なぜ働いていると本が読めなくなるのか【要約・感想・書評】

最近話題になっている本、三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を読んだので簡単に要約と感想を書いていきます。

なぜ働いていると本が読めなくなるのか (集英社新書)

本の構成としては、前半が労働と読書の関係の歴史について、後半が「なんで現代はこんなに労働と読書が両立しづらくなっているのか?」という問いに対する答えと著者三宅さんの「どうすれば労働と読書が両立する社会をつくることができるのか」の提言という形になっています。

前半の労働と読書の歴史の部分で面白いと思ったのは円本の話。

「円本」っていうのは要するに「全集」のことです。
日本で最初の全集は改造社の「現代日本文学全集」
なんと全巻一括予約制で売られていたらしい。
値段は当時の相場からすると通常の単行本と比較して10分の1の値段。
安さを初版部数の多さで補う戦略で販売されたよう。

結果として、現代日本文学全集は40~50万予約された。
全集で50万部も売れるのはヤバいよね。現代日本文学全集の大成功を受けて、その後、円本(全集)ブームが起きた。

著者の三宅さんは円本ブーム成功の理由を

①「書斎」文化のインテリアとしての機能
②サラリーマンの月給に適した「月額払いメディア」
③新聞広告戦略の成功

というふうに分析。

まあやっぱり一番大きいのは①の「書斎」文化のインテリアとしての機能だと思う。

昭和初期、本を読んでいることは、教育を受け学歴がある、すなわち社会的階層が高いことの象徴だった。中高等教育を受けた学歴エリート階層=新中間層が、労働者階級との差異化のために「教養としての読書」を重視していたことは、第二章に見た大正時代から続く傾向である。そう、ずらりと本棚に並べられる日本全集を購入することは、「実際に読まなくても読書している格好」をするための最適な手段だったのだろう。

全集の中身よりも、全集を所有していることそのものに価値があるという話。

現代のビジネスでも、
「コンテンツではなくて、コンテクストを売りましょう」ってよく言われれるけど、昔から有効な手法だったんだなーって思いました。

労働と読書の話については他にもいろいろと面白い話が書いてあるので、是非買って読んでみてくださいね。

で、後半部分が本題の「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」に対する回答。

著者の三宅さんは、働いていると本が読めなくなる理由として、資本主義社会が人間に「全身」の労働を求めており、全身の労働はノイズとしての読書を奪ってしまうからと分析しています。

ノイズっていうのは読者が予想していなかった展開や知識のことです。

簡単に説明すると、「インターネットの情報は読者が求めている情報がノイズなしで手に入るけど、読書は予想外の情報も入ってきてしまうので、忙しく働いていて時間や精神に余裕のない人は本を読むのが難しい」って感じかな。

そして、三宅さんは「どうすれば労働と読書が両立する社会をつくることができるのか」の提案として、「半身で働く」ことを主張。

さらに、働くことに限らず、子育てや部活動、創作活動などのあらゆる活動に関して、「全身全霊」を信仰するのをやめて、「半身で関わる
」ことが望ましい生き方であるとしています。

なるほどね。半身で生きるかぁ。。。

確かになんでもかんでも全身全霊でやるより、いろんなものに半身でバランスよく関われるほうが豊かな社会かもしれないね。

三宅さんは「半身社会」の実現のための具体的なステップまではわからないと書いている。

僕は、半身で生きるためには情報発信をやるといいと思う。

SNSやブログで自分の思いや考えや主張をアウトプットする。

情報発信を習慣化するとネタを集める思考になって、アンテナが広くなって、いろんなことに興味を持つようになるからね。

僕は現代人が本を読めないのはインプットする情報の量が多すぎて、頭がパンクしそうになって、防衛反応として本を拒否する部分があるんじゃないかなと思う。

だからインプットだけじゃなくてアウトプット(情報発信)をすると、頭がクリアになって本も読めるようになると思う。



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