見出し画像

食べるときは「食べること」に専念する──マインドフルネスの12の練習 WEEK5

photo by ola mishchenko/unsplash

『「今、ここ」に意識を集中する練習 心を強くやわらかくする「マインドフルネス」入門』(ジャン・チョーズン・ベイズ著)の一部公開4回目。WEEK5の練習は──「食べるときは、食べることに専念する」です。

画像1

今回もウォーミングアップ、マインドフルネスの効能の紹介からはじめます。

マインドフルネスの効能 その3

マインドフルネスは「不安」や「恐れ」を消す

著者のベイズは、「不安」は一種のエネルギーだ、と言っています。不安は心臓や腸などにストレスを与え、からだ全体に悪影響を及ぼします。さらにはからだの内部にとどまらず、周囲の家族や同僚、友人に伝染する、とても強力な負のエネルギーだと

不安はどこからやってくるのでしょうか。それは、「過去」や「未来」です。心が「今、ここ」から離れ、過去や未来を彷徨うとき、「なぜあんなことをしてしまったのだろう」「きっと失敗するに違いない」などと、事柄を実態以上にマイナス評価してしまうことが多いのです。

これを避けるには、心が「現在」から離れないようにつなぎとめておくことが大事です。マインドフルネスの練習によって「今、ここ」を意識することに慣れていくと、不安や恐れを感じにくく、リラックスした状態を保ちやすくなっていく。

このように意図的に心を「気づき」で満たすことが、マインドフルネスの本質です。(28ページ)


それでは、「食べるときは、食べることに専念する」練習です。
思い出しました。きのうの昼食、スマホをいじりながら食べていました…。

(本書PARTⅡ マインドフルネスを日常で実践する53の練習 より)

どんな練習?

今回は、食べたり飲んだりしているときに、ほかのことをしないようにします。きちんと座って、自分が口にするものをゆっくり楽しみます。五感のすべてを開放させましょう。食べ物の色合い、形、表面の様子などを眺め、口に入れて香りや味を味わいます。食べたり飲んだりするときに出る音も注意して聴きます。

取り組むコツ

食事をするテーブルに、「食べることに専念」というメモを貼ります。間食をすることが多い場所にも同じメモを置いておきます。食べながら見ないように、パソコンやテレビには、「食べる」という言葉にバッテンをつけたメモを貼っておきましょう。

この練習による気づき

現代人は、年中「ながら行為」をする習慣がついていて、食べることもその一部になっています。この練習をすると、自分がどれほど多くの「ながら行為」をやっているかに気づきます。いかに何かをしながら、歩き、運転をし、テレビや映画を見て、本を読み、パソコンで仕事をし、テレビゲームをやり、音楽を聴いているかということもわかってきます。

そういう明らかな「ながら行為」を排除すると、その是非が少し微妙な状況が出てきます。

それは、話をしながら食べることです。みなさんも子どもの頃に、「口に食べ物を入れてしゃべってはいけない」と注意されたと思いますが、私たちは大人になっても、食べることとしゃべることを同時にやっています。

しかしこの練習をしていると、「食べること」と「話すこと」を交互にできるようになります。つまり、話すときには、食べるのを一時中断すればいいのです。この2つを同時にやってはいけません。

食事をしながら人と話すことはごく当たり前になっているので、1人でレストランにいるときに、本も読まず何もせずに食事をするのは落ち着かない気分になりがちです。周囲の人に「友だちのいない気の毒な人と見られやしないか」などと考えてしまいます。そこで、本を開いたり、パソコンを開けたりして、自分にはやることがあって、「ただ食べるだけ」のために時間を無駄にしないのだということを示そうとするのです。

深い教訓

食べることさえ時間の浪費に思えるほど、「ながら行為」をせずにいられないのはなぜなのでしょう。どうやら私たちは、1日のうちにどれくらい仕事をしたか、長々と続く「TODOリスト」の項目をいくつ線で消したかで、自分の価値が決まると思っているようです。

食べたり飲んだりする行為自体は、その人に収入も伴侶もノーベル賞ももたらしません。だから、「価値がない」行為のように見えるのでしょう。

「マインドフルな食べ方」のワークショップに参加した人の多くが、「ともかく、さっさと食べて仕事に戻りたいと思っていた」と言います。でも、私たちが毎日する仕事のなかで一番重要なことは、たった30分でも、「その瞬間に意識を置くこと」ではないでしょうか。私たちがこの世の中に提供できる最高の贈り物は、製品でもプレゼントでもなく、意識をすべて注いで「そこにいること」ではないでしょうか。

食べ物にまったく注意を払っていなければ、その食べ物がそこにないも同然です。お皿にあるものをすべて平らげても、まだ満たされない思いが残ります。すると、さらに食べ続けてしまい、お腹が苦しくなるまで止められません。

マインドフルに気持ちを込めながら食べれば、たとえひと口でも、食べることが豊かで多彩なものになります。そうすれば、胃がはちきれそうになるまで食べるのではなく、心が満たされるまで食べておしまいにできます。禅僧のティク・ナット・ハン(ベトナム出身の禅僧・平和運動家・詩人。 ダライ・ラマ14世と並んで、20世紀から平和活動に従事する代表的な仏教者)は、次のように書き記しています。

みかんを食べても、本当の意味で食べていない人たちがいる。彼らが食べているのは、悲しみ、不安、怒りであり、過去や未来である。心と体が1つになる「今」というときに、本当に存在していない。単に(食べ物を)楽しむことさえ、何らかの訓練が必要である。食べ物というのは、われわれに栄養をもたらすために広大な宇宙によって与えられたもので……言ってみれば奇跡なのだ。
自分を変える言葉
食べるときには食べることに専念し、飲むときは飲むことに専念する。
マインドフルネスが、食べ物にも生活のすべてにも最高の味わいを
与えてくれる。ひと口ごとにそれを味わい、それぞれの瞬間を楽しもう

日本実業出版社のnoteです。まだ世に出ていない本の試し読みから日夜闘う編集者の「告白」まで、熱のこもったコンテンツをお届けします。