会社法事例演習教材決2−2議取消訴訟における訴えの利益

【keypoints】

 取締役会決議の取消しの訴えの係属中にその決議に基づき選任された取締役が全て任期満了により退任し、その後の株主総会決議において再任された場合に、取消しの訴えはどのように扱われるか。当初の取締役決議が不存在であった場合はどうか。

1.決議取消しの場合(最判昭和45.4.2、百選38事件)

(1) 規範

 決議取消訴訟等形成訴訟は、法律の規定する要件を充たす限り、訴えの利益が存在するのが原則である。そして、決議取消訴訟は、遡及効を有することから、選任された取締役の任期が係属中においては、その選任された取締役の地位を失わせるために、決議取消訴訟を提起する実益はあるといえる。

 もっとも、「役員選任の総会決議取消訴訟の訴えが係属中、その決議に基づいて選任された取締役ら役員がすべて任期満了により退任し、その後の株主総会の決議によって取締役ら役員が新たに選任され、その結果、取消を求める選任決議に基づく取締役ら役員が現存しなくなったときは、(その後の事情の変化により、訴えの利益を欠くにいたる)場合に該当するものとして、特別の事情のない限り、決議取消の訴えは実益なきに帰し、訴えの利益を欠くに至るものと解するを相当とする」

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