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配当可能利益は簡素化が必要

ニデック株式会社で配当可能利益を超える配当をしたことが判明し、それに対する調査を行なったようです。

会社法上の配当可能利益算定ロジック

資本のうち、剰余金を株主に配当することができるわけですが、まずは法律上の剰余金の条文が読みにくい上に省令も見ないと分からないという不親切さ。

決算日における剰余金の額の算定については、会社法446条第1号において次のとおりとされています。

決算日における剰余金の額=(イ)資産の額+(ロ)自己株式の帳簿価額の合計額-(ハ)負債の額-(二)資本金・準備金-(ホ)法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

会社法(平成26年改正) 第7回:分配可能額の算定 | 解説シリーズ | 企業会計ナビ | EY Japan

でも、配当する時って、配当基準日が決算日ではないこともありますよね?その場合、期中の調整も必要です。

算定式は以下のとおりとなります。
分配時点における剰余金の額=①決算日における剰余金の額+②最終事業年度末日後の自己株式処分損益+③最終事業年度末日後の減資差益+④最終事業年度末日後の準備金減少差益-⑤最終事業年度末日後の自己株式消却額-⑥最終事業年度末日後の剰余金の配当額-⑦法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

上と同じ

最後に分配可能額を計算します。算定式は以下のとおりとなります(会461条第2項)。

分配可能額=①分配時点における剰余金の額-②分配時点の自己株式の帳簿価額-③事業年度末日後に自己株式を処分した場合の処分対価-④その他法務省令で定める額

分配時点での自己株式の保有状況等を反映させるため、分配時点の剰余金の額から分配時点における自己株式の帳簿価額と、最終事業年度末日後に自己株式を処分した場合の処分価額その他法務省令で定める額を減じて分配可能額を算定します。

上と同じ

これ見て、普通の経理パーソンはうげと思いますよね。我々専門家も同じです。特に②の分配時点と③は決算日以後の取引をそれぞれ控除するあたりとか面倒な上に意味がよく分からない。そう、配当可能利益は法律的な厳密さに由来する条文の読みにくさと控除する項目が複数にわたり意図不明なことになっています。配当可能利益を厳密に算定するというのは相当なスキルが必要ですが、ほぼ役に立たないスキルでもあります。

この件から言えること

配当可能利益の条文をもっとシンプルにしたほうがいい。あと決算日以外の基準日の時を配当しやすい形にしたほうがいい。自己株式の差額控除とか不要で資本剰余金と利益剰余金に自己株式の残高を控除するものだけで十分。

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