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会社をハイエースにしちゃった話 (1)

毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。


今回からの対談は、有限会社マイカ代表取締役の井上 真花さんにお願いすることにした。

井上さんはHP100LXと出会ったのをきっかけにライターとなり、技術評論社などを経た後、2001年に編集プロダクション「マイカ」を設立された。

マイカが面白いのは、会社が「ハイエース」という事である。全国を移動しながら仕事をする、移動オフィスだ。「バンワーク」という手法に、正直憧れもある。

今回から5回(予定)に渡って、車で仕事をするバンワークのあれこれについて、お話しを伺っていく。



小寺:今日はバンワークのお話を中心に伺おうかなと。僕も、子供が早く独り立ちしてればやってた可能性が高いと思っていて、井上さんの働き方に憧れているわけです。

まず、現在のお仕事ということで、井上さんの会社はいわゆる「編集プロダクション」という認識でいいんですかね?

井上:編プロと言えばそうなんですが、うちはちょっと特殊で。普通は編プロって編集者がいてライターは外注、という形が多いと思うんですけど、うちはライターもやってる感じの編プロですね。

小寺:それだと、どっちかというとコンテンツ制作会社に近いという感じですかね。

井上:今はデジタル化されて、その辺がどんどん曖昧になってきてますよね。どこまで編プロがやるのか、制作までかというところが線引きは難しいんですが、ご要望に応じて印刷所に入れるところまでやってもいいし、原稿だけでいいと言われたら原稿だけにすることもあるし、みたいな。なんでも屋ですね。

小寺:なるほど。それで今は井上さんが社長業をやりつつ、バンワークもされるわけで。仕事はほぼバンワークなんですか?

井上:全体ではないですね。今ここは東京の自宅なんですが、東京で取材することが結構あるので、やっぱりその場合は東京の自宅で仕事しながら取材対応します。で、取材が東京でない合間にばーっと行くって感じと、プラス、やっぱり全国で取材を依頼されることがあるので、言われた先に車ごと行ってお仕事するという感じなので。最近はもう「家ないんですね」ぐらいの勢いで言われるんですが、そうではなく(笑)、あくまで両方を使いながらというところが、いわゆるバンライフの方とは違うところかなと思います。

小寺:なるほどね。いわゆる移動オフィスみたいな格好なんですかね。

井上:そうですそうです。

小寺:で、そのバンワークというものを始められたきっかけというのを教えていただけますか。

井上:はい。地方取材が多いということは1つあるんですけれども、ライターが飛行機に乗ったり、新幹線に乗ったりして、行って帰ってくる。今って交通手段がすごく速くなっているので、1日だけで1往復できるというのはよくあるんですけど。

でも行った先で何もできないというか、取材だけして帰るみたいなことが結構多くて、もったいないよね、とは言っていたんですね。だったらその場所まで行く途中も、ずっと移動しながら、旅行しながら、その場所でも遊びながら帰ってくるみたいなことだと、仕事きっかけで旅が楽しめる、みたいなことも1つはあったと思います。

あとは、やっぱりコロナが関係あったのかな。コロナで社員がみんなリモートワークになると、事務所は必要ないよねということになる。でも、事務所をなくすだけだとちょっともったいないので、移動できる車を事務所にして、それに乗って、例えば、今1人が神戸にいるんですけれども、月に1回ぐらいは神戸に行って一緒に社内会議をするとか、そういうふうに使えるといいのかなという。リモートワークの新しい形みたいな感じですね。

小寺:なるほど。最初は手探りだったと思うんですけども、実行に移してからもう長いんですか?

井上:一昨年の4月からなので、2年にはまだなってないぐらいだと思います。今年の4月でちょうど2年ぐらいです。

小寺:この方法論でいけるんじゃないかというのを、つかんだきっかけみたいなのって、なんかあるんですかね。

井上:この方法でやれるというよりは、この方法でやりたいという気持ちのほうが強くて。だから逆に現実を合わせていく感じで、どんどん車を改造して現実に即した形に持っていく、という感じなんで。でも、やろうと思ったら全然普通にできることなので。

小寺:やりながら最適化していったというか。

井上:そうそう、そうですね。

小寺:会社としてはどこかにオフィスとかを借りられてたりするんですか?

井上:もう借りてないです。登記は必要なので、今この自宅を登記はしてるんですが、実質的にはもう仕事のお付き合いの方もみんな“事務所は車”という認識で、「御社に伺います=車に乗せてください」みたいな感じにはなってるので。

小寺:なるほど(笑)。コスト計算とかもされたと思うんですけど。固定費として事務所費を毎月払っていくというのに対し、バンの車両費もかかるし、改造費もかかるし、といったことで、コスト的に合うかという部分はどうなんでしょう?

井上:やっぱり都内の事務所ってそこそこ高いんですよ。もう全然、借りるよりは車買って――と言っても中古車ですので、そんなに高くなかったので。だからそれを買って改造して。それ以外に、例えばガソリン代とか、高速代とか、場合によってはRVパーク宿泊代とかもかかるんですが、それ込みでも事務所を借りるよりは安いですね、実際のところ。

■ハイエース最強伝説

小寺:現在稼働してるバンって、2台目じゃないですかね。

井上:そうですね。初代はハスラーという軽自動車で。

小寺:ハスラーかぁ。まあアウトドア向けではありますけど。

井上:ハスラーでは無理でしょう、ってなって(笑)。

小寺:あはは(笑)。でも一応やってみたんですね。

井上:一応やってみた(笑)。

小寺:で、無理だったと。

井上:無理だった。

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