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冬眠後のクマはP-タウの凝集塊を除去する


冬眠後のクマはP-タウの凝集塊を除去する

https://www.alzforum.org/news/conference-coverage/after-hibernation-bears-clear-p-tau-aggregates

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シリーズ・アルツハイマー病の臨床試験(CTAD)2022。
第13回/14回:冬眠の後、クマはP-タウ凝集体を除去する


2022年12月29日
どの神経変性疾患でどのp-tauアイソフォームがいつ変化するかについて、複数のグループの科学者たちが研究を進めているうちに、そもそもなぜこのタンパク質がリン酸化されるのかについては忘れがちになってしまう。スウェーデンのヨーテボリ大学のカイ・ブレノーは、神経細胞の不活性化に対する神経保護反応ではないかと考えている。突拍子もない考え?11月29日から12月2日までサンフランシスコで開催されたClinical Trials on Alzheimer's Disease学会で、ブレナウはそれを裏付ける動物界からの興味深い話を披露した。

北極圏のジリスやクマなどの冬眠動物が越冬するとき、その神経細胞は大部分が休眠状態にあり、海馬や皮質の神経細胞内にp-tauがもつれたような構造で蓄積されるのだという。この発見は、ドイツ・ライプチヒ大学のThomas Arendt氏によって初めて発見された(2015年1月ニュース)。この動物のタウは、ヒトと同じアミノ酸でリン酸化されている(Stieler et al.) 春の目覚めが来ると、彼らのp-タウの脳内凝集体は、数時間から1日で、まるで大雪のように溶けてなくなる。

同様に、ニューヨークのコロンビア大学医療センターのKaren Duffとカナダのケベック州にあるラヴァル大学のEmmanuel Planelは、低体温の野生型マウスで可逆的なタウの過リン酸化を確認した(2007年4月のニュース)。Planelはまた、睡眠中の体温低下と、睡眠中のマウスのp-tauの急増とを関連づけた(Guisle et al.、2020年)。

この現象に興味を持ったブレノーは、野生のヒグマを研究しているスウェーデンのオレブロ大学病院のOle Fröbertと提携した。彼らは夏にヒグマを捕まえてGPS追跡ネックレスをつけ、冬には眠っているヒグマの居場所を突き止め、果敢にもヒグマから血液サンプルを採取している。「眠っているクマから採血するのは大変なことです」とブレナウは言う。

"針で刺してください "とね。

ブレノウの研究室では、冬眠前と冬眠中の10頭のクマから血液サンプルを採取した。UGotのWagner BrumとLaia Montoliu-Gayaは、質量分析と免疫測定法を用いて、クマのわずかに異なるタウ配列に適合させた上で、クマのp-タウを分析した。

驚いたことに、血漿中のp-tau181とp-tau217は、クマが眠ると2〜3倍に増加し、夏には通常のレベルにまで低下することがわかった。免疫測定と質量分析でも同じ傾向が見られた。「しかし、冬眠中のタウを研究している研究者たちは、リン酸化は神経細胞の活動低下に対する神経保護反応かもしれないと考えています」とBlennow氏は述べた。

Blennow氏は、加齢に伴う神経変性で起こるように、ニューロンが再び活性化することがなければ、p-タウ凝集体は真のタングルとなり、かつて活動していたニューロンの墓標となる可能性があると提案する。

越冬する動物の生理は、極限的な自然環境に対する哺乳類の基本的な生物学の適応を反映している。とはいえ、ヒトの他の疾患でも、神経細胞が損傷して沈黙した結果、タウのリン酸化と凝集が起こる例がある、とBlennow助教授は言う。慢性外傷性脳症(CTE)、脳卒中、その他の二次性タウオパチーなどが思い浮かぶ。

もし、この仮説が本当なら、深い意味を持つかもしれない。おそらくこの上なく。もし、Aβ凝集による神経細胞死や、ミクログリア活性化などの他の上流因子が病気を引き起こすとしたら、ADのタウ標的薬は有効だろうか?


参考文献
ニュース引用
コールドショックタンパク質がシナプスを再活性化させる 2015年1月16日
麻酔とアルツハイマー病。眠っているマウスでホスホタウが急増 2007年4月6日
論文引用
Stieler JT, Bullmann T, Kohl F, Tøien Ø, Brückner MK, Härtig W, Barnes BM, Arendt T. The physiological link between metabolic rate depression and tau phosphorylation in mammalian hibernation.(ほ乳類の冬眠における代謝率低下とタウのリン酸化の生理学的関連性). PLoS One. 2011;6(1):e14530. PubMed.
タウのリン酸化の概日および睡眠/覚醒に依存する変動は温度によって駆動される。Sleep. 2020 Apr 15;43(4) PubMed.
その他の記事
ニュース
タウのタングルに毒性はないのか?2005年7月15日
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