【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「Myself」長渕剛
たつみは胸を隠して立っている。暗い部屋で、龍生は微笑んでいる。全身のタトゥーが暗闇と同化して輝いている。真面目なたつみとチンピラの龍生の人生が絡み合ったのは偶然。気まぐれな悪戯。でも、たつみが龍生に惚れたことは間違いなかった。「死んだ弟もやんちゃだったね」と緊張を隠して言った。
「なんで死んだ?」
その答えは《自殺》だったが「事故だった」とたつみは嘘をついた。龍生は嘘を見抜いたが、そこまで鈍感でもないから「そうか」とつぶやくに止まった。
「恥ずかしいからベッド行こう」とたつみが龍生の右手を取る。素直にそれに従った龍生だったが、ベッドまで行くと小突くようにたつみをベッドに押し倒した。しかし、たつみは強気なふりをして「入れ墨、こんなに入れて痛くなかったの?」とうるっとした瞳で言った。
「なんでこんなヤクザもんと寝る気になったんだ」
「好きだからだよ」
「なんで?」
それらは怯むことのない真っ直ぐなまなざし。
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