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姿勢を意識する──マインドフルネスの12の練習 WEEK7

photo by callum shaw/unsplash

『「今、ここ」に意識を集中する練習 心を強くやわらかくする「マインドフルネス」入門』(ジャン・チョーズン・ベイズ著)から、マインドフルネスの練習を紹介する7回目。

今週からは、よけいな前置きなしに練習を紹介していきます。ぜひ週末から実践してみてください。

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(本書PARTⅡ マインドフルネスを日常で実践する53の練習 より)

WEEK7──姿勢を意識する

どんな練習?

1日に何度か、姿勢を意識します。この意識のしかたには2つポイントがあります。「今、自分がどんな姿勢をしているのか」「体がそれをどんなふうに感じているか」です。

姿勢を意識することは、そのたびに姿勢を正すことにもつながります。前かがみになっていると気づいたら、静かに背筋を伸ばしてください。

姿勢のマインドフルネスを行なうのに一番いいのは、食事のときです。イスの前方に腰を下ろして、両足をしっかりと床の上に置き、ひざを少し離します。背筋をまっすぐにして、できるだけ多くの息が吸い込めるようにします。

ほかに、姿勢を意識するのにいいのは、列に並んでいるとき、運転しているとき、ベッドに横たわっているとき、会議や授業に出ているとき、それから歩いているときです。

取り組むコツ

家族や友人に、「姿勢が悪かったら知らせてほしい」と頼みます。また、鏡やショーウィンドウに映る自分の姿を注意して見ます。その前を通りすぎるときは、横からの自分の姿をチェックします。どんな姿勢をしているでしょう?

この練習による気づき

この練習をするとたいていの人は、自分の姿勢の悪さに気がついて驚きます。正面から見るとまずまずでも、横から見ると肩が前かがみになっていてがっかりします。状況によっても、姿勢は変わります。就職の面接のときや、面白い講義を聴いているときなどは、背筋が伸びているものですが、ソファでテレビを見ているときなどはグニャリとしています。

軍人、ダンサー、高貴な人たちなど、特別な訓練を受けている人は、ひと目でわかるものです。明らかに姿勢が違うからです。こういう人たちにとって、姿勢が大事なのはなぜでしょう? スペインには「司祭様は水着を着ていてもわかる」という格言があります。つまり、精神の姿勢が整っている人は、それが立ち居振る舞いに現れるのです。

禅の修行では、姿勢に非常に重きを置きます。道場で瞑想をしているときだけでなく、食事中も歩行中もです。歩くときには、手をウエストのあたりで組んで歩きます。通路で互いにすれ違うときには、立ち止まって手を合わせてお辞儀をします。その日の作業を与えられたときは、お辞儀をし、その作業を実行できる自分の体に感謝します。

深い教訓

20世紀を代表するタイの名僧として知られ、教師でもあるアーチャン・チャーは、こう言いました。

「どんな姿勢をしていても、常にマインドフルであることから叡智が生まれる。朝起きたときから眠りにつくまで、修行を続けなさい。仕事をしていても、座っていても、トイレに立つときも、注意力を途切れさせないことが大事だ」

姿勢と集中力は関連しています。(瞑想中でもそのほかのときでも)眠気が襲ってくるというのは姿勢が崩れた証拠で、肺が十分に空気を取り入れられていないということです。そういうときには静かに姿勢を正します。下から順番に背骨を伸ばしていって、胸を広げます。

そして何回か深呼吸をしましょう。呼吸のためのスペースを広くし、空気が流れやすくすることが目的です。姿勢と気分もまた関係しています。気分が落ち込んでいると気づいたら、まず姿勢を正してみましょう。

よい姿勢を表現する「真っすぐ」という言葉は、人生をどう生きるかという文脈で使われる場合には、尊厳と徳と不動の信念をもって生きるという意味が込められます。そういう人は、人生でどんな試練に出会っても、完全になぎ倒されてしまうことがありません。

生きることのさまざまな側面はみな同調しているのです。釈迦はよく「高貴な人」と呼ばれますが、それは彼が王子として生まれたからではなく、瞑想とマインドフルネスを一途に修行して、深い「真理」と整合した生き方を貫いたからです。私たちもまた練習によって、この「真理」に目覚め、それに教えられ、支えられ、導かれて生きることができます。

呼吸に意識を集中すると、本来の心の平静を取り戻すことができます。心のなかの波立つ思考が静まれば、本来の叡智が見出せます。リラックスして心を開けば、本来の優しさが現れます。この練習を十分に行なうと、そういう心の状態にすぐに到達できるようになり、自信をもって、真っすぐに、揺るぎない生き方ができるようになります。

自分を変える言葉
体と心は別々のものではない。深く結びついて互いに依存している
心や気分が落ち込んでいるときは、まず体の姿勢を真っすぐにしてみる

日本実業出版社のnoteです。まだ世に出ていない本の試し読みから日夜闘う編集者の「告白」まで、熱のこもったコンテンツをお届けします。