車のCM

私はクイーンやビートルズやブロンディを車のCMで知った。
(「洋楽好きの両親の影響で〜」などと言いたいところだが、うちの親が持っているCDはさくら(森山直太朗と河口恭吾の両方)、平井堅『瞳をとじて』、オレンジレンジ『花』etcだった。)

なんか車のCMの曲って謎にセンスいいよなと子供ながらに思っていたら、中学生の頃、社会の先生が授業中の雑談でこのような話をしてくれた。

「CMってよく昔の洋楽が使われてるけど、なんでだか分かるか?それはCMを作る奴らが、自分たちが青春時代に聴きまくった曲を使うからだ。」

これを聞いた私はなるほどと思うと同時に、全国のテレビで流れるCMで自分の好きな曲を流せる「奴ら」は、社会的にものすごく偉い存在なんだと思った。

ところで最近、某自動車メーカーのCMにBUMP OF CHICKENの『天体観測』が使われている。
この曲を学生時代に聴きまくった私は、脳裏に前述の先生の話がフラッシュバックし、次のようなことを思った。

・テレビCMの曲を選ぶという責任と裁量を与えられた立場にいる(おそらく)同世代に対して、社内での自分の地位の低さを思うと、かなり年功序列の強い社風であることを差し引いても悲しくなる。

・「お前らの青春ドンピシャだろ?エモい気持ちに襲われただろ?俺らのチョイス最高だろ?だから車買って!」という制作者と自動車メーカーの声が聞こえてくる。

おそらくこれは相当ひねくれた物の見方だし、『天体観測』まで非難しているように受け取られてしまうかもしれないが、『天体観測』は今でも大好きな曲だ。あのイントロが流れてくると、夜中に親の目を盗んでひとり家から駆け出したくなる、10代の姿で。それなのに私は『天体観測』が使われたCMを素直に受け入れることができない。

ただ、もしかしたら今どこかの中学生がこのCMを観て、クイーンやビートルズやブロンディを知った時の私のように、世の中にはこんなに良い曲があるんだという感動を覚えているかもしれない。そういうことが世界のどこかで起きているとしたら、このCMは成功なのだと思う。





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