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ANSNAMのシャツ(XXLサイズ)とデカいシャツの可能性について

ファッション初心者指南にて必ず言及される「オーバーサイズの服はちゃんと計算して作られているので、単純にサイズのデカい服を着てはいけません」という言説。全くもってその通り。

ANSNAM SALESMAN SHIRT

ハンギングしてすぐ分かる違和感

ansnamとatelier石崎氏がタッグを組んで作ったシャツ。生地はDavid&John Anderson、それをCamiceria Lombardiが仕立てた誰もが羨む超高級シャツ。

問題は、このシャツが、とびきり上質なシャツであると同時にとびきりサイズがデカいシャツであるということだ。
着丈、身幅と肩幅は大きいながらもまだ十分対処できるレベルなのだが、とにかく首周りがデカい。さらに襟とカフスも超デカい。

カフスは長さ9cm近くある。
首周りが大きいので襟もデカい。

一般的なオーバーサイズシャツは、最後の砦としてネック周辺はコンパクトにまとめることで「オーバーサイズシャツ」としてバランスを保つわけだが、このシャツは本当にデカくてメタボな外国人が着ているであろうシャツそのまんま。つまりこれは、「オーバーサイズシャツ」ではなく、紛れもない「XXLサイズのシャツ」なのである。これだけ巨大だと生地はともかく、仕立ての良さは正直全く分からない。

このコンセプト画像を見ると分かるように、間違いなく作り手はそれを想定している。

しかも襟とカフスはビジネスシャツも真っ青になるほどガッチガチに固められている。デカい服を持て余した人間がやりがちな「乾燥機にかけてヤレた雰囲気を出すこと」を先手を打って潰してきている。これは「簡単に手懐けようとすんな」という作り手からのメッセージか。乾燥機は逃げ。

端正なストライプ

生地は素晴らしい。iamdorkで採用されているボンファンティのような滑らかさではなく、しなやかでありながらどこかドライな質感である。
うまく説明できないが、目の細かい砂場の様な生地だと感じた。これはパジャマにしたい類の生地。カチカチの襟とカフスさえなければな。

ともあれ問題はコレをどう着るか、だ。
デカいシャツもだいぶ着慣れたしもう何も怖くないぞ、と思って手を出したが迂闊だった。これまで購入してきたオーバーサイズシャツとはこれまた勝手が違って、ネックがガバガバなだけでこれほどダラシない雰囲気が強まるのかと感心してしまうほどダラシなく、グレッグローレンとはまた違ったタイプのメリケン的社会不適合者感オーラが迸っている。昔ならこの雰囲気をストレートに出すために第二ボタンまで開けてネックの広いTシャツを合わせてズルズルダラダラと着ていたのだろうが、悲しいかな色々なものを背負う年齢になってしまったので社会に許されるコーディネートを考えねばならない。答えはまだ出ていない。

昨年からオーバーサイズシャツを色々購入してみて頓に思うのは、おっさんの夏服としてこれはこれで「有り」なのではないかということだ。
夏のカジュアルシャツには、着用時の通気性や生地の速乾性はもちろんであるが、おっさんにとって何より重要なのは見た目の清涼感、清潔感である。
薄手で質の良いブロード生地をオーバーサイズに仕上げることで、シャツとしての上品さや清潔感と、見た目の軽やかさや風通しの良さによる快適性を両立できる(当然だらしなく見えないスタンリングは必須だがそれはTシャツとて同じことだ。あと生地がしょぼいと多分成立しない)。
オーバーサイズの流行は終焉を迎えつつあるが、真夏に着るカジュアルシャツの選択肢としてアロハやリネンシャツのように一つの定番となるポテンシャルは間違いなくあるというのが私の現時点の結論である。
だから私はデカいシャツを今年も着る。


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