刑訴法ー強制処分性(約1万字のまとめ)

【事案例】最高裁昭和51.3.16(百選1事件)

Xの取調中、Xが急に立ち上がり出入り口の方へ小走りで行きかけたため、K巡査はXが逃げるのではないかと思い、「風船をやってからでいいではないか」といって両手でXの左手首をつかんだ。

【論証】

1.強制処分の意義

 そもそも、強制処分法定主義の趣旨は、憲法31条を受け、捜査によって権利侵害を伴う場合があることから、承諾ないままに許容される捜査を、国民自身が、その代表で構成される国会を通じて意識的かつ明示的に選択すべきであるという点にある 。また、現に法定された強制処分の要件・手続の厳格さに照らし、強制処分は、そのような保護に見合うだけの重要な権利・利益を制約する処分でなければならない。そして、そのような権利利益の制約は、処分の相手方が承諾がある場合には通常観念できないため、処分が相手方の意思に反することは、権利利益の侵害の前提といえる。

 したがって、「強制の処分」とは、相手方の意思に反して 、その重要な権利利益を実質的に制約する処分を意味すると解する。このような処分で初めて法定の厳格な要件・手続によって保護する必要があると言える 。

2.任意処分の意義

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