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【400字小説】祝福が黄色

踏み切り前でプロポーズして良かった。
あなたに出会えて嬉しかった。
あなたを泣かせてすみませんでした。

ずっとね、謝っていたんだよ。
わたしの過ちは許されない。
佐々木希よりも神々しい
あなたの対応に頭が上がらない。

こんな平凡な単語を並べることしかできない。
それでもあなたのわたしへの失望感に比べたら、
指の爪を剥がされたくらいの苦痛で。
あなたの心臓を握り潰そうとしたんだから。

嘘はいけなかった。
本当のことをはじめから話すべきだった。
あなたを失わないためにそうした。
それってわたし自身のことしか
考えていないってことだった。
あなたを裏切ったのに、
あなたという宝物を失うのは、怖かった。

なんてことだ、なんて自分勝手なんだ。
それも含めて赦したあなたに、
捧げる言葉が愚かなわたしには見つけられない。
オアシスみたいな平凡な歌しか歌えないわたし。
どうして見捨てなかったのか。
理由はいらないから、
これからも黄色でわたしを塗り潰して。

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