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【詩】思い出のオレンジはカンロ飴

あの夕焼け雲を追って

あの夕焼け雲に思い出も

膨らんで 散りばめて

豊かな思い出を食べた大きな心で

明日という空に溶け込めるのなら

思い出のオレンジはカンロ飴

車の後部座席に乗って

大きく口を開けて
夕日と思い出を
口をいっぱいに
ふくむ

涙が混じって 苦くて甘いや
 嫌になる

思い出のオレンジはカンロ飴

車で走り抜ける速度と
空と雲の景色の流れる速度は
何故こんなに違うのだろうと
切なくなるのです

あのゆっくりとした
雲の流れに溶け込んで
みたくなるのです

そしてそのままあなたに
会いにいけたらと呑気に
後部座席から眺めるのが
なんとなく小さな頃から
好きなのです

そのあなたが誰なのかは
わからないまま

後部座席から見るお月様が
どの道に入ってもわたしを
追いかけてくれたあの夜
それが嬉しくて 
お月様から隠れようと
シートの下に潜り込んでは
またすぐ窓から夜空を見ると
お月様はやっぱりいてくれて…

それがとても嬉しくて
あの月の裏で誰かと
待ち合わせの
約束をしているかの様な気分に
呑気に後部座席に座って
思うのが小さな頃から
好きなのです

その誰かが誰なのかは
わからないまま

会いたい人に

何か届けたかったものを
手に持っている
ただそれだけで
いいのかもしれない
たとえ届かなくても

カンロ飴を舐めながら
あなたの生まれたあの里へ
いつか北へ向かう列車に乗ります
届けたい花を持って

振り返ると夕日が

雪深い地をきっと

やさしいオレンジ色に

照らしている

雪解けを待っている

深い土に

横たえた枯れ草や

みずみずしい新芽にまで

届くように

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