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薬擬語り*コンサータ


 記念すべき第一回目の薬擬語りとなります。初手は、やはり最初に擬人化したコンサータです。

タイツじゃないよ、ボンデージ。


 少し薬に詳しい人なら『最初の語りがコンサータ? 特殊すぎないか?』となるかもしれませんが、知ったこっちゃありません。私の薬擬の中では主人公なので。
 3人いるのは、私がここまで薬擬を進めることになるとは思っていなかったのもありますが、36mgという規格が後から追加されたからというのもあります。そして後から来たとはいえ、私は彼らを3つ子としています。

 ちゃんとした説明をしていきます。

 コンサータ(成分:メチルフェニデート)
製薬会社:ヤンセンファーマ
適応:ADHDのみ
作用:ドーパミン及びノルアドレナリンの再取り込み阻害
種類:カプセル(18mg、27mg、36mg)

 ADHDは、発達障害のうちの1つであり、主に「衝動・多動性」と「不注意」の2つに症状が分けられます。ADHD薬は2023年現在で4種類が承認されていますが、この2つの症状に対する効果で少し差があります。
コンサータは、どちらにも効くとされていますが、比較的不注意に対する効果が強いです。
 衝動・多動性にも効果があると感じる人はいます。しかし、行動力や集中力をオラオラと出すような薬のため人によっては衝動性が強まると感じる場合もあります。
 また、リタリンという同じメチルフェニデートの錠剤の兄がいますが、会社が違うため異母兄弟のような関係です。作用は同じですが、効果の時間や濃度が違います。リタリンが3時間ほどなのに対し、コンサータは10~12時間ほど続きます。
 コンサータは、短時間で強い効果が出るメチルフェニデート(リタリン)をADHDの人向けに改良した薬で、カプセルはOROSシステムというちょっと特殊なつくりになっています。簡単にいうと、ゆっっっっくり薬を出していくシステムなんですが、文字での説明は難しいので気になる人はググッてね。
 私の擬人化コンサータがボンデージを着ているのも、このOROSをイメージしたものです。OROSは、特殊な構造によって薬の溶け出す速さをゆっくりにし、長い時間続くようにするシステムです。例えるなら、リタリンはペットボトル、コンサータは点滴みたいなものですかね。錠剤のリタリンは、欲しい時に一気にガガガーッと飲むことができますが、その分速くなくなります。一方、OROSのコンサータは、点滴のようにゆっくりと摂取されます。同じ量だとしても、リタリンとコンサータでは持続時間・濃度が明らかに違うわけです。少しずつ溶け出るとはいえメチルフェニデートは強力な薬ですから、それでも十分に効果が出ます。
 擬ではこれをボンデージとして、メチルフェニデートの本来の力を抑えるだけでなく、特殊な技術によって姿勢矯正や運動のサポートを行うことでコンサータがより長く動き続けられるようにされています。また、このボンデージには脱ぐことは想定されていない作りになっており、完全にコンサータの体と連動しています。ボンデージを断ち切ろうものなら、コンサータも機能不全状態になり使えなくなります。まあ、そもそも断ち切れるほどやわなものでもなさそうですが……(実際のコンサータのカプセルはめちゃくちゃ固く、トンカチでも砕けるか怪しいレベルとの噂)。

