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未練はいつまでも引きずりたくない【ブエノスアイレス】

見知らぬ異国の地では一人よりも二人のほうが心強い。
せっかく 2人でやって来たんだから、一緒に困難を乗り越えられる人がいい。
でも、イレギュラーなときになって初めてその人の真価が問われるときでもある。
なにか問題にぶつかったときに解決しようと動けるか、それとも駄々をこねて不満たらたらになるのか、人間性が垣間見れる。

自分だったら、あんなわがままな男は彼氏にしたくないし、速攻別れると思う。
どんなに好きだったとしても、働いている自分をよそに遊び回って金だけ消費するような人間の世話をするほどお人好しではない。
だからあの男性はよっぽどお人好しなんだなあ、未練があるから割り切れないんだろうか。
あんな自己中心でわがまま男の世話をかいがいしく焼くのは、一度惚れた男だし、嫌よ嫌よと言いながら心のどこかでは思いがくすぶって捨てきれずにいるんだろうか。

喧嘩をしながらも体調が悪くても、好きな人のためにタバコを買ってやり食事も作ってやる。
働きもせずに家で伸びてるだけなのに、そんな彼のためにせっせと働く。
なんでそこまでできるのかねえ、それが恋の力ってやつなのかねえ、なんて思ってみたり。

自分は目的のためにと毎日働いているのに、そんな苦労を知ってか知らずか自分は男と楽しむために街に繰り出し遊びに出る。
それでも最後は自分の男のところに帰ってくる。
世話を焼いてくれる都合のいい人だからなのか、それとも見知らぬ外国で同じ人種と一緒にいたほうが寂しくないからなのか、ほんとに愛してるからなのか、心の内はわからない。
そんな彼を可愛いと感じる人もいるんだろうけど、自分だったら無理だと思ってすぐ切るだろう。

ちゃんと心を入れ替えて一緒にイグアスの滝を見に行こう、見に行くために力を合わせよう、ってなってほしいと心のどこかで期待していたと思う。
だけど結局体調が良くなった彼はいつものように遊びに出かけるし、改善する気もない。
もうそうなったら異国の地であろうと、国に帰るすべを自分で立てるしかない。
自分で働いた金を遊び人のために使うのはもったいない。
改心する気がないのなら、それ以上世話を焼く必要はない。
相手が行く宛もなく野垂れ死ぬことになろうと関係ない。
全ては自分のためだ。

テープレコーダーに吹き込んだ涙は、最後の心残りを捨てるためだったんだろうか。
それでようやく踏ん切りがついて、別れる覚悟ができたのかもしれない。
不要なものは外に吐き出して捨てるのがいい。
そのぶん軽くなれば、次の行動に移りやすくなるはずだ。

春光乍洩 / 1997

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