飯を分けてくれた生徒にも、素直に「嬉しい!」と言って、パクパク食べる。

自分がこの立場だったらと考えても、こんなに年下の子の食べ物を分けてもらうのはちょっと忍びなく思ってしまいそう。
「食べ物を分けてもらう」って、少し宗教的なテーマのようにも感じます。
相手の食べる分を減らすという犠牲を払って分け与えてもらうわけで、そこで「大人が子どもからもらうわけには…」と思ってしまいそうなところですが、岡井ちゃんは自分が今この場では教室の中の生徒の1人で、周りから教えてもらわなければ何もわからない弱い立場だということをナチュラルに、即座に受け入れるんですね。
ちなみにこの時ご飯を分けてくれた「レナちゃん」とは一番の仲良しになります。

同級生の女子たちと仲良くなった岡井ちゃんは、その日の放課後にはクラスメイトの家にに誘われて女子会を楽しみ、ゲームをしたりカップ麺を回し食べしたりと、実に高校生らしく遊びます。

こういう人との距離の縮め方、周りもだんだん違和感が働かなくなっていくような馴染み方も、まるで寅さんのよう…

部活選びの決め手は「人情」

部活を体験してみたかった岡井ちゃんは、1日目は憧れの「サッカー部のマネージャー」を体験します。
しかし、サッカー部のマネージャーは岡井ちゃんの想像とは全く違う地味な雑用でした。

選手たちに気軽に声をかけることもできない厳しさ、ひたすら立ちっぱなしで選手の練習を見守り、練習後に淡々と洗濯などをこなす様子…なかなか見ていてモヤッとするのですが、それがこの学校の、この部の慣習なのでしょう…。
そんな中で、岡井ちゃんは「暇」「この時間にご飯食べたらいけないの」「水が冷たい」と素直に弱音を吐きまくります。その日の部活の最後には、仕事を教えてくれたマネージャー仲間の女子に、「千聖は絶対にできないわ」とぼやく岡井ちゃん。

2日目岡井ちゃんは、他にも色々な部活を見学しようとダンス部、テニス部、バスケ部と体験入部していきますが、どこに行っても「難しい」「センスない」「思ったより走る」などと言って全部即ギブアップ。
そして向かうのが、昨日あんなに愚痴を言っていたサッカー部なのです。岡井ちゃんが姿を見せると、昨日仕事を教えてくれた女子マネージャーがなんとも嬉しそうな顔で手招きします。
この受け入れられ方が、まさに岡井ちゃんという人間なんだなあ、という感じ。

その日もめいっぱい愚痴と弱音を吐きながらも、最後までサッカー部マネージャーの仕事をして、部活終わりにはすっかり仲良くなったマネージャー仲間の女子と一緒にカラオケに行きます。

この、なんだかんだと「おいおい、しょうがないなこの人は」と思わせといて、結局最後は人情に厚い感じ…
もしかして、サッカー部に戻ったことが情によるものだと、本人は気付いてさえいないかもしれません。
本当に、寅さんかよ……!

クライマックスの語り

サッカーの女子マネージャーを体験した時、「みんな大変なんだね。アイドルやってて部活とか出れなくても同じように辛かったなら別に良かったって思える」と語っていた岡井ちゃん。
自分自身のアイドルという特殊な体験を、こんなに当たり前にほかの高校生の生活と並べられるというのも、彼女の人間性を感じさせます。
最終日にクラスメイトの前で最後の挨拶をするときには、「千聖は働いてるのにみんな遊んでていいなという気持ちが強かったけど、高校生活過ごせたことで、勉強は嫌いだし、もう高校人生に悔いはないです」と語るのです。

自分自身の今まで過ごしてきた人生の大切さも、ちゃんと見失わない。細かいところでは愚痴もぼやきも多いけど、本当に大切なところでは流されない。それを、「勉強嫌いだし、自分はこっちでよかったや」という身も蓋もないこざっぱりした言い方で表現する。
うーん、これ、映画のクライマックスあたりの寅さんの語りっぽい。

以前から、岡井ちゃんの雑なポジティブさとか、人の良さが滲み出てる感じとかがとても好きだったのですが、この番組の彼女のふるまいを見てて、そうか、岡井千聖は現代の寅さんだったんだ…!と膝を打ちました。

当該映画のタイトルは『男はつらいよ』ですが、こういうキャラクターには性別関係ないのかもしれませんね。

とはいえ岡井千聖は°C-ute時代、努力で歌唱力を爆上げしてきた根性の人ですから、真面目でガッツのある人なんですよ本当は。そういうところも好きなんですけど。

〈余談〉対照的なVTR

余談ですが、同番組では岡井ちゃんのVTRと並行して、亀田興毅さんが別の高校に転入するVTRも放送されました。
そちらは「上下関係のない」岡井ちゃんとは真逆で、クラスメイトに「舎弟」を名乗る男子が現れ、亀田さんに気に入られようと躍起になり、一発芸を求められて必死で鼻にうどんを入れたりしていました。

いかにもボスキャラな亀田さんだったから特別なのかもしれないけれど、MCの風間俊介さんも「自分は学生の時『舎弟』の彼と同じ立場だった」と話していて、男子の学校生活ってそんなにパワーゲームなの…?とちょっと震えました。

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