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「わかりあえなさ」から考える。アイドルと作家にとっての、本・生理・選択肢。和田彩花×藤野可織 対談

#NoBagForMe プロジェクトメンバーの和田彩花さんが、「生理期間を少しでも快適に、自分らしく過ごせるアイテム」として「7 Days Box」のためにセレクトしたのが短編小説集『ドレス』。その作者である藤野可織さんと、生理について、小説について、人と人の間にある「わかりあえなさ」について語り合いました。

これって実用品!? 人生を支える本の力。

和田(以下あやちょ):はじめまして。『ドレス』の文庫解説でもお世話になりました、和田彩花です。

藤野可織(以下藤野):こんにちは。解説ありがとうございました。和田さんがご自身の経験を書いてくださって嬉しかったです。私、本は実用品だと思っているので、和田さんに『ドレス』を使っていただけたな、と。そのうえ、快適に自分らしく過ごすためのアイテムとして「7 Days Box」に入れていただけるなんて!

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あやちょ:このボックスを作るという話が出たときに、まず思い浮かんだのが『ドレス』でした。この小説を読むといくつもの「わかりあえなさ」が浮かびあがってくるんですけど、生理について話すとき、発信するときにもそれってついてまわるものだなぁという共通点も感じて。藤野さんは、小説を書かれるときの前提として、人と人はわかりあえないものだと考えられているんですか?

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藤野:そうですね。人と人が関係を築くときに、わかりあえへんことを前提にしておかないとしんどいんちゃうんかな、と思っています。わかりあえると思うから腹を立てたり歯痒い思いをしてしまうけど、そもそも他人とだけじゃなく、自分ともわかりあえてない、自分にもわからない領域というものがあるし、それは暴くべきではないと思うんです。自分自身ともわかりあえへんのやから、いわんや他人をや。同性、異性にかかわらず、そう考えたほうが平和になるんじゃないかという気がしています。それに、わかりあえなかったとしても、親切にしあうことはできるんですよね。

あやちょ:私、『ドレス』の収録作のなかでも、特に表題作、あの甲冑のお話が本当に好きで!!

藤野:嬉しい。文庫本の装画にもはらだ有彩さんが描いてくださいました。

あやちょ:個性的なアクセサリーを理解してもらえないとか、それでも自分が好きなものを身につけることが素敵で幸せなことで、自分自身を守ることでもあるし、と自分の体験とリンクするところも多くて。藤野さんが書かれる小説は、身近な、生活に重なるようなテーマから出発しているのに、どこか非現実的な描写が交差する。あの感覚にどんどん引き込まれていきます。

藤野:ありがとうございます、あぁもうどうしよう(笑)。

あやちょ:作品のパワーがすごくて、まさに自分を支えて、快適にしてくれるアイテムです。先ほどおっしゃっていた「本は実用品」というのもおもしろいですね。

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藤野:本って、生きていくための武器のひとつになりうるものだと思います。自分一人の人生を生きていくことが難しいときにも、本を読むことによって他の人の人生を自分のものにできる、読むことによって新しい経験や記憶が得られるので、私にとって本は救いそのものです。

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あやちょ:読み手としても、書き手としてもそうですか?

藤野:救いであるというのは読み手としてですね。書き手としては、選択肢はやっぱり多いほうがいいと思うので、それをひとつでも増やしたいという気持ち。

あやちょ:アイドルの活動でも、選択肢をふやしたいという思いを強く持っています。私は、ある意味伝統的な形や規範が見出されがちなアイドルグループに在籍していたけれど、そこから出て一人で活動したり、生理のことも含めて自分の意見を発信することで、また違ったアイドル像が示せるといいな、選択してもらえればいいなという思いで。

以前、当時中学生だった後輩が真っ赤なリップを塗ったときに、年相応じゃない、似合わないという言葉がファンから届いたんです。でもそれは男性の視点や価値観を押し付けられていることだから、好きな色のものを塗ったらいいんだよってアドバイスをしたことがありました。

藤野:本当にそのとおりですね。

あやちょ:年齢も職業も関係なく、その人らしくいることってできると思う。そんなことも身近に感じ続けてきたので、選択肢が多いということの意味、その大切さを痛感します。生理について発信すると、女の子からの共感がとにかく大きくて。女の子……いえ、生理のある人たちからの反響を受け取れると、発信してよかったなと思います。

藤野:いま、「生理のある人」と言い直されたことに感動しているんですけど……ほんとうに。生理のある人と、いろんな話がしたいですよね。

生理は不快なもの。だからこそ知恵を出し合あえれば。

藤野:私、ちょうど生理について登場人物たちがあれこれ話すというシーンを書いたんです。

あやちょ:そうなんですか! 読みたい!

