刑訴法ー伝聞証拠(約5000字まとめ)

【伝聞証拠の意義】

Q伝聞法則とは

伝聞法則:公判期日外の供述を内容とする書面や第三者の公判廷での証言は、原則として証拠能力を持たない

Q伝聞法則を定めた条文は?

 320条1項「320条乃至328条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又は公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない」と規定する。

Q供述とは何か?

 供述とは、人がある事実の存否という情報を伝えようとする言語的な表現である。

Ex 派出所に駆け込んだVが警察官に対して「今、駅前でハンドバッグをひったくられた」と訴えたとすると、これは、自分がひったくりの被害にあったという事実を伝えるための表現であり、典型的な供述である。

Q供述の裁判における必要性は?

 目撃者の証言も、鑑定人が述べる鑑定意見も、被告人の自白も供述である、刑事裁判において、供述を使わずに事実を認定することは、実際上不可能である。供述は全ての事件において、重要な証拠となる。

Q供述の危険性は?

 供述を証拠とすることには特有の危険が伴う。人は、知覚を通して事実を観察し、その事実を記憶し、後に外からの何らかの刺激に応じてそれを語る、すなわち叙述する。しかも、そもそも供述のの基になる観察にはしばしば誤りがあって、見間違い、聞き間違いなどが生じる。そして、人の記憶は多くの場合時と共に希薄となり、あるいは変容する。事後に得た情報が自分が体験した事実とを無意識に混同することもしばしばある。さらに、人が事実をかたるとき、正直に語るとは限らない。故意に嘘をつくこともあり、あるいは本人が善意であっても、表現が適切でないために、聞いた人に誤解を当たることもある。

 それにもかかわらず、「この人がそう言っているのだから、本当なんだろう」と一般的に考えやすい。そこから、誤った事実の認定が生じるおそれがある。

 伝聞法則が供述の利用について、特別なルールを設けるのは、このような供述の危険性の認識に由来する。

Q320条1項「公判供述に代えて」の意味とは?(法セミ2018年4月号75頁以下 )

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