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商標法 判例 真正品の並行輸入(フレッドペリー) 平成14(受)1100

 真正商品の並行輸入に関する最高裁判例として有名?な「フレッドペリー事件」です。真正品の並行輸入が違法性を欠く(違法ではない)ための3個の基準(要件)が示されています。
 第1の要件は並行輸入される商品が新製品であること、
 第2の要件は国内外の権利者が実質的に同一であること、
 第3の要件は品質が実質的に同一であること、
です。

 フレッドペリー事件では、商標権者から使用権を獲得したシンガポールの会社が、契約地域外である中国の工場にポロシャツを下請製造させていました。このことにより、「出所表示機能および品質保証機能が害されている」として商標権侵害と判断されています。

 なお、商標の出所表示機能又は品質保証機能を害する行為であるかを判断し、侵害を構成するかの判断を行うことを「商標機能論」といいます。

 商標のフレッドペリー事件では原則は侵害ですが、特許のBBS事件では原則は非侵害です。

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問題点
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(1)フレッドペリー事件では、品質保証機能を害する「おそれ」で足りるとされたのが特徴のひとつであり、この点については批判がなされています。具体的に、どこまでが害する「おそれ」があるとされるのかということです。

 (2)契約上の製造数量違反(契約数量オーバー)が、品質保証機能を害する「おそれ」にあたるのか? 契約数量が10000個である場合、10000個目と、10001個目は同じ品質と考えてもよさそうです。そうだとすると、製造数量違反を商標権侵害とはできないはずです。

(3)内外価格差(日本と同じ製品が東南アジア等で安く売られている)が並行輸入が起こる原因と思います。並行輸入が起きると、並行輸入業者によって、「日本で未販売の商品が、外国から日本に持ち込まれる」ことも考えられます。
 このような場合、ブランド維持/ブランド毀損に対して何の責任をも持たない並行輸入業者に日本でのブランドを任せることになるわけです。例えば、商品の使用条件が異なる等により、事故が発生したとしても、並行輸入業者は責任を取らないので、ブランド毀損だけが起きてしまいます。
 特に、ジレットモデルを採用している企業(いわゆる消耗品ビジネスを行っている企業)では、並行輸入が行われやすいと思われます。このような企業が並行輸入を行われると、利益を失うだけではなく、品質問題、ブランド問題、将来的な販売機会の損失(高級品以外を売りにくくなる)、が生じると思われます。

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●具体的な判決文 

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/352/052352_hanrei.pdf

●判決文の結論

 商標権者以外の者が、我が国における商標権の指定商品と同一の商品につき、その登録商標と同一の商標を付したものを輸入する行為は、許諾を受けない限り、商標権を侵害する(商標法2条3項、25条)。
しかし、そのような商品の輸入であっても、
(1)当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり、
(2)当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより、当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって、
(3)我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから、当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される場合には、いわゆる真正商品の並行輸入として、商標権侵害としての実質的違法性を欠くものと解する。
けだし、商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(同法1条)、上記各要件を満たすいわゆる真正商品の並行輸入は、商標の機能である出所表示機能及び品質保証機能を害することがなく、商標の使用をする者の業務上の信用及び需要者の利益を損なわず、実質的に違法性がないということができるからである。


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