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「つなぎ言葉」に注意する──マインドフルネスの12の練習 WEEK3

photo by priscilla du preez/unsplash

『「今、ここ」に意識を集中する練習 心を強くやわらかくする「マインドフルネス」入門』(ジャン・チョーズン・ベイズ著)の一部公開3回目は、「WEEK3──つなぎ言葉に注意する」です。

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本題に入る前に、本書で解説されている「マインドフルネスの効能」に触れておきたいと思います。これは次回以降も少しずつ紹介していきたいと思いますので、「もちろん知っている」という方は飛ばしてください。

マインドフルネスの効能その1

本書で、著者のベイズが最初にあげているのが次の効能です。

マインドフルネスはエネルギーを節約する

私たちの意識はしょっちゅう、「今、ここ」から遠くへ離れます。時間的にも空間的にも。

過去の過ちを思い返し、くよくよと思い悩む。
未来に起こりそうな悪い出来事を想像して、不安に駆られる。
不快な状況からの逃げ道を確保するため、空想にふける。

著者は、これらはすべて頭と心のエネルギーの無駄づかいだ、として次のように言います。

  そこから意識を引き戻し、実際にいろいろなことが起きている、この現在に落ち着かせることが大事です。それが脳のエネルギーの節約になります。そうすれば脳は、いつもさわやかでオープンで、何が起きてもすぐに対応できる状態でいられます。(23ページ)

意識は、油断すると(睡眠中でさえ)すぐあちこちに出かけて、行った先で悩んだり不安を感じたりします。そのたびに脳のエネルギーは浪費され、私たちは疲れてしまいます。

しかし、「リラックスして現在の出来事の流れに意識を置いている状態」、つまりマインドフルなとき、脳は休憩できる。

マインドフルネスの練習をしていくと、意識がときに過去未来空想の世界に向かったとしても、「今、ここ」に帰ってくることを思い出せるようになるのだそうです。


それでは、WEEK3の練習です。つい使ってしまう「みたいな」「ていうか」などの言葉に注意を向けます。

(本書PARTⅡ マインドフルネスを日常で実践する53の練習 より)

どんな練習?

無意識に口にする「つなぎ言葉」に気をつけて、できるだけ言わないようにします。

つなぎ言葉とは、「あのー」「ええっと」「でー」「そのー」「みたいな」「ほら」「っていうか」など、とくに意味のない言葉です。ほかにも、次々に新しいつなぎ言葉が生まれています。最近加わったのは、「基本的に」とか「まあともかく」などの言葉です。

つなぎ言葉を言わないように気をつける一方で、「なぜ使ってしまうのか?」にも注意してみましょう。どんな状況で、何のためにつなぎ言葉を使うのでしょうか?

取り組むコツ

最初のうちは、習慣で無意識に口に出してしまうので、どの言葉を言ったのかさえ自分ではわからないこともあります。「つなぎ言葉を使ったら言ってね」と、周囲の人に手伝ってもらう必要があるかもしれません。

「どんなつなぎ言葉を、どのくらい使っているのか」を知るもう1つの方法は、自分がしゃべっている場面を録音することです。それを聞いて、自分がよく使うつなぎ言葉とその頻度を表にまとめるといいでしょう。

この練習による気づき

これは私の寺院でも一番難しい練習の1つです。よほど訓練された話し手の場合は別ですが、自分が口にするつなぎ言葉に気づくことも、それを事前に止めることも、非常に難しいのです。つなぎ言葉を意識するようになると、ラジオやテレビからも、周囲の会話からも、そこらじゅうから、つなぎ言葉が聴こえてくると思います。今の10代の若者は、「like(みたいな)」を、年間平均20万回使うというのですから驚きです。

また、この練習をしていると、つなぎ言葉を使わない人がいることにも気づくようになります。そして、つなぎ言葉のない話し方がどれほどわかりやすく、力強いかということもわかってきます。マーティン・ルーサー・キング、ダライ・ラマ、バラク・オバマのスピーチを、つなぎ言葉に注意しながら聴いてみてください。

つなぎ言葉は、いくつかの機能をもっているようです。1つは、スペースを空ける役目です。「で……彼の考えをどう思うか言って…それから、えーっと……あの……つまり……」

というように、聞いている人にこれから何かを言うつもりだとか、まだ話し終わっていないということを伝えられます。つなぎ言葉はまた、「でー、ともかく、ほら、まあ基本的に、何ていうか、このプロジェクトは進めたほうがいいかなーみたいな……」というように、言葉を曖昧にしてやわらかくするためにも使われます。

相手が強く反応することを恐れて、つなぎ言葉を使ってしまうのか。それとも、自分が間違うことを恐れて、つなぎ言葉を使ってしまうのか。いずれにせよ、そんな煮え切らない話し方をする大統領や主治医は願い下げですよね。

つなぎ言葉によって、バカバカしいほどに話の内容を薄めてしまうと、聞き手にはほとんど何も伝わりません。聖書の言葉だってこんな感じになってしまいます。

「イエスが、まあ何というか、言ったんです。汝(なんじ)の、ほらあの、隣人をね、えーっと、自分と同じように、まあ、ある意味、愛したらどうか、みたいな……」

深い教訓

「つなぎ言葉」がこれほど一般的に使われるようになったのは、ここ50年ほどのことですが、この傾向が続いたら道徳的な価値観にも私たちはこんなことを言い出しかねません。

「盗みをするってことは、まあ何というか、ある意味、悪いことだと言えなくもない……」

心が澄み切っていれば、もっと率直に、正確に、しかも人を傷つけることなく言葉を口にすることができます。この練習は、無意識の行為がどれほど私たちの生活に浸透しているか、それを変えることがどれほど難しいかを教えてくれます。つなぎ言葉に代表される無意識の習慣というのは、無意識のレベルにとどまっている限り、変えることは不可能です。

その行動パターンに意識の光を当てたときに、初めて修正する余地が生じます。でもそうなってさえ、染みついた習慣を変えることはやさしくありません。努力を中断したとたんに、また元に戻ってしまいます。「自分自身を変えたい」と思い、「自分の可能性を活かしたい」と思うなら、優しさと決意、それにたゆまぬ練習が必要になります。

自分を変える言葉
「お前たちはみな悟りに達したのだと思っていた──口を開くまでは」
鈴木禅師

日本実業出版社のnoteです。まだ世に出ていない本の試し読みから日夜闘う編集者の「告白」まで、熱のこもったコンテンツをお届けします。