「アルジャーノンに花束を」読書感想

「アルジャーノンに花束を」というと私が、高校生の時にテレビドラマが放送されていたのを思い出します。
高校生の頃の私は、人はどうやったら天才になれるのかをテーマに生きていましたから、ドラマのあらすじを聞いたときはとても興味を惹かれました。
しかし、実際にドラマを観たという記憶はありません。
今回、原作を読んでみても、ドラマのシーンが頭の中で蘇ることはありませんでしたので、当時は興味を持ちつつも観ていなかったのでしょう。
なぜ、天才について才能について考えていた私が、正にそれがテーマである「アルジャーノンに花束を」を観ていなかったのか。
当時私は自身の頭の悪さにひどく劣等感を抱えており、ドラマを観ることでそのことを痛感させられることを恐れていたからだと今では思います。
頭が良くなりたくて天才や才能について考えていた私の心理の裏には、主人公チャーリーと同じような劣等感がありました。
物語が進む内に登場人物たちがチャーリーに劣等感や妬みを持つようになります。
先ほどチャーリーと同じような劣等感と書きましたが、彼らの気持ちもわかります。
頭が良くなりたくて必死に勉強して、良い順位を取ったとしても、今度はその地位を奪われないように気を張らないといけない。
高校生の頃の私もチャーリーに手術を施した教授のようにそんな虚しい戦いを続けていたことを思い出します。
今回、原作を読んで高校生の頃に読んでおけば良かったなと思いました。
チャーリーの人生を追体験しておけば、少しは楽になれた気がします。
そう思わせてくれるくらいに、知能指数の変化がチャーリーの主観から克明に描かれていました。
「どうしてこんな物語を書けるのか」と原作者に聞いた人の気持ちもわかります。
新装版のあとがきは翻訳者が書いているのですが、これもまた面白かったです。

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