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【天才】ウェス・アンダーソン監督作品の全て

■はじめに
ポップなパステルカラーとシンメトリーの構図。卓越した世界観の創出と特有のストーリー展開で観客を魅了する映画を作り続けるウェス・アンダーソン。間違いなく世界で最も突出した才能を持つ映画監督の一人でしょう。彼がどのような経歴を歩んできたのかを調べました。

■1969年5月1日
アメリカ合衆国 テキサス州 ヒューストンに生まれる。

■高校時代
ヒューストンにある私立高校へ進学。
この高校が『天才マックス』の舞台となっている。ジェイソン・シュワルツマン演じる主人公と同様に演劇部で脚本と演出を手掛けていた。

■大学時代
テキサス大学オースティン校で哲学を学ぶ。
ここで俳優オーウェン・ウィルソンと出会い、映画の共同制作を開始。短編映画『Bottle Rocket』を制作し、サンダンス映画祭で注目される。『恋愛小説家』や『ブロードキャスト・ニュース』などを手掛けたジェームズ・L・ブルックス監督の目にとまり、劇場用にリメイクした『アンソニーのハッピーモーテル』で長編映画デビュー。


■『アンソニーのハッピーモーテル』(1996年)

《あらすじ》
療養施設から退院したばかりのアンソニー。少し変わった相棒ディグナンの強盗計画に参加することになる。妹に呆れられたり、モーテルの清掃員に恋したり、仲間に裏切られたり。風変わりな男たちが醸し出すへっぽこな雰囲気がたまらないクライムコメディ。
《ポイント》
◎ウェスアンダーソンの出発点
◎『タクシードライバー』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』などを手掛けたマーティン・スコセッシから激賞
◎主人公アンソニーはオーウェンの兄、ルーク・ウィルソン。オーウェンも相棒役で出演。2人の実質的な俳優デビュー


■『天才マックス』1998年

《あらすじ》
私立ラシュモア高校に通う天才マックス。20個ほどの課外活動を並行して行うほど行動的な15歳。しかし、落第を繰り返している。新たに赴任してきた美しい教師クロスに夢中になり猛烈アタックを始める。親友のブルームに手助けしてもらうことになるが、ブルームもクロスを好きになってしまう。
《ポイント》
◎マックス役ジェイソン・シュワルツマン、恋敵となる鉄鋼会社社長役のビル・マーレイとウェス作品の常連キャストが初参加
◎ローリング・ストーンズ、ザ・フーなど1960〜70年台のロックを使用


■『ザ・ロイヤル・テンネンバウムズ』2001年

《あらすじ》
ビジネスマンとして大稼ぎした長男、劇作家となった長女、テニス界の寵児となった次男。それぞれ成功したテネンバウム家の子供たちだが、父と母が別居し始めた時から家族のつながりが希薄になっていく。父はそんな現状を変えようと自分が癌だと偽り子供達を集め家族の修復を図る。ニューヨークを舞台に繰り広げられるコメディ。
《ポイント》
◎ウェスの出世作
◎オーウェン・ウィルソンと共にアカデミー賞脚本賞にノミネート。
◎日本ではこの作品が初の劇場公開
◎衣装や小道具への過剰なこだわりの原点
◎ 母テキサス・アンはアンジェリカ・ヒューストン演じるエセル・テンネンバウムのモデルになっている。


■『ライフ・アクアティック』2004年

《あらすじ》
海洋学者にしてドキュメンタリー監督であるスティーブは数年間ヒット作を生み出せずにいた。資金の問題、パートナーが幻の怪魚ジャガーザメに食われてしまうなど、人生の危機に瀕していた。仲間のリベンジを果たすため、そして、名声を取り戻すため航海へ出る。
《ポイント》
◎ウェスの方向性を決めた作品と言っても過言ではない
◎ノア・バームバックが共同脚本
◎ストップモーションアニメによる海洋生物は『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のヘンリー・セリックが担当


■『ダージリン急行』2007年

《あらすじ》
父の死がきっかけで疎遠になっていたホイットマン3兄弟。長男フランシスが次男ピーターと三男ジャックへ声を掛け父の遺産を使いインド横断の列車旅へ出る。
《ポイント》
◎三男を演じたジェイソン・シュワルツマンは脚本にも参加
◎インドでの大掛かりな撮影
◎インドの伝説的スター、イルファン・カーンも出演
◎3兄弟が持ち運ぶ大量のバッグやスーツケースはマーク・ジェイコブスが本作のためにデザインしたルイ・ヴィトン製。


