電子サインを導入できない理由たちは、真に理由たり得ているのか

Twitterで、電子サインを導入できない理由が話題になっていましたが、どうも僕の考えていることと合わないというか、実は理由になっていないんじゃないかと考えまして、ちょっとまとめてみることにしました(なんだかんだ長い…。)。
なお、僕の勤務先は1年以上前に仕組みを作っていて、今は可能な限り電子サインを使うようにしています。

理由たち

1. 規程が整っていない

これはTwitterでは出ていないのですが、よく聞くので。

ま、整えてくださいってだけですね。
というか、他のツールについて規程がない場合は、電子サインだけ規程が要るのか?ということも考えるとよいかなと思います。
規程に書くとしても、「署名」に電子サインを含めるくらいで意外といけるんじゃないかと(そもそも署名について規程がなければ、電子サインも同じでは?)。

規程の扱いは各社で異なると思うので、このくらいで。

2. 一担当者がサインできてしまう

勤務先では導入時にあまり心配されなかったのですが、担当者レベルでも簡単にポチッとできてしまうことを懸念される方が多いようです。ハンコであれば、会社で認めている契約印については基本的に悪いことが「できない」仕組みになっていますが、電子サインはそうではない、ということですね。
以下、僕の考え方をご紹介します。

(1) 電子サインだけの問題か

まず、電子サインでなくても、認印や自筆サインなら一担当者ができちゃいますね。これらは既に起こり得ていて、実際にそういう書面を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
つまり、電子サインに限って心配することかな?と思います。

まぁ、気軽さが違う(ハンコや自筆サインなら一旦考えるが、電子サインはそのハードルが低い)、あるいは電子サインの依頼メールやその先のシステムのUIなどがわかりにくく、内容を確認しただけのつもりがうっかり「承認」したことになっていた、ということは考えられます。
その点で、電子サインだから心配、というのはわからなくもないです。

(2) 「導入」しなければ問題はないのか

ただ、自社で電子サインを「導入」しなくても、相手方主導で送ってこられることはあるわけで、相手方主導のケースでは、担当者がポチッとするのはどうやったって防げません(この点は、紙だと自社側からも行えるので、むしろ行われやすい気も…。)。
また、Web上で「申し込む」とか「同意する」ボタンを押すだけで成立する契約もあります

つまり、一担当者がポチッとできてしまうという点は、Web上のボタンも含めて電子サインを導入しなくても防げません
kataxさんもおっしゃっています。

(3) 小括

上記のとおり、導入しなくても同じ問題があるのなら、逆にそれは導入しない理由になっていないんじゃないかと。
なので、むしろ「電子サインはNG」とするよりも、基本的にはOKとした上で、ルールを周知徹底させるべき、というかそれしかないのではないかと考えています。

3. 押印申請と整合しない

伝統的な(伝統的でなくてもおそらく多くの)日本の企業では、押印の際に(紙又やワークフローシステムで)押印申請書を回付して、その決裁が下りたら押印の担当者(印章を管理している人)が現実に押印するという仕組みになっているかと思います。この仕組みは、「紙の契約書に押印する」というケースしか想定しておらず、電子サインを使うのに「さて、どうしよう?」ということになるようです。
以下、僕の考え方をご紹介します。

(1) 問題点(?)

この点に関し、「押印申請の仕組みでは社内で回付して押印作業に流れるのに、相手方主導の電子サインでは、メールで署名依頼が送られてくるから扱いが難しい」という趣旨のお話を目にしました。

これ、言い方アレですが…ずれてないですかね。メールで署名依頼が送られてくる点は、紙の押印でいえば「郵送で契約書原本が送られてくる」点に対応しているわけで、これまでも普通にあったことです。担当者宛てに直接(?)送られることも普通でしょう。

なので、そこは問題ではない気がします。
…が、後述のように僕の勤務先では特に困らず使えていて、実は何が問題なのかが理解できていません。何か気付いたらまた別途書くとして、とりあえず今回は勤務先の例をご紹介するだけにします。

(2) 勤務先の例

勤務先はベンチャーですが、元々の押印手続は伝統的な企業っぽい、上記の「押印申請書を回付して、その決裁が下りたら押印の担当者(印章を管理している人)が現実に押印するという仕組み」です。それでも、以下のような手続にすることで、特に困っていません。

① 自社主導の電子サインでは、紙の場合と同じように押印申請を回付し(勿論システム化されています。)、決裁が下りたら、僕(or一部の「勝手に処理するインセンティブがない人」)が双方の署名者に対し、署名依頼の手続をします。
② 相手方主導の場合も、押印申請の決裁までは同じで、相手方からの署名依頼メールが僕にも送られるようにしてもらい(例えば、DocuSignならccに入れてもらい、クラウドサインなら承認経路に僕を入れてもらいます。)、僕が中身を確認したら署名者がポチッとすることになっています。

あ…(1)の例では、押印申請が紙なんですかね?
だとしても、署名依頼メールからダウンロードしたものや、その元の最終版のWordファイルなどを印刷して回付するとかできそうですけどね…ここはちょっと僕が想像できていないところもあると思います。難しいケースがありましたら、教えていただけると勉強になります。

なお、以下の事情は各社異なるように思われますが、工夫すれば、あるいはこれを機に整理して、仕組みを作ることはできるように思えます。
・全て代表印だったのか、部長クラスなども押印していたのか
・押印申請の決裁者と押印の名義が一致しているのか、異なるケースがあるのか

(3) 小括

ということで、伝統的な企業ではこういう仕組みだから導入できない、しにくいというのも、工夫次第でクリアでき、導入しない理由になっていなさそうな気がします。

結論

ということで、今回挙げた点についてはいずれも導入しないという理由たり得ず(たぶん)、むしろ上述のとおり、導入しないという選択肢はないんじゃないかと思います。

おまけ

なお、これに関連して、「中央集権」かどうか、という話を目にしました。
おそらく「実質的には部長以下レベルで決めているのに、押印は代表印のみ」というケースが念頭にあって、この「実質」を重視すると分権型、押印自体は代表印のみという「形式」を重視すると集権型ととらえることになるのかなと理解しました。
なので、「中央集権」という言葉を使うかどうかは気にしないで、上記3(2)で触れた以下の点について、具体的に検討するのがよいのかなと思いました。

・全て代表印だったのか、部長クラスなども押印していたのか
・押印申請の決裁者と押印の名義が一致しているのか、異なるケースがあるのか

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