オーロ゛ラ
「ここから向こうは下り坂になっていて、
何枚も降り積もった窓が踏み詰められているんです。
そこから覗く無数の顏に驚いて、転がり落ちないように
気を付けて下さいね」
まだ小学生位の歳の子だが、喋り方はしっかりした鯨のようだ。
無数のプランクトンの亡骸を縫合しながら進んでいくと
大きな広間に出くわす。
そこは全次元に向けて鏡張りで、無数の時間が流れるのを
その時点での僕らは感じていた。
気づいた時には、まるで無かったように、君は存在しているのだ。
やがて電車の窓のガタガタッと開く音に目が覚めた君は、
僕らと目が合うと同時に口を開く。
「何もかもの、全ての夜明けがはじまる」
そう言い終わるかどうかの間に、
僕らの手を掴んで勢いよく視界から飛び出して行ってしまった。
転がり落ちていく坂の途中の窓で、さっきの僕らを見つけた。
僕らはまた、あの時と同じように見上げている、見上げている、
そしてまた、確かに空に浮かぶ扉の海の自分と見上げ合っている。
―――君と側 空 に落ちる日 3
音楽、小物置き場 https://noastralshop.thebase.in/
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