会社法事例演習教材1−2 従業員持株制度における売渡強制条項の効力

【Keypoints】

 閉鎖的な会社の従業員持株制度において、従業員が退職時に取得価額と同一の金額で株式を会社に譲渡する旨の合意がなされた場合、その合意は有効か。

1.自己株式の取得

 自己株式の取得とは、株式会社が自ら発行した株式を株主から取得することをいう。

 自己株式取得には、剰余金の配当と同様に、株主に対して金銭等を交付するという意味がある反面、さまざまな弊害がある。①会社債権者の出資への返還と同様の結果を生じる。②株主間に不平等を生じる。③会社支配の公正を害する等である。

 自己株式の取得は、155条と会社施行規則27条はいくつかの方法を規定するが、メインは株主との合意によって自己株式を有償で取得する場合(155条3号)である。

2.株主との合意による有償取得

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