第3回 やまのうえの記憶ら



おもいッきりテレビの記憶

 私が好きなポッドキャスト番組のひとつに、「Y2K新書」という2000年代に流行ったドラマとか芸能人なんかについて語る番組があります。それを聴きながら、私は昔どんなテレビを観てたっけ?と思い返してみたところ、幼稚園の終わり頃から小学生の頃にかけて、毎日のように「おもいッきりテレビ」を観ていたような気がするんです。中庭トークのリスナーの年齢層がよくわからないのですが、「おもいッきりテレビ」って何?という方のために説明すると、かつて日テレで今の「ヒルナンデス!」の枠で放送していた、タレントのみのもんたが司会で、ダイエット効果のある食べ物とか血液がサラサラになる食べ物を紹介したり、みのさんが視聴者からの人生相談に乗ったりする生活情報番組です。スーパーに行くと、おもいっきりテレビで紹介された野菜のコーナーに「おもいッきりテレビで特集されました!」という、道の駅の産直広場でよく見かける「マツコの知らない世界で絶賛されました!」的なポップが貼られるなど、わりと社会的影響を持っていた番組です。これを私は、幼少期に、祖父母と一緒に毎日のように観ていた記憶があるんです。でも、「おもいッきりテレビ」の放送日は、ヒルナンデスと同じく、月曜から金曜なんです。では私は、学校をさぼって家でおもいっきりテレビを観ていたのでしょうか?でも、学校にもちゃんと行っていた記憶もあるんですよね。
 それでまた考察してみたんですけど、仮説の一つとしては、人間の記憶というのはあんまりあてにならないもので、夏休みとか冬休みに毎日観ていたのを、一年中観ていたように錯覚してしまっているのではないかということです。うちは学校に行かないということに対して祖母がやたらと厳しくて、私が小学校に上がる前に「なんで学校って行かなきゃいけないの?」という単なる疑問を口にしただけで、「なんて恐ろしい子!」扱いされたほどです。だから私は、行きたくなくても無理やり学校に行かされていたと思うんです。
 もうひとつの仮説は、本当に学校に行っていなかった説です。私はどちらかといえば、学校をあまり楽しいと思えない子供でした。もしかしたら、祖母も無理強いできないレベルで学校に行けなかったのかもしれません。それを許せなかった祖母が、私の両方の肩をぐっと掴み、「あんたは学校に行っている」「あんたは学校に行っている」と私を洗脳した結果、私の記憶が改竄され、私は毎日学校に行っていたことになっているとか…。これだったらもうちょっとしたホラーなんですけど、今では私も自立した社会人になっているので、学校に行っていたとしても毎日おもいッきりテレビを観て過ごしていたのだとしても、もうどちらでもいいかなと思っています。

自分で自分の記憶を消した話
 もう一つ、人の記憶って適当だなと思った話があって、うちの高校では、体育の授業でやる体力テストが学校行事みたいな扱いで、市内の運動場を丸一日借りてやっていました。各種目のブースのようなものが運動場内のあちこちにあって、好きな順番でそれぞれのブースを回って全種目をやる、という流れでした。体育の先生以外も駆り出されていて、それぞれのブースで測定係をやっていました。
 それで、高2か高3の体力テストの時に、友達と一緒にそのブースを回っている中で、ソフトボール投げのブースに行ったんです。ちなみにソフトボール投げとは、小さめのメロンくらいのボールを遠くに投げて、その飛距離を測るテストです。私は本当に運動ができなくて、そのソフトボール投げの飛距離も普通の人の半分くらいでした。元々体力がない上に、たぶん身体の使い方みたいなものが根本的に下手なんですよね。
 ソフトボール投げのブースには理科の先生がいました。そして私は先生の前でボールを全力投げたつもりなのですが、案の定「至近距離から転がした」くらいしかボールは飛びませんでした。すると先生は、「真面目にやりなさい!」とキレ出し、ボールを投げるのは1回までというルールなのに、独断で私にもう1回投げさせたらしいのです。
 ここでなぜ「らしいのです」と言っているかというと、これは一緒にいた友達から聞いた話で、私にはその記憶がないからです。後から「あれ酷かったよね~」と言われて「え、何のこと?」となって。理科の先生がいたことは覚えてるんですけど、それ以降の記憶は全くありません。
 人間は、本当にショックなことがあるとその記憶を無意識になかったことにしてしまうらしいです。私は体育ができなさすぎて、このままでは通知表の成績が1になってしまうという懸念があったので、せめて誠意だけは見せようと思って、できないながらも真面目に一生懸命やってる感じをアピールしていました。だからソフトボール投げも全力でやったと思うんですけど、それなのに「真面目にやりなさい!」と怒られたことがショックで、記憶を消してしまったのかもしれません。

マンデラ効果
 記憶といえば、都市伝説好きの私が最近気になっているのが「マンデラ効果」です。Wikipediaによると、「事実と異なる記憶を不特定多数の人が共有している現象を指すインターネットスラング、およびその原因を超常現象や陰謀論として解釈する都市伝説の総称」だそうです。
 代表的なものだと、ポケモンのピカチュウの尻尾の先は身体と同じ黄色なのに、なぜか黒だと思いこんでいる人が多いとか。私も黒だと信じてましたし、今まで人生で10回以上はピカチュウの絵を描いてますけど、全部尻尾の先を黒く塗っていたと思います。ピカチュウに申し訳ないですね。
 個人的なマンデラ効果は、チャゲ&アスカの名曲「SAY YES」の歌詞「余計なものなどないよね」の「ないよね」の部分を、ずっと「あるよね」だと思い込んでいたことです。誰かと喋っていて「あるよね」って言うときに、「SAY YES」のメロディーで「あるよね~♪」とか言ってたのに、最近間違いに気づきました。チャゲアスに申し訳ないですね。
 ちなみに先日、ASKAさんがラジオに出ているのを偶然聴いたのですが、「最近寄り合いもやってないしね」「今度やりましょうよ、寄り合い」って言ってて、何のことだろう?と思っていたら、どうやら飲み会のことを「寄り合い」と呼んでいるようでした。どっかの町内会の話でもしてるのかなと思った次第です。



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