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自分の意思で退職できるあなたは素晴らしい

今年の4月から新しく入社してきた新入社員が、今月末で退職するそうです。

もうすでに退職届は受理されているようですが、田舎という土地柄や社員の平均年齢の高さゆえ、「長く勤めることが当たり前で素晴らしい」という考えの我が職場。二ヶ月での短期離職ということで、やめることを悪く言ったり接し方に困っている社員が多い印象です。

ただ、「すぐにやめる」というのは何も珍しいことではないと思いますし、そこまで動揺したり言葉を濁したりすることではないとも思うのです。

新卒採用では早期離職率が中学卒で70%、高校卒で50%、大学卒で30%になるのだそうです。中途採用のデータはないですが、まさか新卒よりも極端に低い数値(例えば数%)にはならないと思います。

採用のミスマッチがどうしても発生してしまう以上、短期離職は一定数存在します。だから、その事実を受け止めてさえいれば、短期離職する社員に対して動揺したり必要以上に引き留めたり、ましてや社員を”根性がないやつだ”こき下ろす必要はないと思うのです。

ですが、働いている社員にもそれぞれの立場や価値観がありますので、多少反感や不満が出てくるのはしょうがないでしょう。それに対して、私が何かすることはありませんし、ましてや自分の意見を表明することもないでしょう。


ただ、わずか二ヶ月で自分の進路を決断した社員ーーーー彼女に対して、私は少し思うところがあります。

なぜなら、私は昨年に彼女と同じようにこの職場に入職したその日から、「この仕事を辞めたい」と思いながら、毎日仕事をしているからです。

彼女は隣の部署に所属しておりますので、人目を気にせず二人で話す機会などありませんし、第一感情を素直に吐露するほど仲良くありません。

なので、ご本人にお伝えしない代わりに、彼女の退職に際して思った雑観をここに書き記しておきたいと思います。

私から見た彼女の印象

彼女は明るさと無邪気さ、そして親しみやすさを兼ね備えた人でした。

入社したその日から、同僚と打ち解けている様子が見て取れましたし、その長所を生かしてコミュニケーションをすることで業務を着々と覚えているように見受けられました。

また、はたから見ているだけでしたが、彼女は仕事はできる人のように見えました。電話応対も来客応対もスムーズで、知らないことがあっても他の社員に質問できる人でした。彼女を見ていると「学ばなきゃいけないな」と気を引き締める場面が何度もありました。

ですから、彼女が他の仕事でしっかりと働いている姿、例えば居酒屋などの飲食店や一般客を相手にする営業職についている姿は容易に想像できます。

もちろん、時間をかけて仕事に適応することも大事ですが、この広い世の中たくさんの仕事があるのですから、何も今の仕事にこだわる必要もありません。

彼女が退職する本当の理由は私にはわかりませんが、業務に違和感を覚えたり適性を感じないのであれば、辞めても良いと思うのです。

第一、長い人生ですし、少しばかり遠回りしたって大丈夫なはずです。彼女の決断を否定する理由は私には見つけられなかったです。

自分の退職は肯定できない私

でも、そうやって彼女の退職は簡単に肯定できるのに、自分には同じ言葉をかけてあげることはできませんでした。

「客先に出向くのが苦手」「車の使用に抵抗がある」「頻度の多い飲み会が嫌い」「職場の密な人間関係が苦手」「●●の業務に壊滅的に興味は持てない」……

私も今の仕事とのミスマッチは日々感じています。

好きな業務もありますが、それは今の会社でなくても携われますし、むしろ他社ではその業務に専念できる感じさえあります。実力はまだまだ伴っていませんが、そういう意味では今の仕事にこだわる理由はありません。

でも、退職できない。

それは、今の自分が転職に関する準備ができていないせいだと私はここ半年間思っていました。

いくら自分の決断とはいえ、思いつきで決めてしまうことはリスクがあります。せめて次の就職先を決めてからの方が望ましいはずです。このご時世、正社員の仕事は簡単には見つからないでしょうから、有利になるよう資格も取らなくては……。

そう考えるだけ考えて行動できない私が悪いのだと思っていたのですが、別に私だって仕事に違和感を感じたら辞めてしまってもいいんですよね。

でも、古い価値観を内包していて、ただ単に「辞めたいから辞める自分」を肯定できない。

お膳立てされた退職、世間で望ましいとされている退職を望んでいて、でもそれが実現できていないから文句を言っているんです。リスクは取りたくないけど努力はしたくないという欲を満たすのに必死なんです。

私が怠け者なのは確かにそうでしたが、それ以前に強欲だったのだなぁとぼんやり思いました。心の声よりも欲の方が遥かに強かったんだなぁと。

そして、自分の心の声と欲望を天秤にかけても退職を決断できた彼女のことを、純粋に素晴らしいなと思ったのです。


自分の意思で決断できるのは素晴らしいこと

でも、だからって退職する彼女のことを羨ましいとは思いません。

私だって、いつかは彼女みたいにならないといけないからです。

自分の心の声に耳を傾けず、自分が納得できない場所で働いている今の状態が長く続けられるとは思えません。いずれは私も退職しないといけない。

いざ辞める段階になった時、彼女みたいに思い切ることができるように、「自分の意思で仕事やめれて良かった」と思えるように、これからの時間を使っていきたいです。



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