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自然に還る建築〜アースバッグ工法〜

現在、アースバッグという工法に注目が高まっている。
ホビットが住んでいそうな非常に可愛らしいデザインが目を引くが、それだけではない。
土や粘土を原材料として建築していくため、環境負荷が低く自然に還りやすく、世界中どこでも建てられるなど、様々なメリットを持つ。
今回は、アースバッグ工法の特徴や今後の可能性について特集する。

アースバッグ工法の発案者、イラン人の建築家ナダー・カリリ氏は古代中東建築をヒントに、土や粘土、日干しレンガで作る古代建築 “adobe” と、今日の建築技術を組み合わすという斬新なアイディアで「スーパーアドビ・システム(=アースバッグ)」という建築技術を考案した。

アースバッグ工法の特徴

災害に強い

発祥であるカリフォルニア州では耐震テストにも合格しているほど地震にも強い構造で、日本でも熊本地震でも崩れなかった実績がある。
土を使うという性質上、火事にも強い。
流線型のデザインも可能であることから台風などの強風にも強くすることができる。
また、土は外部との調湿・調温機能に優れ、暑さ・寒さの両方にも適応しやすいのも良さの一つ。

メインの住宅だけでなく、災害時や難民キャンプなどの仮説住宅にすることもできるのだ。

ローテクニック・楽しい

アースバッグ工法は、難しい技術を必要とせず、老若男女「みんなで楽しくできる」。
大規模な重機や特殊な機械も必要としない。
身近なショップで販売している道具で十分なのだ。

デザイン性

曲線も表現しやすいため、自由な発想のデザインができることも特徴の一つだ。
また『混合土を袋に入れて積み上げる』というシンプルかつユニークな建構造は、カテナリー曲線を原理としてドーム型の設計が可能で、複数の個体を繋げ、複合型の建造物へと進化していく事も可能だ。
見た人にインパクトを与える建物ができる。

内部もオシャレで入ってみたくなるようなデザイン。

今後の可能性

基本どこにでもある “土” を中心に建材に用いるので、環境に対しての付加も少なく、資材調達に困らない。
土嚢袋を麻などに変えていくことができれば、さらに環境に優しい建築ができる。
化学的な接着剤なども使わないので、当然、シックハウス症候群などとも無縁だ。

日干しレンガやローマン・コンクリートは万年使えるとも言われており、長持ちするのも特徴の一つとなる。
日本の住宅の平均寿命は、30年とも言われている。
ファストファッションもそうだが、経済を優先してきた我々のこの世界は、大量生産・大量消費が前提となっており、「長持ち・壊れない」ことの重要性を置き去りにしてしまっている。

人口が70億人を突破し、100億人に達しようとするこの地球で、これまでと同じようなことを続けていては、「持続可能」という言葉に説得力は持たせられない。
今後は、流行は横に置いておき、着る物はリサイクルして使い続け、住む住宅も100年、1000年と修理しながら住み続けられるように価値観の転換を図っていかねばならない。

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