■『ファンタスティック Mr.FOX』2011年

《あらすじ》
ニワトリ泥棒を引退し、新聞記者として家族と平和に暮らしていたMr.FOX。弁護士バジャーの反対を押し切り大木の家へ引っ越した彼は近くの農場を見ているうちに野生の本能が目覚め、再び泥棒家業に手を染める。
《ポイント》
◎ウェスにとっての初のアニメーション作品
◎パペットを使用したストップモーション
◎アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート
◎原作は『チャーリーとチョコレート工場』(2005年)のロアルド・ダールによる児童文学
◎ジョージ・クルーニー、メリール・ストリープなどがボイスキャストとして参加


■『ムーンライズ・キングダム』2012年

《あらすじ》
協会で「ノアの箱舟」の芝居が上演された時に出会ったサムとスージー。1年間にわたる文通の末2人は秘密の場所“ムーンライズ・キングダム”を目指し、駆け落ちを敢行する。
《ポイント》
◎第65回カンヌ国際映画祭コンペティションに選出。オープニング作品として上映。
◎インディペンデント・スピリット賞では監督賞や脚本賞にノミネート。
◎ウェスの特徴である完璧すぎる“左右対称”が本作から過剰に登場


■『グランド・ブダペスト・ホテル』2014年

《あらすじ》
東ヨーロッパの架空の国、ズブロフカ共和国の高級ホテルグランド・ブダペスト・ホテル。そこの常連客だったマダムが殺害され、完璧なおもてなしが評判のコンシェルジュ、グスタヴとベルボーイ見習い、ゼロの2人がが殺人事件の解明のため奔走する。
《ポイント》
◎第64回ベルリン国際映画祭のオープニング作品として上映。銀熊賞(審査員グランプリ)受賞
◎第68回英国アカデミー賞、第80回ニューヨーク映画批評家協会賞、第40回ロサンゼルス映画批評家協会賞、第50回全米映画批評家協会賞、第18回トロント映画批評家協会賞にて脚本賞受賞。
◎第72回ゴールデングローブ賞にて作品賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞。
◎第87回アカデミー賞では作品賞を含む9部門にノミネートされ、作曲賞、美術賞など4部門を受賞。
◎舞台となる1932年の時代感を反映したホテルのセット、フェンディとコラボした衣装、パステル調のスイーツの箱など、映画史に残るプロダクションデザイン


■ 『犬ヶ島』2018年

《あらすじ》
近未来の日本、メガ崎市が舞台。そこではドッグ病が蔓延し人間への感染を恐れた市長は全ての犬を犬ヶ島へ追放。市長の養子である少年アタリは愛犬を救い出すため犬ヶ島を他の犬たちと協力して捜索する。
《ポイント》
◎第68回ベルリン国際映画祭のオープニング作品として上映。銀熊賞(監督賞)受賞。
◎第91回アカデミー賞で長編アニメ映画賞にノミネート。
◎二作目のストップモーションアニメ
◎伝統芸能から学校の制服まで日本特有のカルチャーが物語に織り交ぜられている
◎セリフは英語と日本語の両方が使われている
◎夏木マリ、オノヨーコ、渡辺謙、村上虹郎、池田エライザ、松田翔太、松田龍平らがボイスキャストとして参加
◎宮崎駿、高畑勲、庵野秀明、北野武、葛飾北斎、黒澤明などリスペクト
◎生粋の親日家であるウェス。黒澤明や宮崎駿の大ファン。日本への愛を込めた作品。


■『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』2021年

《あらすじ》
フランスの都市で発行されるアメリカの雑誌「フレンチ・ディスパッチ」は名物編集長が集めた記者たちによる記事で世界的に人気を博していた。しかし、編集長が急死してしまい雑誌の廃刊が決定。最終号に魅力的な記事を掲載するため奮闘する。
《ポイント》
◎ルノワール、トリュフォー、ジャック・タチら名監督へのオマージュ
◎モノクロ映像やアニメを駆使
◎美術や左右対称のこだわり
◎ウェスワールド全開


■『アステロイド・シティ』2023年

《あらすじ》
舞台は1950年代のアメリカ。人々が豊かな日々を謳歌しアメリカが最も輝いていたと言われる時代。宇宙開拓への夢も広がり誰もが不可能なことなどないと信じていた。そんな中、人口わずか87人の砂漠の街アステロイドシティで開かれたジュニア宇宙科学賞の祭典に思わぬ訪問者がやってくる。
《ポイント》
◎カンヌ国際映画祭のプレミア上映され6分間のスタンディングオベーションで讃えられた
◎アメリカでの先行公開では3日間で1劇場あたり13.2万ドル(約1872万円)と『ラ・ラ・ランド』以来の最高記録を樹立
◎ジェイソン・シュワルツマン、トム・ハンクス、スカーレット・ヨハンソン、マーゴット・ホビーなとわハリウッドスターが集結


■おわりに
細部までこだわる美術に注目するのも良く、ポップな世界観に浸るのも良く、音楽に酔いしれるのも良く、少し変わってるけど愛着の湧いてしまう登場人物を応援するのも良い。ウェスワールドを堪能しましょう!

ノサラ

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