飲み友達のおっちゃん

地元に飲み友達のおっちゃんがいる。

好きな映画はインターンとスターウォーズ。月に一度の定期検診。お酒を控えろお医者さんに言われているのに、それをやめないおっちゃん。

名前をヨッピーさんという。本人曰く「いつも酔っ払ってるからヨッピーと呼んでくれ」とのこと。元々はよく行く飲み屋で知り合ったのだけど、明確に仲良くなったのはここ最近だ。

知り合った頃からずっとヨッピーさんと呼んでいた。仲が良いかといえばそういうわけでもなく、連絡先も知らなければ本名も知らない。本人も本名を名乗らない。お店で偶然会えれば一緒に飲む、といった関係だった。

そんなヨッピーさんがスマホに変えた頃から、少しずつ関係性は変わっていったように思う。孫や子供達とLINEをしたいからやり方を教えてくれと言われ、飲み屋でLINEを教えたのがきっかけ。そこで交換したアドレスにヨッピーさんの本名が記載されていた。向こうは知らせる気はなかったと思うけど、僕としてはこれで一枚薄皮がはがれたような気持ちだった。

それから個別でLINEのやりとりをするようになった。「今日お店います?」「二日酔い!」みたいな連絡を取るようになって、タイミングを合わせて飲みに行くようになった。

しかして、ある時を境にヨッピーさんはいつものお店に来なくなった。特に気にもしていなかったけど、あまりに長くお店に来ないものだから連絡をしてみると、色々思う所があって行くのをやめたそうだ。明確な理由までは聞かなかった。それは野暮ってものだろう。

それからというもの、僕とヨッピーさんは2人で飲みに行くコトが増えた。ある時は夕方のサイゼリヤ、ある時は駅前の日高屋、またある時はヨッピーさんの新たな行きつけなどで2人で飲んだ。そこで、しょうも「なくはない」話をする。ヨッピーさんは知的好奇心が強い。気になった疑問などを僕にぶつけてくる。ムダな雑学知識が役に立って、僕はずいぶんとヨッピーさんに気に入られた。

「のあちゃんさあ、あのほら、事故で腕とかが無くなってっちゃった人の、無いはずの腕が痛むっていうやつあるじゃない」
「幻肢痛のコト?」
「そうなんだけどなんかもっと別の言い方」
「ファントムペイン?」
「それ!」

最初は確かこんなやりとりだったと思う。これが嬉しかったようで、以降ヨッピーさんは知らない言葉や最近知った言葉を僕に教えてくれるようになった。そして僕はヨッピーさんの知らない言葉を教えるのだ。

楽しい話ばかりではない。海外転勤のタイミングで子供が生まれ、半年会えなかったせいで懐かれなかったお子さんの話や、不登校気味のお孫さんの話を半ば愚痴のように聞かせてくる。別にそれが嫌というわけではないけど、旧態依然とした発想をするヨッピーさんとはたまにそれで意見がわかれ、たまにちょっとしたケンカもする。酔っぱらい同士だから感情が行ったり来たりするのだ。

ヨッピーさんとは親子ほどの年が離れているけど、年の差はあまり感じない。対等に僕を見てくれていると思う。僕も一定のリスペクトを払った上で、ヨッピーさんを変な年上扱いをしない。

せっかくできた年の差の友情なので、大事にしたい。

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