 作用についても少し。「シナプス間のドーパミンとノルアドレナリンの各トランスポーターによる再取り込みを阻害する」って感じなのですが、分かりにくいので簡単にします。
 郵便局とポストを想像してください。シナプス間とは郵便局からポストまでの間のことです。この郵便局はメルヘンなので伝書鳩を飛ばせて手紙を届けます。この伝書鳩がドーパミンやノルアドレナリンです。しかし、何かしらの影響でその伝書鳩は郵便局に戻ろうとしてしまいます。その時に伝書鳩が戻ってくる場所というのがトランスポーターです。伝書鳩が手紙を届けないことには何も進まないので、これをどうにかするのがコンサータです。
 例え話のせいでコンサータが伝書鳩を追いかけるようなメルヘン絵面になりますが、トランスポーターを塞ぎ、伝書鳩がポストまで行くように仕向ける、みたいなとこです。伝わってくれ。
 ドーパミンを増やすときくと、なんだか頭の中が騒がしくなりそうな気もしますが、実際の服用している方たち曰く「頭の中が静かになる」とのことです。ADHDは、ドーパミン不足から無意識に脳内でマジカルバナナを始めたり音楽が2、3曲同時に鳴っていたり、脳内多動と呼ばれる症状が日常的にあります。そら不注意も起こすわな。その脳内多動を抑えて、初めて自分の頭の中が静かになる感覚を知るのです。まぁ、なんというか、バグが落ち着いただけといってしまえばそうなってしまうのですが……。
 副作用についてですが、主に頭痛、不眠、吐き気、動悸、不安、血圧上昇などです。あと眼圧も上がるので緑内障の方には禁忌です。
 また、薬の効果が切れた後は、リタリンほどではありませんが、「あ、切れてきたな」と分かるほど明確に体感します。メチルフェニデートは、元気を前借りしてバリバリ動くみたいな感じなので、薬の効果が切れた夕方頃にそのツケが回ってきます。ゆっくり作用する分、切れるのもゆっくりになるはずなのですが、それでも家に帰ってからは動けなくなるレベルで疲労困憊状態になります。
 このようなこともあり、耐性も付きやすいことからコンサータを飲む方には休薬日を設けることが勧められています。例えば、学校や仕事のある平日は飲んで、土日はコンサータを抜く、といったように、必要な日だけ飲む感じですね。頓服の感覚で飲めるので結構使い勝手は良さそうです。
 ちなみに、コンサータは本来朝に1回飲むのが基本ですが、時間差で飲む場合もあります。例えば、18mgを朝飲み、昼ぐらいにもう一度18mgを飲むと、最初に飲んだ分が切れても後から飲んだ分で補われるため、作用時間を伸ばしたい人が行う服用方法です。ただし、午後から夕方までの間は18+18=36mg服用していることになるので、その間は作用が強まるというデメリットもあります。
 これを応用(?)して、36mgの離脱が苦しい人が昼頃に18mgを飲むことで、作用は長引きますが、離脱を少し緩やかにすることができます。まあ、合わない場合は主治医に相談するのが1番ですけど。
 要は、離脱がキツいよって話です。平日にコンサータを飲んだ人が休日はベッドから動けなくなるケースもちょくちょく聞きますし、本当にここぞという日だけ飲む人もいます。いくらバリバリ動けても、その後ダウンしちゃうんじゃやってらんないですからね。
 擬のコンサータでも、普段は明るくテキパキ働く真面目な子ですが、仕事終わりは死んだような顔をして床に這いつくばっています。弱音もバリバリに吐きます。被害妄想もひどくなります。なのに眠れないのでそれをずっと繰り返しています。メンヘラか?

 もう少し暗い話をします。このメチルフェニデートは、覚せい剤と呼ばれるアンフェタミン、メタンフェタミンと似た作用のため、乱用が懸念されています。実際は、OROSシステムによりかなり可能性は低いのですが、リタリンの乱用が印象強いようで未だに規制は厳しいです。
 リタリンについても少し触れますかね。
 コンサータが承認される前は、リタリンが適応外としてADHDに処方されていました、
 リタリンは良くも悪くも人気な薬でしたが、乱用事件のこともあり、コンサータが承認された瞬間、入れ替わるようにリタリンは厳しい規制によって流通管理され、適応はナルコレプシーのみに制限、ADHDに適応されることは二度となくなりました。
 そして、その同成分であるコンサータもまた、承認時から乱用を避けるためリタリンと似たような管理下におかれます。コンサータの処方は、適応であるADHDに限定、登録された医師と薬局・薬剤師からのみの処方・販売とし、その処方数も報告され、流通管理及び監視をされることになりました(2007年)

 この規制は、それほどコンサータが危険な薬だからというわけではなく、むしろ悪用する輩からコンサータやリタリンを守るための措置です。コンサータのADHDも、リタリンのナルコレプシーも、適応薬が少ないため貴重なのです。

 まだリタリンがADHDに適応外処方されていた頃、ADHDに適応のある薬は無く、唯一効果があるとされていたのがリタリンでした。しかし、そのリタリンは乱用により制限、適応外では処方できないことになってしまい、コンサータ1種類のみになりました。さらに、リタリンの経緯を踏まえ、コンサータの処方は6歳~18歳までの小児のみに限定されました。
 よって、乱用を避けまくった結果、成人ADHDは完全に見捨てる状態になったのです。

 こんな感じなので、コンサータは、自分が助けられるであろう人を見捨てるのは心苦しいものの、それでも乱用されたくない気持ちから人間(主に成人)は避けたいという、なんとも言えない気持ちを抱えることになります。
 そんな状態が続き、承認から6年が経った頃、ようやく成人処方されるようになりました。
 が、やはり流通管理をしてもなお、横流しなどが起こったため、さらに規制は強化されます。2021年、コンサータは患者に対しても登録カードなるものを使い、より徹底した管理をすることになりました。しかし、ADHDの特徴は、そう、圧倒的な失くし物率。これにより、ADHD達はコンサータを処方されるためのコンサータが必要になっています。誰も幸せにならねえ。
 こういうことが起こるので、やっぱ薬物乱用はよくないねというわけです。まあ詳しい経緯も後々漫画に描きたいです。

 とりあえずこのぐらいにしておきましょう、漫画でも描きたいのでネタバレになってしまう。
 勢いで書いたのでグチャグチャだったかもしれません。まあ、たまに読み返して編集し直すので許してください。それでは、お大事に〜!

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