見出し画像

AIイラスト×700文字の物語|5つの魂~①赤の魂~

『魂を5つだよ。持ってくれば、お主の望みを叶えよう』

魔女はそう言った。魂はどこにあるのかと問うと、紫色をした大きな口をにんまりと開いた。

『魂は墓に眠ってるもんだろうよ』

ここから西へ行くと墓所があるという。そこに居る墓守に頼めと。
魂なんて何か分からないけれど、それで大切なものが取り戻せるなら――やらない理由がなかった。


赤の墓守

「生きた人間が来る理由。2つ」

墓所に着くと、黒い少女が満月を背に立ちはだかる。手にした大きい鎌からは常に赤い液体が滴り落ちている。辺りに漂う臭いから、おそらくそれは……考えたくもない。

「死者を悼むか墓を暴くか。お前どっち?」

精巧な人形の顔立ちには紅色のガラス玉。その瞳はまばたきもせず私を射貫く。彼女は人間か、人形か。はたまた怪異の類なのか。
普段の私ならすぐに逃げ出していただろう。でも今は、やらないといけない。

「どちらでもありません。”魂”が欲しいのです」
「そう、魂。何に使う?」
「大切な人を取り戻すために。貴女は誰ですか」
「私は。赤の墓守」

墓暴きでないと分かったからか、墓守の眼光が幾分やわらかくなった気がする。

「魂。渡してもいい」
「本当に! ありがとうございます」

なんとなく手を差し出した私をガラス玉で見つめ、少し口を歪めた。

「この鎌は、常に血に。飢えている」

墓守が鎌を見やると、紅い刃が震え出した。獲物に喰らいつく寸前の獣のように。

「お前の血と。交換」

返答する間も惜しい。悩む理由なんてない。私のすべてを差し出しても構わないのだから。

「分かりました」

頷くやいなや、視界が真っ暗になった。
急激な吐き気が喉にせりあがる。眩暈なんてもんじゃない。脳が膨張してはじけ飛ぶような痛み。

死を覚悟する暇もなく、私の意識は刈り取られていた。

✎イラスト:Bing Image Creator

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?