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つまんないお金

前職でもらったお金の、僕の中での通称である。

勤務していた当時、振込用の口座を作れと言われて某青い銀行の口座を作った。前の会社の時は某濃いめの緑の銀行の口座だったため、青い銀行の内容を見ればどの程度入ったのかが明確にわかるようになっていた。

辞めた後、精算が済んでいなかった分の領収書をまとめた。会社名を見るのも、「様」付けで書類書くのも吐き気がするほど嫌だったけど、何とか書き終えた。社員の誰にも会わなそうな時間帯を狙って書類を会社の郵便受けに叩き込んだ。

お金にルーズな会社だった上に、直属の上司が遅延行為を働く人間だったのでお金は戻らないと思っていた。こちらが社会人としての最低限を守っただけで、何も期待していなかった。

のだが、意外や意外。それから数週して精算分と辞めた月の分のお金が振り込まれた。どうせ返ってこないだろうと高をくくっていただけに、僕の中では臨時収入という扱いになった。とっととこの繋がりを切ってしまいたいと思い、全額下ろすと同時に、青い銀行の口座を即時解約した。

こうして手元に40数万円の現金が残った。僕はそれを、小銭も含めて持っていた青い袋に入れた。

僕の中では、このお金はつまんないコトに巻き込まれて生まれたつまんないお金だ。自分の財布にすら入れたくないと思った。だから一円たりとも財布には入れなかった。そしてこのお金を使う条件を決めた。

・形に残る物には使わない
・膝から下の物ならOK

このお金は僕の人生において必要のないお金だ。とは言え、少なくとも労働の対価としての価値はある。だからこの2点をルールとした。膝から下の物は購入OKとしたのは、要するに足で踏んでいい物には使おうと思ったからだ。

その「つまんないお金」で、僕はまずニューバランスの2万円くらいするスニーカーと、ユニクロで1000円の低反発スリッパを買った。ずっとお前らのお金を踏みつけてやるという気持ちで買った。とことん陰湿な考え方だと思うけど、それくらい荒んでいたので仕方ない。後は全部飲食費やフットサルの参加費やジム、駐車場代などに消えた。

こうして1年が経った。

トレーに溜め込んでいた小銭は、銅とアルミが目立つようになった。どの程度残っているのだろうと掃除のついでに調べてみたら、残高は395円になっていた。10円が30枚、5円が9枚、そして1円玉が50枚。

先日、350円分の小銭を握りしめて地元の居酒屋に行ってきた。そこのハイボールが350円なので、これに使ってしまおうと。新年の挨拶を兼ねていたのだけど、お店に行くと挨拶回り帰りのサラリーマンの集団が居て大将の機嫌が悪かった(忙しいから)。ここで小銭を出したら悪いなと思い、日を改めて使うコトにした。

この話を友達にしたら「お金に罪は無いよ」と言われた。全部わかっている。わかった上で、僕が僕を納得させるためだけやっている。それももうすぐ終わる。

自分の怒りの供養はこれで終えられるのだろうか。

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