あすかちゃん

 昔から都市伝説や怖い話が好きだ。特にそういう分野に興味のない人が何気なく話してくれる話が面白かったりするのだが、めったに聞けるものでもないので、これまで自分の身に起こったそれらしい出来事を書き起こしてみることにした。ちなみに霊的なものは一切出てこない。


 高三の十二月頃のこと。同じクラスのりなちゃんに打ち明け話をされた。
 「私、かずまさのことが好きなんだ。」
 かずまさ君は私たちと同じクラスの男子で、異性に興味の無さそうなりなちゃんが珍しく彼とはよく喋っていたので、私は前から何となく好きなのかなとは思っていた。りなちゃんは信頼できる友人として、私ともう一人、こちらも同じクラスのあすかちゃんに打ち明けたという。あすかちゃんは私よりもりなちゃんと親密に見えたので選ばれて当然だと思った。私はあすかちゃんほどりなちゃんと仲が良いわけではなかったが、友人が少なくてバラす相手もいなさそうに見えたのだと思う。
 そのうち、りなちゃんから経緯を聞いたのであろうあすかちゃんにも、かずまさ君の件で話しかけられた。
 「りなが恋愛してるのってすごくかわいいよね。私たちで応援してあげようね。」
 と彼女は言った。私は「そうだね。」とか返したと思う。
 そして数ヶ月が経ち、私たちは高校を卒業した。そして全員がそれぞれ違う県の大学に進んだ。りなちゃんの恋がどうなったのかは聞かずに終わった。

 高校卒業から一年を少し過ぎた頃、高三の頃のクラスのみんなで地元に集まる機会があり、帰省でちょうど実家にいた私は顔を出した。りなちゃんとかずまさ君は来ていなかったが、あすかちゃんは来ていた。
 みんなでカラオケに行って、その後焼肉屋に行った。私は焼肉屋であすかちゃんと同じテーブルになった。いろいろ話をしているうちに、最近恋愛してる?みたいな話になった。どちらから話題を振ったのかは覚えていないが、その頃私は気になっている人も付き合っている人もいなかったので、多分あすかちゃんだと思う。私は、何もないよー、あすかちゃんは?と聞いてみた。するとあすかちゃんは次のように答えた。
 「実は私、高三の時にかずまさ君と付き合ってたんだよね。かずまさ君のことが好きで、卒業前に告白したら向こうも好きだったって言ってくれて…でも大学に行ってから疎遠になって、半年くらいで別れちゃった。遠距離って難しいね。」
 私は一瞬何を聞かされているのか分からなかった。あの時のりなちゃんに対する「応援してあげようね」は何だったんだ。今の発言にりなちゃんが全く出てこないのはなぜなんだ。実はりなちゃんはかずまさ君に振られてしまっていて、その後であすかちゃんが告白したなら今聞いた話はアリなのか、いやアリなのかどうか私には判断できない。そもそも、かずまさ君を好きだったのはいつから?平然と話すあすかちゃんが怖かった。私は「そうなんだ~」としか返せなった。
 あすかちゃんと会ったのはその時が最後で、それから十年以上経つ。あの頃のみんながどうしているのかは分からない。かずまさ君だけは、私たちとなんの関係もない誰かと結婚したと風の便りに聞いた。

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