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【シゴト論】飛び込みアンケート就活生

我が事務所に若い男性が訪ねて来た。てっきり何か荷物が届いたのかと、シャチハタを持って現れた僕に彼は名刺を差し出して切り出した。

『僕は就活生なんですが、今お時間ありますか?!』

最近の中でも今日はお客様への納品対応が重なってとても忙しく、時間はないと答えたのだがそんなことは御構い無しに彼は言った。

『1分でいいのでアンケートに答えて下さい!』

えー
と思った。

ただ、自分も飛び込み営業で大変だった時もあったし、この1分は彼の話を聞こうじゃないかと思い直した。

すると彼は勢いよく手元にあったバインダーを開いた。

準備万端だなぁ。何か営業してくるのかなぁ?1分という中で何を提案してくるのだろう?少なからず興味は湧いた。

バインダーにはとても大きな文字で5つの項目が並んでいる。しかも手書きだ。
一生懸命、主体性、誠実さ
あとの2つは忘れてしまったが、勢い的には努力・友情・勝利くらい力強かったのは確かだ。

続けて彼は言った。

『どれも大切だと思うんですけど、この5つの中で新入社員が入って来た時に一番持っていて欲しいものは何ですか?!』

僕は言葉を失った。質問の意図が読めない。しかし、聞かれたら答えざるを得ない。

『え、ええとコレかなぁ…?』

目に入った2、誠実さを恐る恐る指差す。

『なるほど!ちなみにコレを選んだ理由をお聞かせ願えますか?!』

り、理由?

『まあ、どの仕事でもね、うん、必要だから、かなぁ…』

完全に及び腰で今にして思えば後ずさりし兼ねない態度だったような気がする。

『そうですよね!最低限嘘付いたりしたらいけないってことですよね?!』

え、その話どっから出てきた?

『あ、はい。そうですね。』

肯定せざるを得ない。そして、彼は勢いそのままに続けた。

『名刺交換させて頂けないですか?!』
『パンフレットを置かせて頂けないですか?!』

いずれも丁重にお断りした。

ある意味彼にはインパクトがあったし、工夫しているのはよく分かったのだけれど、彼のしていることが仕事でないのは確かだった。

なぜなら、彼は終始自分のためにしか話をしなかったからだ。

僕は楠木建さんという方の話が好きなのだが、少し前のインタビューで以下のように書いていた。

仕事というのは、自分を向いた事ではなく、誰かのためにならなければいけないんです。当たり前のことを言いますが、誰かに価値があって、誰かが儲かって初めて自分が儲かる。そこが趣味と大きく違うところです。
【楠木建氏インタビュー】真のリーダーに求められる資質とは?

これにはとても共感するところで、今回で言えば彼は彼の彼による彼のためのアンケートを実施した。

恐らく僕のいる会社の事業も何一つ調べず、『自分の就活で役に立つ情報を得るがためだけのアンケート作成』を行ったのだろう。

就活のネタにはなるかも知れないけれど、そこには他者への視点が大きく欠けている。でなければ、何一つ説明をしなかった会社のパンフレットを渡せるなどと思えるだろうか。

それは仕事ではないよなぁと思いながら、じゃあ自分の仕事においてもベクトルが自分を向いてやしないかと確かめる良い機会になった。

ありがとう就活生の方。僕も勉強になりました。

#シゴト論 #仕事 #ビジネス #就活生

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