藤野:NHK出版の「本がひらく」というWEBページで連載している「ここからは出られません」という小説の第2話で。

藤野:この小説では1話ごとに、主人公の同僚の女性たちが何かしら物について話し合うシーンを入れようと思っていて、第1話が口紅で、次が生理用品のポーチ。私は勤めていたときに職場で生理の話を大きな声でしていた覚えはないし、そういう場面はまだ少ないだろうと思うので、だからこそ小説に書きたかったんです。

あやちょ:生理用品にしてもピルにしても、それについて話してみると、知るということすら恐れているような感覚を持っている人もいますね。商品もサービスも、選択肢自体は増えてきているけど、話すことさえ恥ずかしいと思ったり、知識を得ないまま怖いという感情を抱いてしまったり。それによって新しい選択肢を手にするきっかけが遠のいてしまうのは、私としてはもどかしく感じる。

藤野:生理って基本的にものすごく不快なものだから、だからこそ少しでも快適になるように、オープンに話し合って知恵を出し合っていけたらいいですよね。私、このボックスにも入っている「シンクロフィット」の信者です、最高なんですよ!

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藤野さんの著書と、7 Days Boxに入るソフィの生理ケアアイテム
※タンポンは別途キャンペーン中

あやちょ:まだ使ったことないんです。

藤野:ぜひ使ってみてください! 安心感が全然違いますよ。ナプキンや下着は平面だけど、股には凹凸があるじゃないですか。その凹の部分にぴったりはまってダイレクトに経血を受け止めてくれて、そのままトイレに流せるし使うときに手が汚れることもない。なんと袋も流せます。すごい楽チンだし、ナプキンの消費もゆるやかになりました。

あやちょ:私は少し前に初めて知って、お風呂から出た後に使いたいなと思いました。少しの間ですけれど、これをあてておけばタオルに血が染みてしまうこともないし。

藤野:はぁ〜ほんまやわ。すごいいいことうかがいました。

家での時間を快適に変えるためのアイテム。

藤野:仕事柄、家で座っている時間がすごく長いんです。それなのに長いこと、硬い木の椅子に座って仕事をして腰をいためていたんですよ。だけど、生理中に椅子を汚してしまうのが怖くて布ばりの椅子を選べなくて。でもまたシンクロフィットの話になってしまうんですが(笑)これに出会ったことで、「これなら布ばり長時間いけるやろ!」と、意を決してこの夏に椅子を買い換えました。

あやちょ:すごい信頼感ですね。椅子かわいい!

藤野:イトーキの、布も選べるバーテブラ03です。すごく楽になりました。あとは、何かの世話をしたい欲を満たすために前はよく観葉植物を育てていたんですが、あまりにもよく枯らすので、もはや枯れることが前提の切り花をデスクによく飾っています。まぁそれも水を替えるのをおこたってめちゃくちゃカビ生やしてしまったりするんですが。

あやちょ:お花は大変ですよね。ドライフラワーにしようとしてもうまくいかなかったりもするし。私は、家にいろんなお茶をそろえています。最近は特に中国茶が好きで、たとえば烏龍茶でも、味や香りがちょっとずつ違うのが楽しくて、気分によって茶葉を選んで淹れてリラックス。紅茶も、ピーチとかアップルシナモンとか、香りがついたフレーバーティーが好きです。

藤野:私はコーヒーが好きなんですが、カフェインを摂りすぎると気分が悪くなるということに気付いてからは、カフェインレスコーヒーを、まるで水のように飲んでいます(笑)。最近は、コーヒーの道具を一式買いそろえて、家でドリップをするようになりました。

あやちょ:お茶やコーヒーを淹れるのって気分をリセットするのにいいですよね。あとは大好きな本が傍らにあればもう幸せ。藤野さんの新連載も楽しみにしています!

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和田彩花
わだ・あやか/アイドル。1994年群馬県生まれ。「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)初期メンバーとしてデビュー。2019年に「アンジュルム」および「Hello! Project」を卒業。現在はソロのアイドルとして新しい表現活動を模索中。
藤野可織
ふじの・かおり/小説家。1980年京都府生まれ。2006年、「いやしい鳥」で文學界新人賞を受賞しデビュー。2013年、「爪と目」で芥川賞受賞。近著に『ピエタとトランジ〈完全版〉』、『来世の記憶』『ドレス』など。
#NoBagForMe 公式サイト
https://www.sofy.jp/ja/campaign/nobagforme.html

(取材・文:鳥澤光、写真:豊田和志)

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